リーガルコーナー第21回 台湾・有澤法律事務所弁護士 荘凱閔 、林廷翰

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台湾への投資――資金投入及び会社設立の形態とポイント

今号から3号に渡り、虎門中央法律事務所と業務提携を行う台湾の有澤法律事務所に所属する弁護士が、台湾における法律問題につき検討を行う。

近年、日本は深刻な少子高齢化という問題を抱え、内需市場の失速に直面しており、多くの企業が積極的に海外に進出し始めている。台湾は、地理的に日本に隣接していること、政治や経済の状況も比較的安定していること、互いの産業が密接に連携していること、社会、文化の面で全体的に親日的であること等の要因から、多くの日本企業が、海外の投資先としてまず台湾を選び、中国大陸や他のアジア市場への足掛かりとしている。台湾の経済部投資審議委員会(以下、「投審会」という)の統計では、2018年の日本による台湾への投資件数は525件、総額は15・25億米ドルであり、日本は香港と英国を抜いて、現在すでに「台湾にとって3番目の貿易パートナー」、「外資と技術の主な提供元の一つ」となっている。しかし、台湾の法制度は日本と異なるほか、外国人による台湾域内での投資にも一定の規制が設けられている。そのため、投資を行う前に、関連法制度について基礎的な認識を有しておく必要がある。そこで本稿では、台湾への投資にあたって、資金投入及び会社設立の段階で注意が必要な問題について簡単にご紹介する。

台湾における
外国人による投資への規制

外国人が台湾域内で投資をする場合、例えば、台湾企業の株式又は出資額の保有、台湾域内における支店、独資若しくはパートナーシップ事業の設立、又は上記の投資事業に対する1年以上の貸付けの提供を行おうとする場合、外国人投資条例の規定により、投審会に投資許可を申請する必要がある。

外国人による投資が可能な業種は、原則として限定されていない。しかし、「華僑及び外国人による投資のネガティブリスト」に列記されている業種には、投資が禁止又は制限される。そのため、投資をする前に、投資を計画している業種がネガティブリストに記載されていないかを確認する必要がある。

このほか、台湾は、中国人による台湾への投資に対して比較的厳格な態度をとっており、外国人による投資とは異なる規定を設けている。この点にも注意する必要がある。

外国人による台湾での投資の形態

外国企業が台湾で投資をする場合の形態としては、駐在員事務所、支店、子会社の設置、又は有価証券への投資等が一般的である。これらについて、以下でご紹介する:

・駐在員事務所
企業が台湾域内で営業行為を行わない場合、主務官庁に駐在員事務所の登記を申請し、代表者をして、台湾域内で同外国会社のために調達契約の締結、入札への参加、見積りの提供、価格交渉の実施又は市場情報の収集等の行為をさせることができる。

しかし、駐在員事務所は法人格を有していないほか、台湾域内で行うことができるのは上述の行為に限られ、営業行為を行うことはできない。また、これに違反した場合、企業の台湾における代表者は、刑事責任を追及されることになる。

・支店
企業が台湾域内で営業行為を行う場合、台湾域内に支店又は子会社を設立するという方法が考えられる。企業が台湾域内で支店を設立する場合、まず経済部中部事務所に対して、会社の中国語の名称と経営する事業についての事前審査を申請し、会社の名称を暫定的に確保(保留)した後で、登記の主務官庁に支店の登記を申請する。事前審査が通ると、企業による支店の登記を行うことができ、運営資金の送金と、営業登記をすることができる。

なお、特に注意が必要な点として、支店には独立した法人格が無く、支店と企業は同一の法人格に属する。そのため、支店が契約締結の当事者となった場合、その権利義務は企業に帰属する。即ち、企業は、支店に生じた債務を弁済する完全な責任を負わなければならない。

・子会社
企業が台湾で営業行為を行う場合、前述した支店のほかに、子会社を設立する方法がある。子会社は独立した法人格を有しているため、子会社がした法律行為によって生じた権利義務は、同子会社にのみ及び、親会社である企業には及ばない。そのため、企業は原則として、子会社に生じた債務を弁済する責任を負わない。

企業が子会社を設立する場合、まず会社の中国語の名称と経営する事業についての事前審査を申請した後で、投審会に投資許可を申請する。そして、投資許可の取得後、株式購入代金又は出資金を送金し、会社設立登記をすることができる。なお、企業は投資許可を取得した後、定められた期間(通常は1年間)内に株式購入代金又は出資金の送金を行わなければならないほか、株式購入代金又は出資金の送金後2カ月以内に、投審会に資金審査を申請しなければならないことに、注意が必要である。

・証券投資
前述した駐在員事務所、支店、子会社の設置以外に、企業は、台湾の既存の企業の株式又はその他の有価証券の取得に投資することもできる。これには、上場、店頭登録企業及び興櫃(エマージング)登録企業が発行又は私募を行う株式、転換社債権利証書及び台湾の預託証書、上場投資信託(ETF)、国債、金融債、普通社債、転換社債及び新株予約権付社債、受託機関が公募又は私募を行う受益証券、特定目的会社が公募又は私募を行う資産担保証券、コール型(プット型)ワラント債等がある。

このうち、台湾の上場、店頭登録、興櫃登録企業の株式に投資し、1回の投資で取得する株式が%以上に達する場合、又は台湾の非上場、非店頭登録、非興櫃登録企業の株式に投資する場合、投資許可の事前申請が必要となる。

一方、1回の投資で取得する上場、店頭登録、興櫃登録企業の株式が10%に満たない場合、投審会への申請は不要となる。この場合、企業は「華僑及び外国人による証券投資管理規則」の規定に基づき、台湾における代理人(通常は、保管銀行又は証券業者)又は代表者を指定した上、台湾証券取引所への身分登記を行い、証券業者で証券取引口座を開設した後で、有価証券を売買することができる。

会社組織の形態の選択

企業が子会社を設立して業務の経営を行う場合には、適切な会社組織の形態を選択する必要がある。台湾における会社組織には、無限公司、兩合公司、有限公司及び股份有限公司(株式会社に相当)という形態がある。有限公司と株式会社の出資者又は株主は、会社の債務に対して有限責任のみを負うため、投資者は子会社の組織形態として、有限公司又は株式会社を選択することが一般的である。このうち、最もよく見られる形態は、「株式会社」である。

また、株式会社のうち、「閉鎖性株式会社」という特殊な組織形態がある。その最大の特徴は、定款の定めにより株式の譲渡を制限できることである。この組織形態は、株式会社の柔軟性を有していると同時に、会社の株主構成の安定性を確保する機能も兼ね備えているため、ベンチャー企業及び合弁企業のニーズにより適している。

合弁会社は、結合申告の要否に注意が必要外国企業が単独で子会社を設立する例のほか、実務上、外国企業とその他の企業との合弁により会社を設立する例もよく見られる。企業間の合弁(Joint Venture)により会社を設立し、共同で業務を経営することから、これは台湾の公正取引法にいう「結合」にあたる。公正取引法の規定では、公正取引法に定める結合申告の基準に達する場合、企業は結合を行う前に、事前に公正取引委員会に申告しなければならない。

結合申告の基準に達するかどうかは、市場占有率及び売上高の計算に関わり、比較的複雑であるため、経験豊富な弁護士又は会計士に対応を委任することをおすすめする。

荘凱閔 ジュニア・パートナー

荘凱閔弁護士は、外国企業による台湾投資に関する各種の法律問題に精通している。投資、会社設立、不動産開発、消費者保護、契約の審査等の分野において、長年にわたり日本企業を含む数多くの外国企業に法律相談を提供しているほか、紛争解決手続きで外国企業及び台湾の大企業の代理人を務めた経験も豊富である。

林廷翰 シニア・アソシエイト

林廷翰弁護士は、日本企業による台湾投資に関する法律事務の経験が豊富である。特に資金投入や会社設立の段階では、経済部投資審議委員会への投資許可や資金審査の申請等について、これまでに多数の日本企業を支援してきた。日本の大手商社が実施した、台湾のエマージング登録企業の株式公開買付のサポートも担当。