每日新闻亚洲商务报告--创新经济专栏

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陳言=ジャーナリスト、日本企業(中国)研究院執行院長
1960年北京生まれ。82年南京大学卒。82-89年『経済日報』に勤務。89-99年、東京大学(ジャーナリズム)、慶応大学(経済学)に留学。99-2003年萩国際大学教授。03-10年経済日報月刊『経済』主筆。10年から日本企業(中国)研究院執行院長。今年1月から「人民中国」副総編集長も務める。

鴻蒙OSのリリースで、中米技術のデカップリング化が始まる

日本が、ある国(編集注=中国の意)の通信施設の排除を決定して以来、日本の通信会社は当該国の関連施設の不購入を表明し、関連メーカーはその国のメーカーとの提携中止を表明した。日本の政策とその実施過程は透明で、実施も徹底していた。

一方、米国の対応は日本とは異なるものだ。昨年4月、米国が中国の通信企業「中興通訊」(ZTE)に制裁を表明。さらにモバイル、通信設備企業の「華為技術」(ファーウェイ)との業務提携の禁止を繰り返し宣言した。

だが米国は、関連政策の実施猶予も繰り返し宣言した。これは米国の半導体企業やソフト企業が精力的に、自国の政府に対して自社の業務を政策的な禁止対象から切り離し、少なくとも対ファーウェイ禁輸を直ちに実行しないように説得したためだ。

今年8月22日、トランプ米大統領は「米国経済に多大な影響を与えるとしても、中国からの輸入商品に対する関税を引き上げ、ファーウェイとの技術交流を禁止する」と宣言した。しかし、米国の関連メーカーは例によって、自社製品がファーウェイとの関係をある程度維持できるよう政府を説得した。

ファーウェイは米国の政策、中米貿易、政治関係をどのように判断しているのだろうか。筆者のこの1年間の観察から言うと、ファーウェイは米国が同社製品に対する禁輸措置を猶予しても、興奮する風もなく、米国に対して感謝の意を示すわけでもない。同時に、米国がファーウェイに対する禁輸を強化した時も、ファーウェイは中国国内メディアに憤慨を表明することもなかった。

米国のファーウェイ制裁、禁輸について言えば、間もなく最終段階がやって来る。ファーウェイはすでにトランプ政権発足前から、関連する準備を整えてきた。この点は中国の他の企業、少なくともZTEとはその対応に大きな差があり、ファーウェイは、世界最大の通信設備製造企業としての成熟と安定を明確に示している。

8月9日、ファーウェイは鴻蒙OS(Harmony OS)を正式にリリースした。中米が技術、貿易、外交等の各分野で対立している現在、筆者は、鴻蒙OSの出現で技術分野での非連動(デカップリング)現象が始まり、今後、中米がそれぞれ独自のシステムを構築していく予兆が現れていると思う。中国主導の研究・開発、製造や市場システムが徐々に成熟し、中米が自らのシステムを独自運営するようになれば、中米双方が経済・貿易等の分野でお互いに尊敬し合うようになり、そうなって初めて、対決から対等に共存できるのではないだろうか。

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鴻蒙OSはファーウェイの生死に関わる

経済学ではしばしば「後発者利益」という言葉が使われる。それは、後発者がある技術を開発する際、先発者の技術的な特長、欠点を全面的に総括したうえで開発、研究・生産に取り組めば、先発者を追い越すことができる、という考え方である。

今日、グーグルが使用しているアンドロイド技術、アップルが使用しているiOSは既に非常に好調な「ビジネス生態系」を備え、世界の他企業がグーグル、アップルを上回ろうとしても、今のところ成功例は見当たらない。

例えば1999年、ブラックベリーが打ち出した同社のブラックベリーモバイルの「第三のOS」だ。これを使用した日本企業は少なくなかったが、スマートフォン(スマホ)の出現に伴って、今ではブラックベリーは主要市場では影も形もない。もう一つ例を挙げれば、2010年、マイクロソフトがフィンランドのノキアのモバイルにマイクロソフトのシステムを搭載したが、日本ではほとんど影響がなかったケースだ。その失敗の大きな原因は、ノキアがスマホへの方向転換を見誤ったことだった。その後も、韓国のサムスンが新OSを試したが最終的に失敗に終わった。こうしたことから、大企業の新OS開発に対する情熱は既に失われてしまっている。

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華為技術(ファーウェイ)の本社
=中国・深圳で赤間清広撮影

ファーウェイは違う。トランプ大統領がファーウェイ制裁を決定した時、グーグルは直ちにファーウェイに対する新技術提供拒否を宣言した。ファーウェイは数年前から開発していたが未公開の状態のOSを保持し、いつでもリリースできる状況だった。ファーウェイの1億台を超える携帯電話やコンピューターがOSを必要としていた。これまでグーグルの技術に頼っていた同社が、それを使えないとなると自らの技術を開発せざるを得ない。

鴻蒙OSはアンドロイドやiOSに比べ、さらに幅広い「使用可能空間」を持っている。8月9日に発表された内容から見ると、これはマイクロカーネル・ベースの分布型システムであり、スマホやタブレット、テレビ、スマート自動車、ウェアブルデバイスなどのマルチターミナルデバイスに適応する。主にIoT向けの広範なシステムセキュリティのためのオンデマンド拡張を特徴とし、ミリ秒級、さらにサブミリ秒級のタイムラグを低減できる。技術的な概念から言えば、鴻蒙OSのプラットフォームはアンドロイドやiOSに比べて数段上の機能を発揮する。ファーウェイは2012年から自前のOS「鴻蒙」(「天地開びゃく以前の混沌状態」という意味)を企画していた。中米貿易戦争の開戦でZTEが損害を受けた後の昨年8月24日、ファーウェイは「鴻蒙」の商標登録の申請に着手し、1年後の今年8月9日、正式に関連システムをリリースした。

ファーウェイにとって8月9日の鴻蒙OSのリリースは、「最後の手段」だった。開戦した中米貿易戦争の中で、米国にとってファーウェイは初戦において必ず打ち破らなければならないトーチカで、中国もこの陣地戦で全面的にファーウェイを防衛した。ファーウェイは生死存亡の危機に直面し、奮戦を余儀なくされた。

米国の圧力下における

ファーウェイの「ビジネスエコロジー」

8月10日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹紙「環球時報」が次のような社説を掲載した。「中国通信大手が打ち出したOSは技術的に先進的であり、しかも徐々に自らのビジネスエコロジーを確立していく成長力を備えている。この誕生によって、世界的なOS構造を永久に改変する序幕が開かれたと、誰もが信じるだろう」と、最高の言辞を使ってファーウェイの新OSを称賛した。

筆者はこの論調に軽々しく同調するわけにはいかない。10年前のブラックベリー、ノキアの記憶はまだ消えず、サムスンの惨状も記憶に新しい。しかし、ファーウェイの現状はかつてのブラックベリーなどとは大違いである。ブラックベリー、ノキアはどちらもスマホの脅威に対する鋭敏さが欠けていた。サムスンはスマホで輝かしい功績を上げていたが、それを自ら覆し、新OSをやろうとしたものの、その決意と原動力は不十分だった。今日のファーウェイは背水の陣であり、生死を分ける挑戦であり、血路を開けなければ生存も不可能な状況にあるのだ。

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北京市内のスマホ販売店。ファーウェイなど中国
勢のモデルが大きなスペースを占める=赤間撮影

ファーウェイを独立自主、自力更生の道に追いやったのは米国である。中国市場は十分に広大で、まだ完全とは言えない鴻蒙OSに対して、十分な支持勢力がある。ファーウェイ自身のモバイルのほか、ライバル関係にあるその他のモバイルがファーウェイ陣営に加わり、鴻蒙OSの一員になるかもしれない。あるいは、米国企業が中国政府に開放を要請し、自ら関連ソフト、ハードの提供を受けるかもしれない。しかし、米国製のモバイルは中国市場では関税によってファーウェイに比べてコスト段階で10~30%高くなり、中国消費者が負担できるか否かが大きな問題である。

中国製モバイルは東南アジア、ロシアとその周辺国、アフリカなどで広く普及している。アンドロイドやiOSはこうした地域で全面的に普及しておらず、鴻蒙OSには市場開拓のチャンスがある。今後3、4年順調に普及すれば、鴻蒙OS、中国メーカーの通信ステーション等が徐々に自らのビジネスエコロジーを確立し、米国等とは全く異なるが、同時に米国等のOSを包摂する新技術システムを作り上げるかもしれない。中米分離(デカップリング)はモバイル、通信から始まり、今後、次第にその他の分野に次第に拡大するだろう。鴻蒙OSのリリースは、そうした可能性を秘めている。