駐日大使インタビュー① インド

ビジネス環境大きく改善
長期的視点でウィン・ウィンの関係を

サンジェイ・クマール・ヴァルマ駐日大使

インタビューに答えるインドのサンジェイ・クマール・ヴァルマ駐日大使=東京都千代田区のインド大使館で西尾撮影
今月号から毎月、アジアやアフリカなどの新興国駐日大使に、進出先としての魅力や参入へのアドバイスを聞くインタビューシリーズを連載する。1回目は、中国に並ぶ13億人の巨大市場で、ITに代表される高度技術分野でも急成長して世界で存在感を増すインド。サンジェイ・クマール・ヴァルマ駐日大使に、参入への助言や、インドのスタートアップ企業との連携の可能性などについて聞いた。【毎日アジアビジネス研究所・西尾英之】
――昨年の総選挙で圧勝し2期目に入ったモディ政権は、海外からの投資を促進し製造業の成長を図る「メーク・イン・インディア」政策で、日本の企業からも高い評価を得ています。メーク・イン・インディア政策について教えてください。

「メーク・イン・インディア」政策は、単に海外からの投資を呼び込むだけでなく、すべてを含んだインドの「エコシステム」の向上です。インドの製造業に関する政策は十数年前まで、(輸入していたものを国産化する)「輸入代替」という考え方に基づいていました。それ自体もインドの経済成長を後押ししたのですが、さらに急成長を目指して取り組んだのが「メーク・イン・インディア」政策です。これには複数の狙いがあり、具体的には「輸入代替」に加え、「輸出拡大」「国内市場拡大」、さらにはそれまでインドにはなかった高度な技術の活用です。

メーク・イン・インディアが導入された5年間で海外からの直接投資は増加し、貿易収支は赤字が続いていますがその赤字幅は減少。テクノロジーのイノベーションも拡大し、スタートアップも増加。これらの結果、雇用情勢も改善しています。

そういった総合的な努力の結果、世界銀行による「ビシネスのしやすさ指数」は、5年前の142位から63 位に向上しました。

「多層的な市場」理解し中小企業も参入を

――ビジネス環境の改善に伴い、日本企業のインドへの関心も高まっています。日本企業の進出について、特に歓迎する分野はありますか?

ギャンブリングや武器などの外国からの投資が禁じられた少数の分野以外であれば、どのような分野であれ、日本企業による投資を歓迎します。

日本企業のインドへの投資は伝統的に、自動車、化学、電機、設計などの分野で多く行われてきました。しかし今は、新しい分野が広がっています。IT産業の分野です。日本企業はインドのスタートアップ・エコシステムに参入して、自身の事業に付加価値をつけることができます。その上で利益を得て、さらにインド市場への理解を深めることができます。

私は、両国間で「ウィン・ウィン」のプラットフォームをつくりたい。日本企業はインドで事業を継続するための適正な利益を上げ、一方でインドの能力開発、インフラ開発、テクノロジーの発展に寄与してもらうという関係です。大企業はもちろんですが、私は特に中小企業を歓迎します。

――日本の中小企業には、まだインドへの参入は難しいと感じる企業もあります。何かアドバイスはありますか?

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