日本の支援が果たしてきた役割と今後

寄り添い協力、今後も全力で支える
1971年に独立したバングラデシュの歩みを支えてきたのが日本の支援だ。JICAは1973年に青年海外協力隊を派遣したのを皮切りに、技術協力や円借款、無償資金協力などを通じて、電力や交通・運輸など大型インフラ整備から、防災、地方の農村開発など幅広い分野に及ぶ支援を実施してきた。
セミナーではバングラデシュ政府経済関係局のファティマ・ヤスミン次官がビデオメッセージで「日本はバングラデシュにとって最大の二国間開発パートナー」とあいさつ。また、外務省国別開発協力第二課の秋山真理課長が「バングラデシュは伝統的な友好国で戦略的にも重要な場所にあり、日本はバングラデシュとの関係を非常に大切にしてきた」とスピーチした。
JICAの山田順一副理事長は基調講演し、「バングラデシュの50年の歩みは世界でも大きな成功例。JICAは一貫してバングラデシュに寄り添って協力してきたが、今後も成長を全力で支えていく」と強調した。

新たな協力の視点を提供
続いて渡邊正人・日本バングラデシュ協会会長▽佐竹右行グラミンユーグレナ社長▽大橋正明・恵泉女学園大学名誉教授▽サイード・ナシル・エルシャド大使館経済公使▽伊藤晃之JICA南アジア部長――の5人が登壇しパネルデスカッションが行われた。


元駐バングラデシュ大使の渡邊氏は「日本バングラデシュ協会の会員企業は当初は縫製業が多かったが、最近は製造業、商業、ITに広がり、この1、2年は建設業が活発。進出企業が直面することが多い税や関税分野の問題にも、JICAが取り組むことが可能だと考えている」と期待を表明した。
バングラデシュでソーシャルビジネスに取り組む佐竹氏は「難民支援や社会的事業をビジネスとしてやってきた。もうけを出すことが目的ではなく、利益を事業に再投資して拡大していく。これが本当のサスティナブルだと思っている」と意気込みを語った。


独立直後からバングラデシュで市民ボランティア活動に携わってきた大橋氏は「ODAに関しては無償資金協力が減り、有償が増えている。インフラ整備の重要性を否定しないが、同時に適正な社会開発を伴う必要があり、有償協力だけではなく無償協力も続けるべきだ」と訴えた。
エルシャド経済公使は「政府の目標は、すべての包括的な成長と繁栄の国造り。日本の継続的な支援に感謝する」と表明。特に、ベンガル湾沿いに産業集積を図る「ベンガル湾産業成長地帯構想」への技術的、財政的支援や、国内の大河を渡る橋梁建設、首都ダッカの高速鉄道建設などに謝意を示した。さらに今後、人材育成や医療や福祉介護、環境分野での協力を深めていきたいとの考えを示した。

JICAの伊藤氏は「パネリストのみなさんに貴重なご意見をいただいた。JICAは政府や民間企業、市民団体の方々をつなぐことができると考えている。今後も『つなぐ』役割を果たしてきたい」などと述べた。
最後に大使館のシャハブッディン・アーメド駐日大使が「バングラデシュとJICAとの新たな協力関係のアイデアを提供してくれたみなさんに感謝したい。本日のアイデアは、日本の支援の最大限の活用に貢献してくれることだろう」と謝辞を述べた。
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