荒木英仁のインクレディブル・インディア ④

世界の巨人も参入 インドのB2B・eコマース

イギリス、フランスを抜きGDP世界第5位まで躍進したインドだが、昨年の自動車販売不振が発端となり、成長率は通年で5%を割り込みそうだ。そんな中、2月1日にニルマラ・シタラマン財務相が発表した国家予算は景気を直接刺激する目玉に欠けたものだった。加えて昨今日本でも大きな話題となっているコロナウイルスにより世界の生産拠点となっている中国からの出荷が滞っており、経済の両輪のひとつである自動車産業のサプライチェーンにも影響が出始めている。インドで製造している数多くの自動車、自動二輪の日系OEMサプライヤーも、中国からのパーツ、コンポーネンツの入荷遅延により在庫が底をつきだしている。インドの経済状況の回復には暫く時間がかかりそうな感じである。

インドで成功を収めている日系企業はB2C企業のスズキ、ホンダ、ユニ・チャーム等が有名だが、インド進出企業の9割以上を占める日系企業はB2B取引が主体のビジネスでインドでのマーケティングに苦戦している。今回のコラムでは数多くのインドB2B企業が、従来の人海戦術や人脈ベースだけではなく、どんどんオンラインベースの営業施策を取り入れ、売上を伸ばしている実態を少し掘り下げてみたいと思う。

インド企業はオンラインのB2Bプラットフォームを活用

日本の9倍の広さのインド。多言語、多宗教が入交り東西南北で全く異なる慣習、商習慣が常識の特異なインド市場を効率良く網羅する事は容易ではない。以前のコラムでも触れた通り、安価な中国製の携帯やスマートフォーンの普及と世界一安いブロードバンド環境を有するインドでのオンラインリーチ率は、新聞よりもはるかに高い。多くのインド企業がこのオンラインプラットフォームを自在に活用して、売上を着実に伸ばしている。

即時の満足を求める個人との商取引ではなく、二つの会社同士が関与し、より大きなレベルで行われるB2B取引。B2CとB2Bを区別する重要なポイントは次のようなものだ。
■意思決定のプロセス
■コンテンツおよびマーケティング戦略
■顧客との関係構築
■単純な商品/サービスの提供よりも、ソリューションの提供

オンライン・トレード・ポータルサイトでは、専用のビジネスポートフォリオ、ダッシュボード、販売ツール等営業に便利なサービスが豊富に揃う。また、これらのB2Bトレードポータルに自社のビジネス(商品、技術、サービス)を掲載することで、インドだけではなく世界中の潜在的なバイヤーと出会う機会が得られる。

オンライン・トレード・ポータルが優れている点

B2Bポータルは、過去に新聞等のオフラインメディアで活用されたビジネス・ディレクトリ(商工名鑑、イエローページ)とクラシファイド(案内)広告を組み合わせ、迅速かつ効果的な方法でより多くのビジネスチャンスを提供するように進化している。B2Bポータルはオフラインメディアに比べ、リーチ、ブランド構築、実販売において全てROI(費用対効果)に優れている。オンライン上で買い手と売り手、輸入業者と輸出業者、起業家と製造業者の間で実際の販売と多種多様なビジネスのコラボレーションが行われている。

またB2B専用ポータルサイトは、購入者と販売者の両方に共通の透明性の高いプラットフォームを提供するだけでなく、二者間の販売および取引の保証人としても機能している。バイヤーとセラーに必要なすべての情報とサポートがオンライン上で提供されるので、無駄な仲買人を介さずバイヤーとセラーが直接交渉できるプラットフォームなのである。

2020年にはインドのインターネットユーザーの人口は約6億人を超えると言われている。さらに、AI(人工知能)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)などの新たな技術革新により、eコマースは加速度的に発展するだろう。2019年度のインドのB2Beコマース登録セラーは1400万社を超え、7000億ドルの市場となると言われる。このプラットフォームを使わない手はないと考える。

インドの主要なB2Bポータルサイト

次にインドの主要なB2Bポータルサイトについて触れてみようと思う。

インディア・マート
IndiaMart https://www.indiamart.com/

1996年にDineshとBrijesh Agrawalによって設立され最も古いB2Bのポータルサイト。現在はインドのオンラインB2Bクラシファイド・スペースの%の市場シェアを保持している。

19年度は6073万以上の製品とサービスが提供された。万社以上の企業が登録しており、さらに急速に増加している。また、毎月1,000万人を超えるバイヤー(個人および企業)が訪問している。


 

トレード・インディア
TradeIndia https://www.tradeindia.com/

インディア・マートと同じ年に設立されたトレード・インディアは、インド発のトップポータルの1つ。このサイトは、現在インドのeコマース委員会の議長であるBikkyKhoslaによって作られた。1990年から年にかけては輸出業者用にExporters YellowPagesを販売していた。黄色い紙に印刷され、提供する製品またはサービスに対応する企業およびその他の組織をリスト化したものだ。

現在、このポータルは、インドおよび世界中の売り手と買い手に関する情報を提供し、12000を超える製品カテゴリとサブカテゴリを提供している。


 

トレードキー・インディア
TreadKeyIndia https://www.tradekeyindia.com/

デリーに拠点を置くB2Bポータルサイトのトレードキー・インディアは、20カ国以上の小売業者とメーカーのオンラインディレクトリとして機能しいている。立ち上がって年余りのサイトではあるが、顧客満足度の高い機能とサービスを提供し成長している。


 

アリババ(インディア)
Alibaba (India) https://india.alibaba.com/index.html

1999年に中国で設立されたアリババは、ご存知の通り世界最大のB2B・eコマース企業。「インドのeコマースビジネスはまだまだ黎明期だが、大きく成長する余地がある」と、共同設立者兼会長であるJoseph C Tsai氏。アリババは、自社のインドポータル立上げの他、Paytm、BigBasket、Snapdeal、Zomatoなどのインドのeコマース企業に約20億ドルを投資している。


 

アマゾン・ビジネス(インディア)
Amazon Business (India) https://www.amazon.in/b2b

アマゾンは2017年9月に世界で5番目となるアマゾン・ビジネスをインドで立上げた。立上げからビジネスは順調に推移、ブランド力と独自のロジスティックサポートを強みに毎年前年比200%以上の売上を記録。当初3万4000社だったセラー登録は、2019年度期首に24万社を突破した。


 

卸売業者、製造業者、購入者などに関するデータをワンストップで見つけることは容易ではない中で、B2Bポータルは時間と資本のムダを救う救世主として登場し市民権を得ている。

従来の様に多数のベンダーに個別に連絡して見積もりを要求し、交渉手続きを行い、必要な場所に商品を届けるための輸送手段を見つける事の煩雑な手続きを全て代行してくれるのがB2Bポータルである。

数多くの日系B2Cのプレイヤー達同様、今まで巨大インド市場への参入に躊躇してきた多くのB2Bの中小企業にとっても、すさまじいスピードで進化を続けるB2Bのオンラインプラットフォームを上手く活用すれば、少ない投資でインド参入が可能となる。巨大市場インドに是非挑戦して欲しいと考える。従来からのインドのプレイヤーに世界のeコマースの巨人、アリババやアマゾンが参入したインドのB2B・eコマースからは、当分目が離せない。

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■荒木英仁(あらき・ひでひと)

長年、大手広告代理店「アサツー・ディ・ケイ」(ADK)の海外事業に従事し、2005年から9年間、同社インド法人社長。14年、ニューデリー郊外の新興都市グルガオンにて「Casa Blanka Consulting」社を設立し、日本企業のインド展開や、日本企業との提携を求めるインド企業を支援。インド最大手私銀「ICICI Bank」のアドバイザーや、JETROの「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム」コーディネーターも務める。