モルディブ 日本企業の挑戦②

長期成長見込みホテルに投資

株式会社ベルーナ

どこまでも碧いインド洋の海と空。世界でも有数の海洋リゾートとして知られるモルディブ共和国の売りは「一つの島に一つのリゾート」という、プライベート感あふれるホテルの立地環境だ。観光産業は国のGDPの3分の1を占める主要産業で、政府は外国資本の受け入れに積極的。日本の通信販売大手「株式会社ベルーナ」(本社・埼玉県上尾市、安野清社長)は2018年10月、「一島一リゾート」の高級リゾートを日本企業としては初めて、首都マレから水上飛行機で30分弱のバー環礁にあるミリアンドゥ島にオープンさせた。

 

一つの島に一つのリゾート

「一つの島に一つのリゾート」のコンセプトの基オープンした ザ・ウエスティン・モルディブ・ミリアンドゥ・リゾート=ベルーナ提供

ミリアンドゥ島は東京ドームよりやや広い面積57ヘクタールほどの小島。未開発の無人島だったが、ベルーナが所有者の国と50年間のリース契約を結び施設を建設。世界でホテルチェーンを運営するマリオットホテルグループのウエスティンホテルズ&リゾーツに運営を委託して、「ザ・ウエスティン・モルディブ・ミリアンドゥ・リゾート」として開業した。

島があるバー環礁は、ユネスコの「生物圏保護区」に指定され、マンタやジンベイザメなど珍しい海洋生物の宝庫だ。リゾートの70 室の客室のうち29室はモルディブの高級リゾートに特徴的な、海上に1室ずつ独立して設けられた高床式の水上コテージ。残る41室はビーチに面したバンガローだ。

非日常感を演出する、高床式の水上コテージ=ベルーナ提供

レストランやスパ、キッズパークなどリゾートに必要な施設を島内にすべて備える。アクセスは、国の玄関口である首都マレのヴェラナ国際空港からバー環礁南部のダラバンドゥ空港まで約30分の国内線に乗り、ダラバンドゥからはジェットボートに乗り換えて15分ほど。一方、ヴェラナ空港からモルディブでは広く普及しているタクシー代わりの水上飛行機をチャーターすれば、25分ほどでミリアンドゥ島に直行することができる。

「(リゾート投資のために)モルディブ国内の何カ所かを視察したが、ユネスコの指定も受けたバー環礁のミリアンドゥ島は、最も海がきれいでダイビングに最適。マレから比較的近く、島の大きさも(開発に)ちょうどよかった」。ベルーナの安野洋開発本部長は、同島への投資を決めた理由を話す。

無人島を50年リース
和のティスト取り入れたデザイン

通信販売事業大手のベルーナは、30年ほど前から会社の資産活用の一環として不動産を保有してきた。2000年代に入ったころ、東京・渋谷駅近くで不動産開発案件があり、「ホテル事業であればマンション分譲のような一過性ではなく、継続した収益が得られる」とホテル事業に参入。その後、軽井沢など国内のリゾートホテル経営に加え、海外では米国、スリランカ、マレーシアで不動産投資を展開してきた。

モルディブへの投資のきっかけは6年ほど前、スリランカへの投資でパートナーとなった同国企業から紹介を受けたことだ。欧州からのバカンス先として成長したモルディブは、中国やロシアからの観光客の急増で積極的な外資によるホテル誘致に動いていた。最も条件がよかったミリアンドゥ島を選択したベルーナは、モルディブ政府観光省から開発許可を受け、無人島だった島の50年リース契約を締結。コンペティションを実施し、和のテイストを取り入れたイタリア人デザイナーのデザインを採用して建設した。

世界でもまれなコンセプト
コロナ前上回る稼働率

ミリアンドゥ・リゾートは開業から1年半も経たないうちに、新型コロナウイルス感染拡大に見舞われた。モルディブ政府は2020年4月から外国人観光客の受け入れを停止し、リゾートも休業。しかし同年7月には入国停止は解除され、リゾートは11月から営業を再開した。

再開後のミリアンドゥ・リゾートの稼働率は12月52・2%、2021年1月53・4%、2月50・8%、3月60・3%、4月39・5%と、開業直後で30~40%程度だったコロナ前の稼働率を上回っている。安野本部長は「この時期、モルディブは隔離なしで訪れることができる数少ない旅行先だったため」と分析。「一島一リゾート」が原則の同国のリゾートは、感染の懸念が低いことも好況の原因になっているとみられるという。

ミリアンドゥ・リゾートの宿泊客はコロナ前は米国、中国、欧州、ロシアが多く、コロナ後はこれにインドと中東からの客が加わった。4月にやや稼働率が落ちたのは、インドのコロナ変異株による感染爆発が影響したとみられる。

日本からの宿泊客は10%に満たない程度で、多いとはいえない。日本からモルディブへは直行便がなく、航空機の乗り継ぎで所要時間が長くかかることがネックになる。「モルディブはハネムーンで行く高級リゾートと思われがちだが、『非日常の南国』のモルディブへのニーズはハネムーン以外にもあるはず」と安野本部長。「日本人にモルディブをもっと知ってもらいたい。会社としても施策を検討していく」という。

グローバルチェーンが投資
日本の企業にもチャンス

モルディブのリゾート開発・運営は、現時点ではマリオットやヒルトンなどのグローバルなホテルグループか、タイやシンガポールなどの大手ホテルチェーンが中心。日本から遠いこともあり、日本企業の参入は進んでいない。

「オーナー企業としてリゾートの運営にも口を挟んでいる」という安野本部長は、「ホテルのデザインに日本風を取り入れ、日本流の細かく繊細なサービスを行うことも、他のリゾートとの差別化を図ることができて面白いのではないか。実際、健康志向もあって現地でも日本食は大変な人気だ」と話す。

投資について安野本部長は、「コロナ前よりも売り上げも伸びており、現時点で概ね満足している。今後もよりよくなると期待している」と評価する。

「コロナ後、ロシア系や中東、インドなどこれからもリゾート需要の拡大が見込める国々からの宿泊客が増えた。一つの島に一つのリゾートという世界でもまれなコンセプトの基に、モルディブのリゾート産業は長期的に成長していく。政府も外資の呼び込みに取り組んでおり、日本企業にとっても投資の可能性は充分にある」と指摘する。

リゾートの風景は「非日常の南国」のイメージそのものだ =ベルーナ提供

 

 

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