リーガルコーナー第19回 虎門中央法律事務所中国弁護士・ 陳軼凡
世澤律師事務所上海支所中国弁護士・ 徐開元

「外商投資法」による 中外合弁企業の組織構造に対する影響と実務対応の要点

2019年3月15日に通過した『外商投資法』が、2020年1月1日より施行される。『外商投資法』の規定のもと、外国投資者の直接投資であるか、買収合併であるかを問わず、ネガティブリスト等の管理制度及びその他の特別な法律、法規による拘束を除き、基本的に内資企業と同一となり、『会社法』、『パートナー企業法』等関連する法律、法規の規定が適用され、現有の『中外合弁経営企業法』、『外資企業法』、『中外合作経営企業法』(以下「三資企業法」という)における外商投資企業に対する各種の特殊な要求に従う必要はなくなり、形式的には外国投資者により多くの利便をもたらす。実務的にみると、『外商投資法』が中外合弁企業の経営に及ぼす影響が最も大きい。よって、本文は、中外合弁企業の組織構造に対する影響と『外商投資法』施行後の実務対応の要点について整理する。(注・『外商投資法実施条例』が本稿執筆時点において、まだ意見徴収段階であり、その内容の紹介は、割愛する)【虎門中央法律事務所中国弁護士・ 陳軼凡、世澤律師事務所上海支所中国弁護士・ 徐開元】

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一、中外合弁企業の組織構造に対する影響

『外商投資法』によれば、中外合弁企業の定款の中の会社組織構造に関連する条項は『会社法』の規定を適用しなければならず、主に以下の表に定める11項目に表れる。これらの変更事項は、以下3つの変更要点にまとめることができる。

①中国側合弁当事者に対する保護規定はすべて廃止され、この類の内容は、『会社法』の規定に基づき合弁双方が定款にて規定する(次ページ表4・董事長、副董事長の選出▼表6・董事会会議開催の最少人数▼表7・董事会会議の招集回数▽表8・董事会の決議方式▼表10・総経理=マネージャー=の選出)。

②権力機構の構造が変更された(表1・株主会が董事会に代わり最高権力機構になる▼表9・法定代表者は董事長でなくてもよく、総経理でも法定代表者になることができる▼表11・監事または監事会を設置しなければならない)。

③董事会の運営方式も、『会社法』規定に基づき全面的に調整された(表2・執行董事により董事会を代替することができる▼表3・董事は合弁各当事者が任命派遣し、株主会の選挙にて選出する▼表5・董事の任期は3年を超えてはならない)。

二、実務対応の要点

『外商投資法』は、施行前に「三資企業法」に準じて設立された外商投資企業に対し、『外商投資法』施行後も、5年以内は継続して従来の企業組織形式等を留保できるよう、過渡期規定を設けた。しかし実務的には、外国投資者は以下の問題について早急に確認を行い対策を講じ、交渉を行い、協議を基礎として新たな中外合弁企業の会社統治モデルを形成することが望ましい。

①すでに設立済みの中外合弁企業は、『外商投資法』による変更にすみやかに対応する必要があり、上記の定款内容について修正するほか、中外合弁企業の原材料購買、製品販売、技術導入、場所使用などは、従来は合弁契約に包括必須事項であったが、『中外合弁経営企業法』の廃止により、法律上強制要求されなくなる。企業は必要に応じて、従来の法規を援用して上記の事項を合弁契約にて事前に約定するかを、自ら判断することができる。

②『中外合弁経営企業法』及びその実施条例の、持分譲渡、利益分配、税引後基金の規定は、『会社法』と全て同一ではないものの、外国投資者は『会社法』の関連規定に基づき、自身の利益にとって有利な交渉要求を行うべきである。

③中外合弁企業は内資会社と同じく、「株主会―董事会―総経理」という統治構造を形成し、これまで董事会レベルで決定できた事項が、今後は董事会レベルで方案を協議、制定した上で、さらに株主会レベルにて審議、承認しなければならない。よって、当該統治構造における、株主会、董事会及び総経理の権限分配について、中外合弁双方にて改めて約定する必要がある。

④意思決定システム上、「三資企業法」は、企業定款の修正、増資または減資等重大事項は、必ず董事会の一致した同意を得なければならないと定めていた。しかし『会社法』は、上記の重大事項は3分の2以上の表決権を有する株主の同意にて可決されればよいため、外国投資者が中外合弁企業において有する持分比率が3分の1を下回る場合、外国投資者はこれまで中外合弁企業の董事会で有していた、前述の重大事項の審議、承認における一票否決権を享受できなくなる。よって、外国投資者は持分比率に基づき自己の合弁企業経営における責任と権限を明確にするよう、早急に調整する必要がある。

番号 変更事項及び変更の要点 中外合弁経営企業法』及び『中外合弁経営企業法実施条例 会社法
権力機関

株主会を最高権力機関とする

董事会は合弁企業の最高権力機関であり、合弁企業の全ての重大問題を決定する。(『実施条例』第30条) 株主会は会社の権力機構である。( 『会社法』第3 6条)
董事会の構成人数

執行董事により董事会を代替できる

3名を下回ってはならない。董事会の定員枠の配分は、合弁の各当事者が出資比率を参考にしながら協議して決定する。(『実施条例』第31条) 有限責任公司は董事会を設
置し、その構成員は3名から1 3 名とする。( 『会社法』第44条)株主の人数が比較的少ない又は規模が比較的小さい有限責任会社は、執行董事を1名置き、董事会を設置しないことができる。 (『会社法』第50条)
董事の選出董事は株主会の選挙により選出 合弁の各当事者が任命派遣する。(『合弁企業法』第6条) 従業員代表を務めていない董事は株主会により選出する(『会社法』第37条)
董事長、副董事長の選出

会社定款の規定による

董事長と副董事長は、合弁の各当事者の協議を経て確定する、または董事会により選出する。中外合弁当事者の一方が董事長を担う場合、他方が副董事長を担う。(『合弁企業法』第6条) 董事会には董事長1名を置くものとし、副董事長を置くことができる。董事長、副董事長の選出方法は会社定款により定める。(『会社法』第44条)
董事の任期

任期は3年を超えないこと

任期を4年とし、合弁各当事者が継続して任命派遣することにより再任することができる。(『実施条例』第31条) 董事の任期は会社定款の定めによるが、任期は1期3年を超えることはできない。

連続して選出された場合は再任することができる。(『会社法』第45条)

董事会会議の開催最少人数

会社定款により規定

董事会会議は3分の2以上の董事が出席しなければ開催できない。董事が出席できない場合、委任状を発行して他人に委任して出席と表決を代表させることができる。(『実施条例』第32条) 有限責任公司:明確な規定はなく、会社定款により自ら規定する。

股分有限公司:過半数の董事の出席を得て開催しなければならない。( 『会社

法』第111条)

董事会会議の開催回数

会社定款により規定

董事会会議は毎年少なくとも1回開催する(『実施条例』第32条) 董事会会議の毎年の開催回数について明確な規定はない。
董事会決議方式

会社定款により規定

重大事項は董事会会議に出席した董事の全員一致で可決しなければならないほか、その他の事項は、合弁企業の定款に明記された議事規則に基づいて決議することができる。(『実施条例』第33条) 董事会の議事方式と議決手続は、本法に定めのある場合を除き、会社定款の定めによる。董事会決議の議決は、1人1票により行う。(『会社法』第48条)
法定代表者

総経理も法定代表者となることができる

董事長は合弁企業の法定代表者である。(『実施条例』第34条) 会社定款の規定に従い、董事長、執行董事又はマネージャー( 原文は「総経理」)が就任する。 (『会社法』第13条)
総経理の選出

会社定款により規定

総経理1名、副総経理を若干名とする。董事会により招聘する。(『実施条例』第35条、第37条)董事会の招聘を経て、董事長、副董事長、董事は合弁企業の総経理、副総経理その他の高級管理職を兼任することができる(『実施条例』第37条)

正副総経理は合弁の各当事者がそれぞれ担う。(『中外合弁経営企業法』)第6条)

有限責任公司には、総経理を置くことができ、董事会が任命又は解任を決定する。(『会社法』第49条)
監事及び監事会の発生

会社法及び会社定款の規定による

監事及び監事会の規定はない 有限責任会社は、監事会を設置するものとし、その構成員は3名を下回ってはならない。株主の人数が比較的少ない又は規模が比較的小さい有限責任会社は、1名乃至2名の監事を置き、監事会を設置しないことができる。(『会社法』第51条)

陳軼凡

虎門中央法律事務所・世澤外国法事務弁護士事務所(外国法共同事業)所属の中国弁護士、外国法事務弁護士(中国法)。
1990年蘇州大学卒業、2001年中央大学大学院卒業(法学修士)。主に外商投資やM&A、債権回収、労働法、渉外紛争解決に関する業務を幅広く担当。労働法分野においては、これまでに何十社にも及ぶ企業再編、閉鎖において、補償金案やリスク予測を含む具体的な運用・法的アドバイスを提供し、多くの日系企業の労働争議や労務リスクに関する案件を迅速に処理した実績を有する。

徐開元

2003年 上海財経大学法学院を卒業、法学学士の学位を取得
03年~07年 日本に留学し慶應義塾大学法学研究科を修了し法学修士の
学位を取得
07年~08年 黒田法律事務所上海代表処にて勤務
09年~11年 上海大邦律師事務所にて執務
11年~ 世澤律師事務所上海支所にて執務
主に労働法、外商直接投資、M&A及び会社法等の業務に従事。