シリーズ「アジアの新興企業・財閥・官僚組織」⑧

日中合弁「恒大礼愛」
中国の高齢者地域共同体を運営

急速に高齢化が進む中国ではCCRC(高齢者地域共同体)が注目を浴びている。雲南省の省都、昆明市嘉麗澤でCCRC「恒大養生谷」の開発を手がけているのが恒大健康集団(本社・広州市)である。同集団は介護や老人ケアのノウハウを持つ日本のリエイ・グループ(本社・千葉県浦安市)と合弁でCCRCの運営会社、恒大礼愛(中国企業名「恒澤礼愛」)を設立した。シリーズ8回目は恒大礼愛を取り上げる。【毎日アジアビジネス研究所長・清宮克良】

雲南省昆明で事業

昨年10月25日、標高約1800メートルにある恒大養生谷の国際会議センターでグローバル健康ブランド企業の提携を記念する式典が開かれた=写真上は完成予想のジオラマ、写真下は記念式典で右端が椛澤優奈アジアリエイ社長、左隣りが椛澤一リエイ・グループ代表。出席したのは中国の恒大健康集団、日本のリエイ・グループなど計9社・団体である。同集団の丁家件副総裁は「(リエイ・グループは)日本企業で一番早く中国に進出し、中国国内で成功した経験がある日系の養老(介護)企業である。多くの高齢者に日本の優れた介護サービスを提供している。(同グループとは)陝西省西安での養老プロジェクトの提携をベースに、本日、(雲南省昆明市)嘉麗澤でも提携できたことは喜ばしい」と笑顔で語った。中国において礼愛ブランドで介護事業などを展開する椛澤一リエイ・グループ代表は「日本の高齢社会で培った介護事業の経験、知見を生かし、中国の喫緊の国家課題である養老問題対応の一助となれるように努めていきたい」と挨拶した。

礼愛ブランドで展開

式典では丁氏と椛澤代表が「恒澤礼愛国際頤養センター」設立の除幕式=写真上=を行い、実際に業務にあたる椛澤優奈アジアリエイ社長が恒大健康集団と調印をした。この調印によって、リエイ・グループは恒大礼愛として恒大養生谷の運営に本格的に参入する。椛澤優奈社長は挨拶で「2011年の北京での日本介護のショールーム設置を皮切りに17年までに上海、(四川省)成都、(江蘇省)南通の3都市にモデル施設を開設しています。現在、中国各地において、多くの中国のトップクラス企業のコンサルティングを進めることと並行して、このたび恒大健康集団との合弁会社設立となりました」と述べた=写真下は恒大養生谷の完成部分。

恒大健康集団と提携

恒大健康集団はサッカーチーム「恒大広州」を持つ中国最大手の不動産会社、「恒大集団」の傘下にある。恒大健康集団は医療、健康管理、養生、養老、医薬・医療機器と生命科学の6つの業務を一体化し、恒大養生谷をベースに、会員制でサービスを展開する総合的な大型健康産業グループである。2015年に設立された当初から、積極的に「健康中国」という国家戦略を実践し、国民の健康レベルを全面的に向上させるため、中国国内で最大規模、最高レベルの健康サービスのサプライヤーであるとともに、健康システムを構築する事業者を目指している=写真は昆明国際空港の電飾看板。

恒大養生谷は総面積約533万平方メートルの巨大な敷地に建設が進められている。全行程12期計画の現在は2期目で、ホテル、国際会議場、城型マンション、乗馬施設などが完成している。今後、介護施設やシニア向けマンションなどが次々に建設される。恒大養生谷はヨーロッパのリゾートを模して設計され、子供から老人までが住めるCCRCとして5年から7年後の完成時には人口7万人に達するという。

欧州風乗馬施設も

そのシンボルとなる乗馬施設のクラブハウス=写真下=にはヨーロッパ調の絵画が飾られ、約300頭の馬が飼育・調教されている。雲南省がもともと馬の生産地だったことが乗馬施設建設の理由であるが、高級なブランドイメージをPRする戦略であることは間違いない。

一方、リエイ・グループは、1972年にグループ代表の椛澤氏が創業した。国内外に約600カ所(2019年10月現在)のサービス拠点を持ち、その中で企業や各種団体の福利厚生施設の給食を主とする生活サービスでは国内トップクラスに位置し、グループ全体での年間食数は1300万食を超え、その数は国内の介護を手がける会社としては最大級になっている。

2000年の日本の介護保険制度施行を機に、介護を特殊なものと捉えず高齢者への快適な生活サービスと位置づけ「介護から快護へ」のコンセプトで介護事業に参入した。「食と癒やしの快護」を掲げて、海外は03年にタイのバンコクに進出、介護士養成スクール運営や訪問介護事業・有料老人ホーム運営に乗り出し、教育・OJT(On-the-Job Training)・就労などアセアン地域の教育拠点にしている。

ITで未来型サービス

リエイ・グループが北京に進出した2011年に発表された中国政府の基本政策「第12次5カ年計画」には高齢化社会に対応する意向が明記された。中国の養老対策は喫緊の国家課題となり、そのニーズに応える形で、その後、上海、成都、南通と展開し、現地高齢者を対象に介護施設を運営し日本的介護サービスを提供している。中国が期待する日本の介護の代表的中国進出企業として14年からはコンサルティング事業を開始し、さらに昆明、西安における恒大健康集団との共同事業のほか、今後、中国大手企業とのITを活用した未来型の老人ケアサービス、そして介護教育事業にも本格的に乗り出す予定である。

清宮克良(毎日アジアビジネス研究所長)

1983年毎日新聞社に入社。水戸支局、社会部、政治部。98年に米ジョンズポプキンス大国際関係大学院(SAIS)客員研究員、その後、ワシントン特派員、政治部副部長、さいたま支局長などを経て執行役員国際事業室長。中国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、タイ、ロシアでフォーラムやイベントを手掛ける。2018年10月から現職。