7月3日、筆者は北京から江蘇省蘇州に赴き、伏泰信息科技股份有限公司を取材した。

沈剛理事長は1962年生まれで、筆者がこれまでに取材した情報技術(IT)企業の経営者の中ではベテランの部類である。彼は最初に着た自分自身の背広について語り始めた。それは40年以上も前の話だった。「外国製の古着でした。着心地が良く、貫禄がありましたよ」。それから30年も経たないうちに、上海、北京などの大都会に限らず、この蘇州でも古着の処理が大問題になっていた。沈氏の会社はITを駆使して、各種の廃棄物を処理している。沈氏は「ごみ処理が動くようにITの翼を付けたのです」とユニークな表現で語った。

ごみだらけの街

50年前、沈氏はごみの問題を考えたこともなかった。街では煮炊きに使っていた石炭から出た灰や野菜の切れ端、魚の骨がごみ捨て場に捨てられていたが、残飯や古着などはなかった。公衆トイレには糞尿を汲み取りに来る人がいた。近くの農村に運んで肥料にするためだ。

工業化が進み、街の様子も大きく変わり、糞尿を運ぶ馬車は全く見かけなくなった。しかし、大量消費は大量廃棄をもたらし、いつの間にか街はごみだらけになり、汚水処理が都市行政の頭痛の種になった。

2005年に設立

中国産業信息網の7月3日の報道によると、昨年の中国の生ごみ総量は1兆800万㌧で、恐らく世界の中で中国を上回る国はないだろう。これに生ごみを上回る生活ごみが加わる。また、世界最大の工業製品製造国が排出している工業ごみは世界一もある。

中国の環境問題は極めて深刻であり、ごみ処理が十分に行なわれていないことによって、大気、飲用水汚染問題にも波及している。

2005年、沈氏ら数人が浙江省杭州に伏泰信息科技を創立し、07年から環境衛生情報化の分野に参入した。「われわれはITを都市のごみ処理問題の解決に生かせないかとずっと考えてきました」と沈氏は回想する。翌08年、沈氏の念願がかない、中国初の環境衛生情報化プロジェクトとして「蘇州市環境衛生管理信息システムプロジェクト」を立ち上げた。これが、後に同社が浙江省から江蘇省蘇州に根を下ろす理由の一つである。

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環境保護で大きな役割

今年7月1日から、上海市は中国初のごみの分別収集=図上=に着手した。筆者は東京都の分別収集と比べて見ているが、東京よりも厳格なように感じる。しかも、東京は30年かけて徐々に分別の程度を上げて来たが、上海ではわずか一本の行政命令で東京を上回る効果をあげ、世界のトップグループに躍進した。当然のことながら、上海市民は分別の方法や基準に合う分別を覚えなければならず、苦労している。ここでITが大きな役割を果たしている。

伏泰信息は07年に環境衛生事業の分野に参入して以来すでに12年になるが、同社の紹介資料には「19年まで10年間、シェアでは全国一を保ち、ユーザーは100社余、実施プロジェクトは300件を上回っている」と記載されている。

同社は蘇州に全国初の市レベルの環境衛生ビッグデータプラットフォームを構築し、蘇州市の管轄地域と周辺地域の生活ごみ、生ごみ、建設残土、都市ごみの全ての基礎的な情報をまとめ、市の担当セクションと関連機関の情報共有を実現した。

このプラットフォームができてから、蘇州とその周辺地域の環境衛生状況は随時、携帯端末で見ることができ、市の担当者の作業効率は大いに向上した。業務データを総合的、統一的に見ることができるようになった。ITの最大の任務は業務データを手軽に見ることから多角的に情報を分析できるモデルを作ることだった。蘇州は観光都市だが、工業が大躍進した後も、環境衛生は保たれてきた。沈氏は「蘇州の環境衛生は今後、スマート化、カスタマイズされ、イノベーションされる可能性が高い」と確信している。

伏泰信息の大きな特徴は、環境衛生部門の業務管理を支援できることであり、蘇州でビッグデータプラットフォームを構築すると同時に、福建省廈門(アモイ)にスマート環境衛生プラットフォームを設置していることである。これによって、アモイが全市統一的なプラットフォームを設置し、焼却工場、生ごみなどに関する情報収集、処理をできるようにした。同社の関連情報によると、今後、海洋浮遊ごみに対する監督・管理にも進出するようだ。

また、公衆トイレ管理、その他企業のコクピットプラットフォームの設置・運営、農村における都市・農村一体型のプラットフォームの構築、さらに水処理方面でもIT支援を行うなど、同社は各種のプラットフォーム構築を通じて、中国のごみ処理事業にかかわり、大きな業績をあげている。昨年からは新規公開株(IPO )の発行の準備に取りかかっている。

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イベントに出展する伏泰科技術のブース

必要不可欠なハードウエア

伏泰信息を見る場合、重要なことはプラットフォームの構築能力だけでなく、そのハードウエア提供能力にある。現在、同社は環境衛生従業員のために、スマート携帯用品、例えば、スマート腕時計をオーダーメードし、ごみ容量計測・警報設備、ごみ箱満杯計測設備、生ごみ積載車の車載はかり、公衆トイレの臭気検測設備、大気質量センサーなどを生産している。

今後の事業展開について、沈氏はごみ焼却、家電分解再利用、汚泥処理、電池の回収・再利用に大きな関心を持っている。ITとこうした設備の結合に新たな発展の余地を見出している。日本の企業は多数の関連技術と設備提供能力を持っている。

伏泰信息は急速に拡大時期を迎えている。中国が国家政策として環境保護をますます重視する方向に向かっているからであり、伏泰信息のような企業は発展の余地がますます広がり、日本企業との提携のチャンスはますます増えるだろう。