シリーズ「アジアの新興企業・財閥・官僚組織」⑦インドネシア・GOJEK 創業者(35)が教育・文化相に(一般公開記事) 

デジタル化が進展する東南アジアでスタートアップのブームが起きている。シンガポールに次いで盛んなのがインドネシアだ。代表格は配車サービスのGOJEK(ゴジェック、本社・ジャカルタ)である。先進国で成功したビジネスモデルを取り入れ、現地に合わせて独自に進化し生活全般のプラットフォームを担う。シリーズ7回目は今やインドネシアを代表する企業となったゴジェックを取り上げる。【毎日アジアビジネス研究所長・清宮克良】 “シリーズ「アジアの新興企業・財閥・官僚組織」⑦インドネシア・GOJEK 創業者(35)が教育・文化相に(一般公開記事) ” の続きを読む

シリーズ「アジアの新興企業・財閥・官僚組織」⑥ 中国・山東省済南市人民政府 泉水保護と地下鉄建設「調和の思想」を生かす(一般公開記事)

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「泉城」と呼ばれる中国山東省の省都・済南市を初めて訪問し、中心部にある泉の澄み切った美しさに驚かされた。人口900万人の済南市では泉の水脈を守るため地下鉄建設に慎重な議論が繰り返され、開通まで約30年の年月を要した。一方で、美しい泉を強みに国際泉水文化景観都市連合会議を催し、泉を架け橋に世界の都市と友好の輪を広げている。シリーズ6回目は、泉水保護と地下鉄建設の両立を模索する済南市人民政府を取り上げる=写真は趵突泉【毎日アジアビジネス研究所長・清宮克良】 “シリーズ「アジアの新興企業・財閥・官僚組織」⑥ 中国・山東省済南市人民政府 泉水保護と地下鉄建設「調和の思想」を生かす(一般公開記事)” の続きを読む

アフリカ「世界をよくするビジネス」セミナー 赤十字国際委員会・早稲田大学(一般公開記事)

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横浜市で開催されているTICAD7(第7回アフリカ開発会議)にあわせ、赤十字国際委員会(本部・ジュネーブ、ICRC)と早稲田大学は8月27日、東京都中央区の同大日本橋キャンパスで「世界をよくするビジネス-アフリカにおける人道支援の課題と民間セクターへの期待」と題する公開セミナーを開催した。アフリカなど紛争地域においてイノベーションを積極的に活用して支援を進めるICRCと教育・人材育成機関である早稲田大が提携して、新しい人道支援の在り方やそのポテンシャルを提示する場となった。【毎日アジアビジネス研究所長・清宮克良】(写真はICRC提供) “アフリカ「世界をよくするビジネス」セミナー 赤十字国際委員会・早稲田大学(一般公開記事)” の続きを読む

「アジアの未来」セミナー 「ドローン革命と世界の最先端トレンド」8月26 日開催

 毎日新聞社が運営する毎日アジアビジネス研究所は、「ドローン革命と世界の最先端トレンド」と題するセミナーを開催します。小型無人航空機(ドローン)は目視外飛行による空撮、測量だけではなく、農林業をはじめインフラ点検、物流運搬、土木建設などの産業活用に関心が寄せられています。ドローン先進国の中国で今、飛行時間が長く、飛行性能が優れるハイブリットエンジンで最も躍進が期待される新興ドローンテクノロジー企業、北京端深航空(RichenPower)を紹介し、ドローンの最先端トレンドと活用方法を議論します。       毎日アジアビジネス研究所長 清宮克良

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《日時》2019年8月26日(月)15:00-17:00(受付開始14:30)
《会場》毎日ホール(千代田区一ツ橋1-1-1地下鉄東西線竹橋駅直結・パレスサイドビル地下1階)
《テーマ》ドローンに精通している識者によるパネルディスカッションを通じて、産業活用法とビジネスの可能性を探っていきます。

《プロローグ解説》「日本と世界のドローン革命の行方」
村山繁氏 ドローントリビューン編集長
《基調講演》「ドローン先進国・中国とハイブリッドエンジン」
孫樹鵬氏 北京端深航空端深航空日本社長
《パネルデスカッション》「農林業をはじめとするドローンの最先端の活用法」
小畑秀樹氏 農林中央金庫営業企画部長(リサーチソリューション担当)
齋藤修氏  茨城大学AI・ICT次世代広域応用教育研究センター副センター長特任教授
孫樹鵬氏        北京端深航空端深航空日本社長
モデレーター:小島正美氏    農研機構スタッフ、「食生活ジャーナリストの会」代表、元毎日新聞記者
《協力》
孫彦芳氏  一般社団法人アジア総合研究所代表理事

<お申し込み方法>

毎日新聞社毎日アジアビジネス研究所Eメール:asia-biz@mainichi.co.jp に次の項目を書いて8月22日(木)正午までにお申し込みください。
①ご氏名 ②御社名 ③連絡先電話番号 ④Eメールアドレス

シリーズ「アジアの新興企業・財閥・官僚組織」⑤ 中国・天津浜海新区   競争にさらされる「経済特区」の光と影(一般公開記事)

中国は各地方政府が管轄する「経済新区」が互いに競い合い、国全体として経済を活性化させてきた。北京・天津・河北エリアの天津浜海新区もその一つである。2015年8月に天津港を臨む浜海新区の倉庫群が大爆発を起こした。その後、どうなっているのか。シリーズ5回目は、天津市と進出企業の複合体である天津浜海新区を取り上げる。【毎日アジアビジネス研究所長・清宮克良】

外交部の後押し

浜海ビル北京市から天津浜海新区まで車でも行けるが、自慢の高速鉄道(いわゆる新幹線)に初めて乗ると北京駅からわずか約30分間で天津駅に着いた。天津市(直轄市)の中心部の天津駅から浜海新区までは車で約40分。浜海新区に近づくとシンボルである高さ530㍍の周大福金融センター=写真=が視界に入ってくる。浜海新区の常住人口は約300万人で約1500万人の天津市の5分の1を占め、広さは東京23区を上回る。現在、中国外交部が一押しでPRする天津市の浜海新区は近代的な建物が建ち並び、その景観に「経済新区」としての意気込みが感じられた。

浜海新区を訪れたのは猛暑の7月16日。この前日、中国政府は4-6月(第2四半期)の経済成長率が前年比6.2%で1992年以降、最も低い成長率であると発表した。80年代は深圳、90年代は上海浦東、2000年代は天津浜海新区が経済発展エリアとして注目されてきた。中国統計年鑑によると、浜海新区の躍進などで17年の天津市のGDP(域内総生産)は18595億元で全国18位、一人当たりのGDPは119400元で全国3位となっているが、経済状況を説明する同市人民政府関係者の言い回しは慎重だった。

「(15年の)事故の後、『安全第一』の号令のもと回復の努力をしてきた。やっと苦境から脱した感がある」。

自動運転バス

自動運転最初に見学したのは、中国政府がシンガポール政府とともに共同開発しているニュータウン「天津生態城」である。天津エコシティと呼ばれ、巨大な風力タービンによる自然再生エネルギーを活用し、ゴミや汚水など再生可能な資源を再利用するエコタウンである。目玉は「無人パンダバス」=写真=とネーミングされる自動運転の公共バスだ。バスには手のひら認証で乗降ができ、清潔な車内には飲料水も完備されている。多くの電気自動車も配備されている。筆者は8年前の11年6月に天津生態城を訪れたことがある。当時はまだ建物もまばらだったが、現在は約60万人を誇るニュータウンに変貌を遂げていた。

浜海新区は周大福金融センターに代表される金融街であるとともに、中国北部のビッグデータの集積地である。国家超算中心(国家スーパーコンピューティングセンター)、天河系列超級計算机(天河スーパーコンピューターシリーズ)など巨大なビル群にデータ関連企業が入る。

図書館素晴らしい外観の浜海新区文化センターには、図書館、美術館などが入っている。ちょうど夏休み中で、子供たちで賑わっていた。なかでも近未来的で奇抜なデザインの図書館=写真=は人気のスポットだ。最近では、ドローンの自動制御システムなどハイテク産業や天津国際クルーズ船母港などが目を引く。

 

倉庫群の大爆発

海浜公園天津市は1980年代からいち早く「天津経済技術開発区」(Tianjin Economic Technological Development Area=TADA)などの工業団地の造成に着手し、外資系企業を呼び込んだ。しかし、他の地方政府の「経済新区」との競争にさらされた。中国の経済シンクタンク研究員によると、投資先行で前のめりになったため、安全軽視など負の部分が噴出し、それが15年の浜海新区の倉庫群の大爆発につながったのではないかという。165人にのぼる死者を出した大惨事の現場は姿を変えて木々が生い茂る海港公園=写真=となっている。周囲を歩いてみると、静けさの中でかすかに浜風が頬を撫でた。公園脇は大型トラックの運転手の休憩場所。港湾側には数多くのコンテナが積み上げられていた。

2013年、天津市を訪問した習近平・国家主席は「民生重視、経済重視、共産党重視」の3つの要望を出した。爆発事故の翌年、中国共産党中央規律検査委員会は習主席の腹心だった黄興国・天津市長に重大な規律違反があるとして摘発した。報道によると、18年に入ってから天津市のGDP水増し問題が発覚するなど行き過ぎた経済優先主義が見え隠れする。これらは習主席の期待に過剰に応えようと無理をした結果なのだろうか。そして今、天津市のトップである李鴻忠・同市党委書記は汚職撲滅に力を注いでいるという。

経済成長率の分水嶺

中国国内には「経済成長率は6%が分水嶺だ。そこを下回ると危険信号が灯る」(中国の経済アナリスト)と指摘する声がある一方で、一帯一路(the Belt and Road)などをテコに経済成長率を維持する潜在力はあるとの見通しもある。中国は共産党が指導する社会主義に市場経済を導入した独自の経済システムである。分かりやすく言えば、各地方政府は、習主席の要望する「民生重視、経済重視、共産党重視」をいかに実現し、その成果がどのように評価されるかにしのぎを削っているように見える。

海浜新区も天津市人民政府副秘書長を兼任する杨茂荣区長を中心に海外投資の誘致など懸命な努力を続けているが、北京・天津・河北エリアでは河北省保定市にある新興の雄安新区に旬な話題が集まりがちだ。天津浜海新区の光と影は、各地方政府の競争原理が働く中国経済そのものを映し出している。

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清宮克良(せいみや・かつよし)毎日アジアビジネス研究所長

´‹{Ž—Ç  –ˆ“úV•·ŽÐ@Ž·s–ðˆõ1983年毎日新聞社に入社。水戸支局、社会部、政治部。98年に米ジョンズポプキンス大国際関係大学院(SAIS)客員研究員、その後、ワシントン特派員、政治部副部長、さいたま支局長などを経て、執行役員国際事業室長。中国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、タイ、ロシアでフォーラムやイベントを手掛ける。2018年10月から現職。

 

シリーズ 「アジアの新興企業・財閥・官僚組織」④ 中国 瀚華金控(ハンファ集団)張国祥董事長  中小企業向け金融で急成長 日中教育支援も(一般公開記事)

趙国祥董事長中国で総合金融サービス企業として中小企業、農家、都市部の低所得層などを主な対象とする「普恵金融」(インクルーシブファイナンス)で急成長しているのが2004年に設立された瀚華金控(ハンファ集団、本社・重慶市)である。グループを束ねる張国祥董事長=写真は同集団のホームページから=は日中教育文化交流にも力を入れ、出身地である遼寧省の教育基金会を支援し、同省小学生の日本への修学旅行を実現させる原動力になった。シリーズ4回目は中国のハンファ集団を取り上げる。【毎日アジアビジネス研究所長・清宮克良】

二階幹事長の歓迎

遼寧省自民党15月20日、東京都千代田区の自民党本部で、日本に修学旅行で訪れた遼寧省開原市の小学生34人が二階俊博・同党幹事長の歓迎を受けていた=写真。 

二階氏は「あなたたちは中国からお迎えする最も若い賓客です。日本と中国が長く交流できる人たちが来てくれ、心から歓迎します」と挨拶した。

5泊6日の日程で、日光では東照宮や中禅寺湖・華厳滝の観光、東京では早稲田大学キャンパスなどの見学、生徒たちの希望で急きょディズニーランドで楽しんだ。印刷博物館、TENQ宇宙ミュージアム訪問、日産スタジアムでのサッカーも観戦した。メインは渋谷区千駄谷小学校で小池百合子都知事も参加して学校交流をし、国会議事堂、自民党本部を訪問した。

今回の修学旅行は、昨年10月に訪中した安倍晋三首相が李克強首相との首脳会談で日中教育文化交流強化を確認、これを受けて4月に訪中した河野太郎外相が王毅外交部長と合意した日中青少年交流推進年の認定事業の一環である。二階氏は5月18日、来日した楊潔篪(よう・けつち)中国共産党中央政治局委員と会談し、修学旅行を含めた青少年交流を進めていく方針で一致していた。

遼寧省自民党2修学旅行生の受け入れ窓口になったのは武部勤・元自民党幹事長が代表理事会長を務める公益財団法人「東亜総研」である。武部氏は同党幹事長時代から交流のある金竹花・遼寧省教育基金会理事長にハンファ集団の張氏を紹介された。張氏と武部氏は3月29日、北京市の釣魚台国賓館で、日中教育文化交流協力に関する覚書に調印した。遼寧省の小中高校生との交流強化を図るため修学旅行の受け入れなどに協力する5年間の提携協定で、張氏は同省側の送り出し責任者となった=写真は自民党本部で、左から二階・同党幹事長、武部・東亜総研代表理事会長、張・ハンファ集団董事長

覚書に基づく第一弾が今回の修学旅行である。張氏は今年2月に東京で開催された日中両国の会合で「遼寧省は小中高生合わせて360万人の生徒がおります。こうした生徒を日本はじめ海外に送り出したい」との意向を示していた。

商業性と公共性の両立

 張氏は「現代社会においては商業性と公共性をつなぐ橋をかけることが必要です。この橋を作ることが我々の目的です」と語る。インクルーシブファイナンスの概念は2005年に国連が提唱したものであり、貧困を撲滅し公平な社会を目指す目的がある。出身地の子供たちが海外への修学旅行を通して知見を広げ、地球規模の視野を持ってほしいと支援する根底には、教育事業は魂を浄化させ、企業文化の質を高めるために必要であるとの考えがある。

張氏によると、中国の金融は南北朝時代(439年~589年)の南朝の寺院による質権貸付業務(質草業)が発端になった歴史的な経緯があるという。寺院経済には「金之初、性本善」(金の生まれつきは善良である)という仏教崇拝の支えがあった。張氏は「中国の伝統文化に立ち返り、善良な心を大切にして社会の調和を実現したい」と強調する。中国政府は健全なインクルーシブファイナンスを支持する姿勢を示しており、将来的に成長分野になる可能性が高い。

長江商学院張氏は1964年遼寧省北票市に生まれ、長江商学院でMBA(経営学修士)を修了し、現在はハンファ集団創業者兼董事長、重慶富民銀行董事長を務める。2004年に金融イノベーションを生かして中小企業の融資問題を解決するという初心から、伝統的な金融業界から転身し、ハンファ集団を創立した。張氏のリーダーシップのもと、ハンファ集団は公共性と商業性を両立させる持続可能なインクルーシブファイナンスを発展させ、2014年に香港証券取引所に上場した。張氏は2007年から重慶市政治協商会議第3回と第4回委員、第5回常務委員に連続当選し、長江商学院重慶同窓会会長=写真は同集団ホームページから=、重慶市工商連合会(総商会)副会長を兼任する。2015年10月には遼寧省瀋陽市人民政府シンクタンクの専門家に招聘された。

ハンファ集団によると、現時点の総資産は190億元(約3000億円)、純資産規模は80億元(約1200億円)、累積売上高は3000億元(約4兆5000億円)を超え、年間取引額は1000億元(1兆5000億円)となっている。

主なサービス対象は中小企業約20万社超にのぼり、100万人の雇用を創出し、中国でも一流の総合金融ファイナンスに成長した。ハンファ集団は傘下に民営銀行、資産管理、ファイナンス保証、マイクロクレジット、ファイナンスリースなど様々な金融サービス企業を所有している。

“中国版グラミン銀行”のモデル構築へ

 ハンファ集団は、中国版のグラミン銀行(バングラデシュにあるマイクロファイナンス部門を持つ銀行)ともいえる世界的なインクルーシブファイナンスの中国モデル構築をビジョンに掲げ、「産業と金融のシナジー、産業と金融の共生」という多様性を尊重したエコシステム(ビジネス生態系)を目指している。中国と香港で日本の投資家に資産運用サービスを行うとともに、中国の日本企業に総合的なインクルーシブファイナンスを提供する。さらに、遼寧省瀋撫新区の白沙島金融生態タウンの投資事業にも乗り出し、医療美容・リハビリなど健康産業、アニメーション・レジャースポーツなど文化・スポーツ産業、温泉・専門レストランなどレジャー産業、外資銀行・外資保険など金融産業の開発を目標としている。

一方、今回の遼寧省からの修学旅行を皮切りに、日中学生の修学旅行を中国の同省など東北地域、北京を対象に推進。遼寧省に日本の有名校と提携して国際幼稚園と国際高校の創設を目指すなど日中教育協力を支援する方針だ。中国国内では、北宋時代の文豪である蘇東坡を記念するため建立された海南省東坡書院の保護活動に力を入れ、文学、美術など歴史的な文化遺産を継承していくとしている。

教育・文化事業にも精力を傾ける張氏は「10年以内にインクルーシブ事業についての自分の『目測力』が正しかったことを証明したい。できれば5年か7年以内に。そして10年後には奇跡を起こしたい」と語り、インクルーシブファイナンスの飛躍的発展に静かな闘志を垣間見せた。

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pho_seimiya清宮克良(せいみや・かつよし)毎日アジアビジネス研究所長

1983年毎日新聞社に入社。水戸支局、社会部、政治部。98年に米ジョンズポプキンス大国際関係大学院(SAIS)客員研究員、その後、ワシントン特派員、政治部副部長、さいたま支局長などを経て、執行役員国際事業室長。中国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、タイ、ロシアでフォーラムやイベントを手がける。2018年10月から現職。

「共生社会のためのメディアとリベラルアーツ」開催 毎日新聞主筆×早大教授

「共生社会のためのメディアとリベラルアーツ」をテーマにした社会人講座が12日夜、中央区日本橋の「WASEDA NEO」(早稲田大学日本橋キャンパス)で開かれた。

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小松浩・毎日新聞社主筆=写真左=が、分断化された社会では、自分と同じ意見だけを信じる傾向が強まっていると指摘。異なる意見を知るための「議論の場」をメディアが提供しなければならないと話した。

佐藤正志・早大政治経済学術院教授=写真真ん中=が、大学もメディアも異なるコミュニティーを結ぶ「境界」にあるとして、この「境界」を公共性の視点から広げていくことが必要と指摘した。

利己的から利他的な公共性を

モデレーターの宍戸幹央氏=写真右=が、小松主筆、佐藤教授のてい談を振り返り、共生社会のためには、利己的から利他的な公共性を考えることが大切との認識を示して締めくくりました。

講座は毎日新聞社が運営する「毎日アジアビジネス研究所」と早大社会人教育事業室による共同企画「ビジネスイノベーション創造講座」の一環。ポスト資本主義や持続可能な世界などをテーマに昨年11月から開かれ、4回目の今回が最終回。【毎日アジアビジネス研究所】

新シリーズ: アジアの新興企業・財閥・官僚組織① ベトナム ビン・グループ ブオン氏 ”ベトナムの孫正義”(一般公開記事)

ボアン氏アジアに進出する日系企業にとって、相手国の新興企業・財閥・官僚組織を知ることはM&Aやビジネスマッチングのきっかけになるととも規制やコンプライアンスに対応するために重要である。組織のトップやキーマンはどのような人物か、何を目指しているのか、注目すべき点は何か――。その糸口を探るための新シリーズ「アジアの新興企業・財閥・官僚組織」をスタートする。1回目は、ファム・ニャット・ブオン会長(50)=写真=はトイチェ紙撮影=が率いるベトナム最大のコングロマリット、ビングループを取り上げる。【毎日アジアビジネス研究所所長 清宮克良】

不動産からAI企業へ

ビングループ(本社・ハノイ)は不動産、小売り、Eコマース、商業施設、ホテル、学校・病院、自動車など数多くの事業を手がけている。巨大グループの総帥であるブオン氏は、ハノイ鉱山地質大学を卒業し、旧ソ連のロシア地質アカデミーで学び、1993年にウクライナで即席麺の食品会社を起こして後にネスレに売却。ベトナムに戻り、2001年に不動産会社を設立して事業を拡大させ、一代でコングロマリットを形成した。米経済誌フォーブスが2月16日に公表したブオン氏の資産は約8300億円で世界198位となり、ベトナム人で初めてトップ200位入りした。テト(ベトナムの旧正月で2月5日)明けのビングループの株価の時価総額は約1兆7000億円になっている。こうした成功物語から一部で「ベトナムの孫正義」と称されるが、その名声に比べて本人の露出は驚くほど少ない。

トイチェ紙で新年特集

トイチェ・ロゴそのブオン氏が毎日新聞社と提携するベトナム・トイチェ紙(本社・ホーチミン)のインタビューに答え、新年号の特集記事で紹介された。トイチェ紙のチャン・スアン・トアン編集長兼メディアセンター長は「ビングループが新しく投資する産業とテクノロジーの分野は将来、ベトナム経済にブレークスルー(それまでの障壁を打ち破る革新な解決策)をもたらすと期待される分野です。ビングループを創設し成長させたブオン氏の起業家精神は、ベトナムの人々、特に若い人々に高く評価されています」と特集記事を組んだ理由を語る。さらに、2018年のベトナム企業トップ10のうち、サムスン電子ベトナムやベトナム電力グループなどの国営企業に次いで第6位となり、ベトナム民間企業の最高位として多額の税金を納付するとともに多くの雇用を創出していることにも着目した。

グーグルの注目検索ワード

スマートフォン製造研究所会社を起こして25周年となる2018年は、ブオン氏とビングループがグーグルの注目すべき検索ワードになった記念すべき年である。パリでベトナムの国産自動車「ビンファスト」をお披露目したのをはじめ、電動バイクやスマートフォン「Vスマート」=写真はトイチェ紙、スマートフォンの製造研究所=を販売し、超高層ビル「ランドマーク81」の落成などによって、ベトナムのみならず世界の注目を集めた。トイチェ紙のインタビューでブオン氏は「自分自身が表に出ることは好まない。自分の事業に私自身を代弁させている」と語っているが、事業展開そのものがブオン氏を体現しているのだ。

現在、ビングループが最も力を注いでいるのが、エコシステムサービスを提供するソフトウェア事業であり、将来に向けてのビッグデータや人工知能(AI)の研究所である。

ブー・ハー・バン教授(数学、米エール大学)を中核に、ズオン・グエン・ブー教授(航空交通管制・AI、シンガポール・南洋理工大学)、ゴー・バオ・チャウ教授(数学、米シカゴ大学)、ファン・ズオン・ヒュー教授(暗号、仏リモージュ大学)、チャン・ズイ・チャック教授(電気工学・機械学習・AI、米ジョンズホプキンス大学)、ドー・ゴック・ミン教授(電気工学・機械学習・AI、米イリノ大アーバナシャンパーン校)、グエン・トック・クエン教授(生化学、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校)らを招聘し、科学評議員会を設立して将来への布石を打っている。

ブオン氏はビングループの威信をかけてテクノロジーに力を入れ、才能のある人を集めることができれば、さらに成功する可能性があると考えている。テクノロジーのエコシステムがある場合、成功に導くためにはAIやビッグデータに関するコアテクノロジーの研究機関が必要であり、ソフト部門がなければならないとの持論を展開する。具体的には、ビングループの評議員会が企業戦略、計画、予算、KPI(重要業績評価指数)システム、一連の標準、一般的な規制を承認し、経営陣は必要なときにだけ監督、評価、支援するというものだ。

短期間で多角化 国産自動車も

建設中の大学もともとは住宅用不動産開発(ビンホームズ)、中所得層向けの住宅用不動産開発(ビンシティ)を手がけ、コンビニエンスストア(ビンマート+)、スーパーマーケット(ビンマート)、家電量販店(ビンプロ)、Adayroi.comでのEコマース事業、ビンセンターやビンプラザなどのショッピングモール、病院(ビンメック)、学校(ビンスクール)、大学(ビンユニ)=写真はトイチェ紙、ハノイで建設中のワールドクラスの大学のイメージ図=、温室野菜など農業生産(ビンエコ)、スマートフォーン(Vスマート)などと短期間に多角化してきた­。ビンファストを生産する自動車部門は米ゼネラル・モーターズ(GM)と提携して小型車のライセンス生産にも着手している。

ビングループを不動産からAI・ビッグデータ対応型の企業グループに進化させることを目指すブオン氏はどういうバックボーンがあるのだろうか。

愛国的な新民族資本家

かつて三菱商事やJETROでベトナムを担当した荒川研氏は「父親からベトナムの歴史を勉強しろと言われ、若い頃、歴史をしっかりと学んだことに注目したい。ビングループの社是は第一が愛国心、第二が規律、第三が文化になっているが、ブオン氏の歴史的な素養がベースになっているのではないか」と指摘する。荒川氏はベトナム経済について、「社会主義という外枠の四角形の中に市場経済という円が入った形であり、円は四角形から外に出ることはない」という独自の理論を持っている。社会主義の枠からはみ出るほど巨大に見えるビングループであるが、荒川氏はその本質を「新民族資本」という造語で表現し、ブオン氏を「新民族資本家」と呼ぶ。ブオン氏の掲げる愛国心、規律、文化は、ベトナム共産党が指導する現体制を否定するものではなく、むしろ良好な関係を維持するための企業精神であるからだ。

トイチェ紙のトアン氏も、ブオン氏は「ベトナム人のより良い生活のために」と常に国の発展に関心を持つ、才能あふれる愛国的なビジネスマンであると指摘する。ビングループはベトナムをサッカー強国にするため、サッカーアカデミー「ベトナムサッカー選手才能促進ファンド」に出資し、2017年11月に最新設備を備えた新センターを北部フンイエン省にオープンさせた。ブオン氏はインタビューの最後で「現在の目標は、工業製品のブランドをひとつ手に入れることです。ヒュンダイやトヨタは手に入れることができたのに、なぜベトナムはそれができないのでしょうか。アメリカにはマイクロソフトやアップルがあるのに、なぜベトナムはそれができないのでしょうか」と述べ、世界のトップブランドになることに意欲をみせている。

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清宮克良(せいみや・かつよし)毎日アジアビジネス研究所所長

´‹{Ž—Ç  –ˆ“úV•·ŽÐ@Ž·s–ðˆõ1983年毎日新聞社に入社。水戸支局、社会部、政治部。98年に米ジョンズポプキンス大国際関係大学院(SAIS)客員研究員、その後、ワシントン特派員、政治部副部長、さいたま支局長などを経て、執行役員国際事業室長。中国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、タイ、ロシアでフォーラムやイベントを手掛ける。2018年10月から現職。

 

 

3月12日(火)「共生社会の為のメディアとリベラルアーツ」毎日新聞主筆×早稲田大教授

毎日アジアビジネス研究所が企画・プロデュースする連続講座の第4回「共生社会の為のメディアとリベラルアーツ」が3月12日(火)18:30から早稲田大学日本橋キャンパス(WASEDA NEO)で開催されます。

毎日新聞社の小松浩主筆と早稲田大学政治経済学術院教授の佐藤正志教授のてい談です。「新時代におけるメディアと学問のあり方」というテーマを小松主筆、佐藤教授とともに探ります。

(告知・申し込み)

https://wasedaneo.jp/waseda/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=146869

 

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写真右から小松浩・毎日新聞社主筆、佐藤正志・早稲田大学教授、モデレーターの宍戸幹央氏。

■小松浩(こまつ・ひろし)毎日新聞社主筆

1980年に毎日新聞社入社。政治部員、ワシントン特派員、欧州総局長(ロンドン)として日本外交や安全保障問題、国際政治などを取材。その後、政治部長、論説委員長などを経て2016年から主筆。

■佐藤正志(さとう・せいし)早稲田大学政治経済学術院教授

1996年から早稲田大学政治経済学部教授、2011年から2014年まで同大学政治経済学術院長・政治経済学部長。2014年から2018年まで早稲田大学理事。専門は「西洋政治思想史」、また大学院政治学研究科ジャーナリズムコース開設に携わる。

■モデレーター 宍戸幹央 (ししど・みきお)WASEDA NEOコーディネーター

AMBITIONERS LAB共同代表、一般社団法人Zen2.0 共同代表。鎌倉マインドフルネス・ラボ代表。東京大学工学部物理学科卒、東京大学大学院新領域創成科学研究科物理系修了。日本IBMを経て人材会社の創業に参画、現在はこれからの時代の企業組織づくりの支援をするとともに、個人と組織の可能性を広げる学びの場を数多く企画する。

キャンパス・アジア 「岩手県の被災地」課題解決を演劇で伝える 早稲田大、北京大、高麗大

img_5936.jpg早稲田大学、北京大学(中国)、高麗大学(韓国)の学生がキャンパス・アジア(CAMPUS Asia)プログラムでチームを組み、東日本大震災の被災地、岩手県大槌町をフィールドワークし、社会課題と解決方法などを演劇の形で表現する――。早稲田大学で16日に行われた3大学の発表会は計37人の学生が5つのグループに分かれ、震災当時の自分の受け止め、岩手県の高校生らから聞いた話、自分たちでできること、それらを踏まえた社会変革などをグループごとに演劇という表現方法で伝えた。

日中韓の学生で多層的紛争解決・社会変革

IMG_5904キャンパス・アジアは文科省補助金事業の「大学の世界展開力強化事業」の一つで、早稲田大学は、北京大学、高麗大学とともに「多層的紛争解決・社会変革のためのグローバルリーダー共同育成プログラム」を立案し、2016年にキャンパス・アジアのプログラムに採用された。

 

キーワードは「感情」

IMG_5920早稲田大学の担当は梅森直之・政治経済学術院教授と小山淑子・留学センター講師だ=写真。梅森、小山両氏は今回のプログラムのキーワードを「感情」とし、単なるプレゼンテーションではなく演劇という形で表現させた。しかも、結論だけではなくプロセスを重視し、グループごとに表現を自由に考えさせた。梅森氏は「8日前に初めてあったような学生が経験を共有し、共同で表現していく過程で大きな感動を得ていった。エンパワーメント(人間の持つ本来の能力を最大限にまで引き出すこと)を高めることにつながります」と話す。国際機関で災害や紛争地の危機対応と復興支援の経験を持つ小山氏は「大災害などではストレス・マネジメントが重要になる。『感情』は大切なキーワードです」と指摘する。

参加した早稲田大政経学部4年の末富健丸さんは「政治経済を学ぶ学生として感情を表現することには慣れていない。政策やビジネスの論理だけではなく、現場での感覚、心で感じることの大切さをこのプログラムで学んだ」と語る。

キャンパス・アジアでは、これまで広島、長崎をフィールドワークして「戦争」に関わるプログラムを実施している。(毎日アジアビジネス研究所・清宮克良、写真も)

2月20日(水)、連続講座:第3回「SDGsと日本そして世界」が開催されます。

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毎日アジアビジネス研究所が企画・プロデュースする「ビジネスイノベーション創造講座:第3回 SDGsと日本そして世界」が2月20日(水)18:30~20:30、東京都中央区の早稲田大学日本橋キャンパス=WASEDA NEO(KOREDO日本橋5階)で開催されます=写真は水野雅弘 氏。

博報堂DYホールディングスCSRグループ推進担当部長、川廷昌弘氏とTREE 代表取締役、水野雅弘 氏のてい談です。「SDGs」をテーマに持続可能な未来の社会を皆様と考察していきます。

告知サイト(申し込み)

https://wasedaneo.jp/waseda/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=143281

◆講師

3472株式会社 博報堂DYホールディングスCSRグループ推進担当部長

川廷昌弘 / Masahiro Kawatei

グローバル・コンパクトSDGsタスクフォース・リーダー 神奈川県顧問(SDGs推進担当) 環境省「SDGsステークホルダーズ・ミーティング」構成員

3091株式会社 TREE 代表取締役

水野 雅弘 / Masahiro Mizuno

コンサルタト&映像プロデュ―サーSDGs.TV/Green TV Japan メディア代表 SDGs creative award 実行委員長 道東SDGs推進協議会アドバイザー

◆モデレーター
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AMBITIONERS LAB共同代表、一般社団法人Zen2.0代表理事、鎌倉マインドフルネス・ラボ代表、WASEDA NEOコーディネーター

宍戸 幹央 / Mikio Shishido

愛媛県生まれ。東京大学工学部物理学科卒、東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系修了。日本IBMを経て、クローバル人材育成を中心とした社会人のビジネススキル全般の教育研修を手がけるアルー社の創業時に参画。講師部門の責任者として企業における人材育成の最先端の知見と経験を得る。現在は、これからの時代の企業組織づくりの支援をするとともに、個人と組織の可能性を広げる学びの場を数多く企画する。

 

中国注目IT企業は「VIPKID」「iCarbonX」-NTT DATA Innovation Conference 2019

dsc02245毎日アジアビジネス研究所コラムニストで日本企業(中国)研究員執行院長の陳言氏=写真=が1月25日、東京都港区のホテルで開催された「NTT DATA Innovation Conference 2019」(NTTデータ主催)に登壇し、「中国デジタル化最新トレンド」と題して講演した。(毎日アジアビジネス研究所)

本研究所コラムニスト陳言氏が指摘

陳言氏は、2000年以降の中国のイノベーションについて「米国のIT技術に触発されたイノベーションであり、アリババ、バイドゥ、テンセント、JDなどのIT企業が誕生した」と述べ、こうしたIT企業は全ての商品やサービスを販売するプラットホーム、データの活用による市場創出を目指して成功してきたと説明した。

注目すべきIT企業として、2003年に創立し子供の英語教育をする「VIPKID」をあげた。VIPKIDは中国の子供の情報を米国の教師に送付し、子供の能力に応じてオンラインで指導するシステム。4万人の同時レッスンが可能でそのデータを再利用することができる。

さらに人工知能(AI)イノベーション革命をリードする世界の50社に取り上げられた「iCarbonX」にも言及。ドイツのメルケル首相が本社のある深圳までわざわざ視察した注目企業であることを指摘し、健康管理のサポートや医療機構のためのデータサービスの提供など「データのビジネス化」に成功していると述べた。

山口副社長「不確実性をビジネス機会に」

dsc02237陳言氏が登壇した「データドリブン・エコノミーの本質を考える経済を動かす新しい原理 -Economy of Wisdom™-」をテーマとするビジネスセッションでは、NTTデータの山口重樹副社長=写真=も講演し、「データの価値は不確実性をビジネス機会に変えることだ」と強調した。