モルディブ 産業分野を紹介

観光、漁業、再生可能エネルギー あらゆる分野に投資機会

面積がわずか東京23区の半分の小国モルディブ共和国だが、海に囲まれた自然条件を生かした観光業の急成長で、南アジアでは最も豊かな中進国に生まれ変わった。一方で産業構造の多様化や、海面上昇の影響を受けやすい国土の強じん化などの課題も抱える。政府は、観光業に次ぐ産業である水産業や再生可能エネルギーの導入など幅広い分野で、海外からの投資を広く呼びかける。日本企業にとっての投資のチャンスを、産業分野ごとに紹介する。
ビルや住宅が建ち並ぶ近代的な首都マレ=Image by Giorgio Montersino via Flickr

世界最速で成長するリゾート産業

■ツーリズム

モルディブは世界でも最も急速に成長するリゾート地の一つだ。訪れた観光客は2019年、過去最高の170万人となり、観光収入は31億7100万ドル。宿泊施設の増加率は過去10年で1900%以上を記録している。

「南国のリゾート」というイメージ通りの美しい島々に、「一つの島に一つのリゾート」をコンセプトに開発される宿泊施設。政府は国有地である無人島を50年以上の長期リースで貸し出し、多くのリゾートが米欧や東南アジアの国際的なホテルやリゾートチェーンによって運営されている。

現在、リゾートアイランドの数は150以上に上る。元々、欧州からのバカンス先として知られてきたモルディブのリゾートだが、今では米国や欧州主要地域のほか中国、ロシア、インド、中東など成長する新興市場からの訪問客を集めている。日本では新婚旅行先として人気が高く、2018年には年間約4万人が訪れた。

新型コロナウィルスの感染拡大で2020年の観光客数は大きく減少したが、20年7月に国境の閉鎖が解除された後は急速に持ち直しつつある。政府
は2023年までに観光客数を年間200万人にまで伸ばすことを目標にしており、リゾート施設のベッド数をさらに3万5000床拡大する計画。また、文化や生態系をテーマにしたリゾートなど観光産業の多様化にも取り組んでいる。

輸出の柱、カツオとマグロ

■漁業

海に囲まれたモルディブで、漁業は関連する水産加工業なども含め労働力の2割が従事する、観光に次ぐ第2の国の経済の柱だ。

漁獲の大部分はカツオとマグロで、魚を捕り尽くさない漁法である一本釣りで漁獲されている。国の輸出の98%を、カツオとマグロを中心とした水産物が占めている。

政府は水産物の付加価値を高め、国際市場でのマーケットを拡大することをめざしてきた。水産資源保護が重視される国際的な潮流のなかで、「持続可能性」を認められたモルディブ産のカツオ・マグロはその存在感を高めている。

一方で、政府が漁業の多様化のために重視しているのが養殖だ。現在、ハタやナマコの養殖が行われている。養殖やふ化施設、魚の飼料の製造、さらには養殖漁業の研究開発施設などへの投資も歓迎している。

漁獲された魚の加工、運搬、輸出等、水産業の全般を通してモルディブ漁業への投資機会は豊富だ。

 

可能性秘めたアグリビジネス

■農業

モルディブは現在、国内で消費する農産品の大部分を海外からの輸入に依存している。政府は食糧自給率を高めるために農産品の生産拡大に取り組む一方、リゾート部門で消費される高品質の農産品の需要も急激に高まっており、モルディブのアグリビジネスは今後大きく成長する可能性がある。

現在、特に品質の高いメロン、パパイヤ、バナナ、葉物野菜などへの需要が高まっている。モルディブでは個人や企業による農地所有は許可されず、50年間の契約で国有地をリースする形になる。一部の島では、条件の悪い土地でも作物栽培が可能な水耕栽培や、水や気温を管理するビニールハウス栽培などの取り組みも始まっている。収穫後の加工や包装など農産品の高付加価値化への投資も可能だ。

活発な公共インフラ整備

■建設業、インフラ整備
Image by Shahee Ilyas-Own work

活発なインフラ整備への公共投資を背景に、モルディブの建設産業は好況を呈している。首都マレのヴェラナ国際空港の拡張、過密化するマレの人口
分散を目的に始まったフルマーレ島開発、首都近辺の島々を橋で結ぶプロジェクト、マレ港の移転など、特に首都周辺で巨大なインフラ整備プロジェ
クトが相次いでいる。

国の主要港であるマレ商業港は現在、すでにその処理能力を超えて運用されている。政府はマレ島の西にあるグルヒファル島に、年平均40万個のコンテナに対応できる最先端の施設を備えた港を建設し移転させる計画だ。

またヴェラナ国際空港をハブに国際線と国内線の接続強化を図る。いくつかの離島に新たな国内線空港の建設構想があるほか、民間と協力してヴェラ
ナ空港を含む既存の空港のリニューアルにも引き続き取り組んでいる。

モルディブ北部に新たな貨物の積替港やフリーゾーンを建設する構想もあり、船舶への燃料補給施設や海上警備、倉庫などのサービスが新たに必要となる。

公共、民間双方によるリゾートや住宅建設のブームも、建設業の好況を支える。政府は「大規模な観光プロジェクトや統合型のリゾート施設の建設は、建設業にとって最も収益性が高い投資機会だ」と参入を呼びかける。

急務の脱化石燃料化

■再生可能エネルギー、廃棄物処理

発電をほぼすべて輸入化石燃料に頼るモルディブでは、燃料輸入にGDPの10%を費やしており、太陽光など自国で生産できる再生可能エネルギーの拡大が急務だ。

政府は民間部門と協力して、再生可能エネルギーに関するさまざまなビジネスモデルを模索している。目標は2023年までにピーク時のエネルギーの70%を再生可能エネルギーとし、2030年までにCo2排出をゼロとすること。現在、50近い島々に再生可能エネルギーの発電施設が導入されており、さらに12環礁の有人島100島への導入をめざす。外国資本には、リゾート事業者などと提携して再生可能エネルギーやスマートエネルギーソリューションの導入への参入を呼びかける。

一方、国土が狭く、島から島へ廃棄物を輸送することが困難なモルディブでは、廃棄物(ごみ)の管理が難しい。良好な環境に依存する観光業や漁業に廃棄物が与える影響は大きく、廃棄物管理システムの確立と強化は国の喫緊の課題だ。政府は廃棄物の削減、適切な収集、堆肥化などのリサイクルに関する意識の向上を図るとともに、廃棄物処理技術を持つ海外の民間企業にモルディブのごみ処理事業に参入するよう呼びかける。

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