シリーズ「中国商務熱点」②

人民日報の視点

着実に進む粤港澳大湾区の開発

第広東省、香港、澳門ナンバー

広東省、香港地区、澳門(マカオ)地区の3地域のトリプルナンバーを取得している自家用車に乗って、午前11時過ぎに澳門の自宅を出発し、港珠澳大橋(香港・珠海・マカオを結ぶ海上橋)=写真、画像は港珠澳大橋管理局が提供=を通って、12時ぴったりに香港地区の中環(セントラル)に到着し、約束していた友人とランチを楽しんだ後、珠海の横琴澳門青年創業谷に行き、会社の会議室で、中国大陸部や澳門の従業員らと会議を開き、プロジェクト案について話し合った後、再び澳門に戻ってクライアントに会う。

蔡渕博さんはそのような忙しい1日を終えた後、「粤港澳大湾区(広州、仏山、肇慶、深セン、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、澳門両特別行政区によって構成される都市圏)の建設により、起業の新天地が切り開かれ、チャンスが無限に広がるようになっている」と充実感を漂わせている。30代の蔡さんは今年、珠海横琴新区で起業し、パートナーと共に、ディープな旅を楽しむためのアプリを開発した。同アプリに登録するユーザーは既に十数万人に達している。

珠江が流れ、南海に面している香港特別行政区や澳門特別行政区、広東省広州市、深セン市など珠江デルタの9市が今、しっかりとつながり合うようになっている。粤港澳大湾区の総面積は5万6000平方キロで、2017年末時点での総人口は約7000万人、中国で開放度が最も高く、経済の活気が最もあふれている地域の一つだ。

「一国二制度」

粤港澳大湾区の建設は、一国二制度、三つの関税区、三種類の通貨が関係しており、世界にも、中国国内にも参考にできる経験はない。「一国二制度」の方針や基本法の枠組み内で、いかに広東省、香港地区、澳門地区のそれぞれの優位性を発揮させ、体制・メカニズムを革新し、要素の流通を促進するかが、大湾区が直面している最も重要で、解決が急務な課題の一つになっている。

2018年9月23日、広深港高速鉄道の香港区間が開通した。同年10月23日には、港珠澳大橋が開通し、香港地区と澳門地区、珠海の3地域が繋がった。そして、今年4月2日には、南沙大橋が開通した。また、珠江河口の東西両岸地区で建設が計画されている道路6本のうち4本がすでに開通している。大湾区の主要都市が1時間以内で結ばれるよう、香港と繋がる蓮塘・香園圍通関地、澳門と繋がる粤澳新通道などの大型越境インフラプロジェクトも急ピッチで建設が進められ、広東省でも、珠江デルタの各地を繋ぐ鉄道の建設が急ピッチで進められ、インフラのコネクティビティが強化されている。

また専門資格の相互承認が一歩踏み込んで推進され、深センの前海や珠海の横琴で、香港地区のプロジェクト建設スタイルの採用が試みられている。ベイエリアの金融シェアリング円滑化の枠組みが構築され、越境モバイル決済が開通し、広東省と澳門地区の保険業は、珠海の横琴で、「両地域の保険を一地域で購入」を実現させている。

さらに「ハードウェアの連結」や「ソフトウェアの連結」が加速して進められ、物流やキャピタル・フロー、インフォメーションフローなどの要素の円滑で効果的な流動、さらに粤港澳大湾区の人々の心の通じ合いをサポートしている。

香港科技大学の李沢湘教授は、「大湾区内の香港地区や澳門地区には、世界一流の大学があり、世界テクノロジーイノベーションの先端を行く基礎研究開発能力を誇る。また、各都市が互いにつながり合う珠江デルタは、世界で最も整った製造業の体系や産業チェーンという優位性があり、インキュベーション、転化、市場での応用など能力の高い」と強調し、「それらの優位性をうまく融合させれば、産学研が連携したイノベーションの『化学反応』を活性化することができる」との見方を示す。

世界の著名なベイエリアのほとんどはイノベーションの先端に立っている。イノベーションによる牽引を際立たせ、グローバルテクノロジーイノベーションセンター建設を加速させるというのが、広東省と香港地区、澳門地区が活力と世界における競争力に満ちた一流ベイエリアを建設する最も重要なポイントとなる。

イノベーション推進

3地域が現地の状況に合わせてテクノロジーや産業、体制などのイノベーションを推進し、今後の産業研究開発体系の布石を前もって打ち、イノベーション要素の自由な流動を促進し、世界最先端のテクノロジー要素、資源を集め、テクノロジーイノベーションの先端を構築していくことになる。

香港科技大学(広州)のキャンパスや深セン・香港地区テクノロジーイノベーション連携エリア、横琴広東澳門連携中医薬テクノロジー産業パークなど、一歩踏み込んだ提携を実施する一連のプラットフォームが現在、粤港澳大湾区内で成長中だ。広東省惠州市から世界に進出した家電メーカー・TCL集団は、大湾区建設枠組み協定締結からわずか1カ月後に、香港大学と共同実験室を設置したほか、香港科技大学や香港中文大学と戦略的パートナシップ協定を締結した。=写真は港珠澳大橋の夜景、画像は中華文化交流協会より。

香港地区や澳門地区の住民が中国内陸部で就職する場合、就業証を取得する必要はなくなった。また、同2地域のハイレベル人材は広州市の南沙や深センの前海、珠海の横琴にある自由貿易区では、同2域の基準で税金を納めることができる。また、同2 地域の住民には中国大陸部の居住証も発行される。それら、一連の優待政策が実施されているのを背景に、同2地域の多くの若者が中国内陸部で起業するようになっている。

衛星が撮影した夜の画像写真を見ると、広州から深セン、香港地区、澳門地区にかけて美しく輝いており、「夜景」の美しい地域の一つになっている。これらの地域では現在、深セン西麗湖国際科学教育シティ、東莞松山湖国際ロボット産業拠点、中新広州知識シティ、広州科学シティなど、イノベーション資源が集まるテクノロジーイノベーション回廊が台頭している。イノベーションプラットフォームがしっかりと連携することで、3地域は協力を強化し、積極的に世界のイノベーション資源を呼び込み、共に世界一流の産業クラスターの建設に力を入れ、経済イノベーション力と競争力の強化に取り組んでいる。
【人民日報記者・劉磊、賀林平】

劉軍国・人民日報東京支局長のミニ解説

12月20日、澳門地区は祖国中国復帰20周年を迎えた。20年来、一国二制度の下で、中国中央政府と中国大陸部に力強く支えられ、澳門地区の経済・社会発展は目覚ましい成果を上げた。2018年、澳門地区のGDPは1999年の519億パタカ(1パタカは約13.62円)から4447億パタカに増え、1人あたりGDPは世界でも上位に入っている。また澳門地区は幼稚園から高校までの15年教育の無償化を実現した。
「一帯一路」共同構築や粤港澳大湾区建設などの実施が進むにつれて、澳門地区はかつてない重大な発展のチャンスを迎えている。粤港澳大湾区の建設は習近平主席が自ら計画し、配置し、推進する国家戦略で、新時代において全面的開放という新構造の形成を促進する新たな措置であり、「一国二制度」事業の発展を推進する新たな実践でもある。19年2月18日、「粤港澳大湾区発展計画綱要」が正式に発表されたことは、この重大国家戦略が全面的な実施段階に入ったことを意味している。この綱要で、粤港澳大湾区の戦略的ポジショニングや発展目標、空間配置などの面で全面的な計画が行われた。澳門地区が繁栄と安定を保つことは、日本を含む各国の共通利益と合致している。

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劉軍国 人民日報東京支局長

1986年山東省青州市生まれ。北京外国語大の北京日本学研究センター日本社会経済コースで修士課程を修了、在学中に横浜国立大で客員研究員として研究した。

2011年12月から16年1月、17年11月から現在まで人民日報記者として日本駐在。著書の「温故創新」(日本僑報)では安倍晋三首相、福田康夫元首相、二階俊博自民党幹事長ら日本の政界・財界・学術界など各界の人々を取材し、新中国70年の発展成果などについての生の声をまとめた。