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トップストーリー: 急務、プラゴミ対策

急速に進むルール作り
――プラスチックを取り巻く国際環境の変化

プラスチックを取り巻く国際環境が変化している。2017年末に中国が廃プラスチックの輸入を禁止したことで、世界最大の廃プラスチック市場が閉ざされた。その後、一時は東南アジアが中国の代替地として注目を集めたが、これらの国々でも次々に規制が導入され、廃プラスチックは行き場を失いつつある。他方、世界各国で環境問題の観点から「脱プラスチック」の機運が高まっており、プラスチック製品の利用を抑制する動きが起こっている。本稿では、プラスチックをとりまく環境変化を、(1)廃プラスチックの輸入規制(2)脱プラスチックの取り組み――の2つの潮流に分けて説明する。【ジェトロ海外調査部国際経済課柏瀬あすか】

(1)廃プラスチックの輸入規制

中国を契機とした廃プラスチックの輸入規制

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注1=中国の輸入量の対世界構成比は、データの制約上、主要39カ国・地域の輸入量を基に算出した。39カ国・地域は図表1参照。注2=廃プラスチックはHSコード3915で定義。出所=グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成

廃プラスチックの輸入規制の発端となったのは中国だ。2017年7月、中国国務院は「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」を発布、環境への影響が大きく、国民の健康に大きな影響を与える固形廃棄物の輸入を17年末から禁止するとした。その後、同国の環境保護部など5部門が新たな輸入ごみ管理リストを公開し、主に生活由来の廃プラスチック8品目を含む、24品目が同年12月31日から輸入禁止となった。

18年4月19日には、生態環境部など4部門が共同で「『輸入廃棄物管理リスト』の調整に関する公告」を発表した。その後、同公告に基づき、工業由来の廃プラスチックも同年12月31日から輸入禁止となった。

廃プラスチックを含む、資源ごみの輸入禁止措置や密輸取り締まりは厳格に実施されており、その結果は貿易統計にも表れている。

18年の中国の廃プラスチック輸入量は5・2万トンと、前年の582・9万トンから激減した(図1)。中国は17年まで世界の約半分の廃プラスチックを受け入れる、最大の輸入市場であったが、輸入規制によって対世界シェアは0・8%にまで縮小した。

輸出側の統計を見てみると、米国、ドイツ、日本など主要国・地域の18年の輸出量は757・5万トン(前年比32・5%減)と、中国の輸入規制を受け、日本を含む各国・地域で輸出が減少していることがわかる(図表1)。

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注1=2018年の輸出量が上位10位以内の国・地域のみ掲載。注2=39カ国・地域はアルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、コートジボワール、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、香港、インド、インドネシア、イラン、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、ケニア、ルクセンブルク、マレーシア、メキシコ、オランダ、フィリピン、ポルトガル、ロシア、シンガポール、南アフリカ共和国、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、タイ、英国、米国。出所=グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成

東南アジア諸国も相次いで廃プラスチック輸入を規制

中国の輸入規制は東南アジア各国に大きな影響をもたらした。2016~18年の各国・地域の廃プラスチック輸入量をみると、18年に軒並み増加していることがわかる(図2)。東南アジアや台湾が輸出先の代替地となったのだ。

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出所=グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成
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出所=グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成

日本の廃プラスチックの輸出動向を見ても、東南アジアや台湾が中国の代替地となったことは明らかだ。中国の規制導入前後(16年と18年)で日本の廃プラスチックの輸出先をみると、規制導入後の18年は、マレーシアやタイ、台湾、ベトナム向けの輸出が増加した(図3)。日本はこれまで、廃プラスチックの半分以上を中国に輸出していたが、中国への輸出が困難になったため、新たな輸出先を探さざるを得なくなり、東南アジアや台湾への輸出が増加したとみられる。

しかし、東南アジア諸国や台湾も、急激な輸入量増加を受け、相次いで廃プラスチックの輸入規制を導入している。

マレーシアでは政府が、輸入時に取得が義務付けられる輸入許可書(AP)の認可基準を強化することで、違法工場がAPを取得できないようにし、環境に悪影響を与えうる廃プラスチックの国内流入を阻止する取り組みを行っている。

タイでは18年7月、国内の港での廃プラスチックや電子廃棄物などを積載したコンテナの荷揚げが禁止された(通達ベース)。さらに、ジェトロが工業省工場局に問い合わせたところ、当局がプラスチックごみの輸入ライセンスの発給を一時停止していることが分かった。今後は、16年までの輸入許可実績に応じて輸入枠を設定し、21年には全面輸入禁止とする方針だ。

ベトナムでは、18年7月に、全土で廃プラスチックを含む輸入廃棄物の管理強化が行われ、10月末には天然資源環境省の輸入許可基準が厳格化された。また、19年5月には、廃プラスチックを含む廃棄物の輸入者を「輸入廃棄物を使用する製造施設を有する組織または個人」に限定するなど、さらなる基準の厳格化が行われた。

このほか、従来から廃プラスチックを貿易管理品目としていたインドは、19年8月31日から輸入を全面禁止とした。また、インドネシアやラオスでも、廃プラスチックの輸入禁止・規制が検討されている。中国に代わる廃プラスチック受入国が現れる可能性は低く、日本を含めた各国・地域が、廃プラスチックを東南アジアに輸出し続けることは困難であろう。

強まる規制を受け、一部の廃プラは国内に回帰

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注=2018年7月末と比較した、19年2月末時点の状況についての回答出所=環境省「平成30年度下半期 外国政府による廃棄物の輸入規制等に係る影響等に関する調査結果」

廃プラスチックの輸入規制に加え、19年5月にはバーゼル条約締結国会議で、リサイクルに適さない汚れたプラスチックごみを同条約の規制対象とする改正案が採択された。バーゼル条約は有害廃棄物の定義や輸出入を規定する国際条約で、約180の国・地域が批准している。今回の改正は、ノルウェーがはじめに提案し、日本を含む各国が賛同したことで実現した。

改正された条約は21年1月1日から施行予定で、汚れたプラスチックごみを輸出する際に相手国の同意が必要となる。改正されたバーゼル条約が施行されると、未分別や未洗浄のプラスチックの貿易が困難となることから、国内処理の必要性が一層増すだろう。原田義昭環境相(当時)は、バーゼル条約改正の共同提案国となることを発表した19年2月26日の記者会見で、「国内の処理体制を整える必要がある」と述べている。

各国・地域の輸入規制やバーゼル条約改正で行き場を失っている廃プラスチックの一部は、国内で処理されるようになりつつある。19年5月に環境省が発表した「外国政府による廃棄物の輸入規制等に係る影響等に関する調査結果報告書」によれば、廃プラスチックの保管基準違反及び保管量の増加傾向を確認したと回答した自治体が32・0%(39件)となった。さらに、廃プラスチック収集運搬業者の49・4%、中間処理業者の51・9%、最終処分業者の33・3%が、18年7月末に比べ処理量が増加したと回答した(図4)。また、廃プラスチックの一部は、ペレットに加工されて輸出されている可能性がある。ペレットとは、リサイクル製品の原材料となるもので、ペットボトルなどのプラスチックを細かく砕いて異物を除去・洗浄・乾燥し、粒状にしたものである。中国も、ペレットの輸入は禁止していないため、日本で廃プラスチックをペレットに加工すれば、輸出することは可能である。

廃プラスチックの輸出が規制されつつある中、新たな輸出先を探すという視点だけでは、対応が困難となっており、国内処理の必要性はより一層高まっている。

(2)脱プラスチックの取り組み

適切にリサイクルされるプラスチックごみはわずか

プラスチックを取り巻く環境変化の、もうひとつの潮流が「脱プラスチック」だ。プラスチック製品の利用を控えたり、規制したりする取り組みで、特にプラスチック袋や食品パッケージなどの使い捨てプラスチックに注目が集まっている。国連環境計画(UNEP)の報告によれば、2015年に製造されたプラスチック製品のうち36%(約4億トン)が包装用の使い捨てプラスチックだった(図5)。さらに、包装用プラスチックの処分状況をみると、適切にリサイクルをされた割合は14%にとどまり、残りの86%が、埋め立てや焼却、または環境に漏出していたという(図6)。

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出所=”Single Use Plastics: A Roadmap forSustainability(2018年)”(国連環境計画)
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出所=”Single Use Plastics: A Roadmap for
Sustainability(2018年)”(国連環境計画)

適切に処理されなかったプラスチックごみは、海鳥や海洋生物がプラスチックを誤飲して死んでしまう危険性や、海に投棄されたプラスチックが細かい破片(マイクロプラスチック)となって魚の体内に蓄積され、食物連鎖を通じて人体に取り込まれる可能性が指摘されている。

ごみ処理能力の限界や、適切にリサイクルされないプラスチックごみが環境や人体に悪影響を与える懸念から、各国・地域でプラスチック製品の製造、販売、利用、輸入に対する規制が導入されている。

各国・地域で様々なプラスチック規制を導入

EUでは、2015年5月にプラスチック袋を規制する、EUの包装および包装廃棄物に関する指令が採択されている。さらに、欧州委員会は18 年1月16日、「循環型経済( サーキュラー・エコノミー)における欧州プラスチック戦略」と題した政策文書を公表し、2030年までに全てのプラスチック包装のリサイクルの徹底を目指すと表明した。同戦略の履行のため19年5月21日に採択された「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」では、綿棒、フォークなどのカトラリー、皿、マドラー、ストロー、風船の棒が21年から原則として市販禁止対象とされた。今後はEU加盟国が指令に対応した国内法を整備していくことになる。

EU加盟国が、EU法よりも厳格な規制を設ける場合もある。フランスはEUの指令よりも規制対象を広げ、規制の導入を早める予定だ。19年7月には、再利用やリサイクルの促進による廃棄物の削減と循環経済の構築を目的に、「無駄との闘いおよび循環経済に関する法案」を閣議決定した。同法案では、生産者の責任で回収・リサイクルが義務付けられている製品群を現行の14カテゴリーから拡大する内容を含んでいる。

脱プラスチックを商機とみなし、代替品開発に力を入れる企業も存在する。イタリアのバイオパップは、生分解性およびリサイクルや堆肥化が可能な素材のトレーを製造している。このトレーはオーブンや冷凍にも対応できるという。フィンランドのプラスティロールは、生分解性の透明なパッケージフィルムを製造している。同社のパッケージフィルムは通気性が良く、包まれた野菜などの鮮度を保つことが可能だ。これらの企業は、単に環境に優しいだけでなく、プラスチック製品と比べても同等またはそれ以上の機能を果たす付加価値を持った素材の開発に取り組んでいる。

アジア・大洋州でも進む脱プラスチック化

アジア・大洋州では、前半で紹介した廃プラスチックの輸入規制に加え、脱プラスチックに向けて取り組む国・地域がある。インドのモディ首相は2018年6月、使い捨てプラスチックを22年までに全廃すると発表した。さらに、同国西部マハーラーシュトラ州は18年3月23日、これに先駆ける形で「プラスチックおよびポリスチレン製品の製造、使用、販売、移動、取り扱い、保管に関する通達」を出し、レジ袋や非生分解性の素材で作られたストローなどのプラスチック製品の使用が禁止となった。同通達は6月23日に発効し、業界団体などから大きな批判があるものの、現状では流通するプラスチック製品などがなくなりつつある。

フィリピンの主要都市では、以前からレジ袋などのプラスチック利用を禁止する条例が制定されている。マニラ首都圏のマカティ市やケソン市はプラスチック製レジ袋の使用を規制、ミンダナオ島ダバオ市ではリサイクル可能なプラスチック袋を当局が推奨している。地方政府の動きを受け、フィリピン政府では、外食や飲料を提供する事業者にプラスチック製ストローおよびマドラーの使用を禁止する法案や、使い捨てプラスチックの輸入、製造、利用を禁止する法案が審議されている。

インドネシアでは、バリをはじめとする一部の地方都市が使い捨てプラスチックを利用禁止にしており、他の地方都市でも利用規制草案の作成が検討されている。スリランカやバングラデシュでも、レジ袋の製造、販売、使用のすべて、またはいずれかが禁止されている。

台湾では、18年2月13日に、行政院環境保護署が環境保護団体と共同で、海洋ごみの削減をめざす「台湾海洋廃棄物治理行動法案」を発表した。同法案では、プラスチック製レジ袋、使い捨てのプラスチック食器や持ち帰り用プラスチックコップ、プラスチックストローに対し、使用制限が示された。いずれの商品も、2030年には全面的に使用が禁止される方針だ。

オーストラリアも、政府主導で廃棄物管理やリサイクルを推進している。連邦政府および州・準州政府は18年4月に、すべての包装材を25年までにリサイクル可能、堆肥化可能、あるいは再利用可能にする目標を掲げ、国内リサイクル産業の発展やリサイクル製品の需要拡大に向けて協力することに合意した。

日本は、UNEP報告書によれば、これまで使い捨てプラスチックに関する使用禁止令はないとされていた。しかし、19年のG20エネルギー・環境相会合で、20年4月1日にもレジ袋を有料化するという方針が示された。

米国では「マイクロビーズ禁止水質法」

米国では、カリフォルニア州やマサチューセッツ州、ワシントン州の自治体がプラスチック袋やストローに関する規制を導入している。スターバックスのお膝元であるシアトル市(ワシントン州)では、2018年7月から、飲食物の販売を行う事業者に対して、ストローをはじめとしたプラスチック製食器類の使用禁止を決定した。

連邦レベルで特定のプラスチックの製造を禁止するものとしては、オバマ前大統領時代の15年12月に「マイクロビーズ禁止水質法」が制定されている。マイクロビーズは、角質除去や研磨効果があるため、洗顔料や歯磨き粉などに使用されているが、下水処理場で除去ができずに湖や海に流出し、食物連鎖に影響を与える可能性が指摘されている。米国では17年7月から同物質を含む歯磨き粉などの製造が禁止され、18年7月からは州をまたいでの流通が禁止された。

カナダ連邦政府も18年7月までに、マイクロビーズを含むトイレタリー製品の製造、輸入、販売を禁止しており、19年7月からは、これまで規制の対象外となっていたマイクロビーズを含む自然健康製品と非処方薬の販売も禁止となった。

さらに、18年6月にケベック州シャルルボワで開催されたG7サミットでは、カナダ政府の主導により「健全な海洋および強靭(きょうじん)な沿岸部コミュニティーのためのシャルルボワ・ブループリント」が採択され、海洋プラスチック廃棄物などの生態系への脅威の緊急性を認識するとともに、より資源効率的で持続可能なプラスチック管理への移行にコミットしていくことが確認された。

また、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国およびEU首脳は、「G7海洋プラスチック憲章」に署名しており、2030年までにプラスチック包装の55%をリサイクルまたは再利用し、40年までにはすべてプラスチックを回収するよう産業界や政府と協力するとしている。

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チュニジアのスーパーマーケットで販売されている布製のエコバッグ=ジェトロ

中南米、アフリカでは違反時に高額罰金も

中南米では、アルゼンチンのブエノスアイレス州が2009年からすでに、スーパーマーケットにおけるポリプロピレン素材袋の提供を禁止していた。また、中南米の物流拠点として栄えているパナマは、18 年1月に、中米で最も早くプラスチック袋の使用規制を法制度化した(施行は20年7月の予定)。

チリは、南米で最も早くプラスチック袋の使用規制を法制度化した。チリは南北に約6400キロメートルの海岸線を持ち、多様な海洋生物の生息地があることから、国民の環境への意識が高い国だ。チリ政府が事前に実施した「全国環境アンケート2017―2018」によると、95%が法制度化に賛成したという。同規制では、19年2月3日からは、大企業に対しB to C(主にスーパーマーケットなどの小売り)においてプラスチック袋の提供が全面禁止となった。中小企業も20年8月3日から対象となり、違反時には、1枚当たり約300ドルの罰金が課せられる。

アフリカでは18年までに、54カ国中、30カ国がプラスチック袋を使用・販売・製造・輸入規制の対象とした(ジェトロ調べ)。03年に南アフリカ共和国が初めてプラスチック袋の使用を規制したことを皮切りに、13年から18年までの5年間に20カ国が相次いで法律を施行した。

アフリカにおけるプラスチックの規制導入は、ごみの量を減らすことが最大の目的とみられる。急速に拡大する消費に伴ってごみの量が増加したものの、その処理能力が追いついていないためだ。UNEPと南アフリカ共和国の科学産業研究所が18年6月に発表した、アフリカの廃棄物処理に関する調査報告書によると、96%のごみがリサイクルされていないという。

ルワンダは、08年にプラスチック袋の国内製造、輸入、使用を禁止した。規制開始から10年が経つ同国の市場やスーパーマーケットでは現在、プラスチック袋の代わりに、紙袋が無料で配布されている。また郊外の市場では、コメ袋からリサイクルされたエコバックがおよそ300ルワンダフラン(約36円)で販売されている。

ケニアは17年に、プラスチック袋の製造、輸入、包装、使用を禁止した。違反した個人または団体には、200万~400万ケニア・シリング(約220万~440万円)の罰金、または1~4年の懲役、もしくはその両方が科せられ、欧米メディアから「世界一厳しい」規制と称されている。

プラスチックに関する規制は今後も拡大する見通し

世界の廃プラスチック輸入規制は今後も厳格化される見通しだ。中国の輸入規制後、各国・地域独自の輸入規制に加え、バーゼル条約でリサイクルに適さない汚れたプラスチックの貿易が規制されるなど、国際的なルールづくりが進んでいる。

中国のような巨大な輸入市場が現れる可能性や輸入規制が解かれる見込みは薄く、今後は使用済みプラスチックを適切にリサイクルするための能力強化が求められるだろう。

「脱プラスチック」の動きも拡大する見込みだ。特に、プラスチック袋などの使い捨てプラスチックについては、適切にリサイクルされる割合が少ないことから、国・地域・自治体など様々なレベルで規制が導入されている。違反に罰金等が課される場合もあるため、各企業においては輸出・進出先ごとにルールを確認し、自社でできる部分から対策を講じる必要がある。

■柏瀬あすか
日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部国際経済課。2018年4月、ジェトロ入構。同月より現職。


廃プラ禁輸
変わる中国のプラスチック産業

経済ジャーナリスト・陳言

国内産業の成長支えた廃プラスチック輸入

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積み上げられたペットボトル=百度より、以下同

北京から120㌔離れた河北省文安県は、中国北部のプラスチックごみの最大の集積地である。ここには一時、2万カ所のごみ処理場があり、海外で低コストで処理できない大量の廃棄プラスチックごみ(廃プラ)が運び込まれ、地元の人々の生活を支えてきた。

2010年ごろから、同県はひどく汚く乱雑で、汚染された土地としてその名が知られるようになった。現地政府は処理場の取り締まりを繰り返し、多少は改善された。しかし、中国市場の廃プラ処理に対する需要は増えこそすれ、減ることはなく、同県の関連処理場は事業を近隣の県や市に拡散させ、一部は南下。中国における廃プラ処理ビジネスの規模は逆にますます壮大になり始めた。

17年7月18日、国務院事務局(日本の内閣官房に当たる)は「海外ごみ域内持ち込みを禁止し、固体廃物輸入管理を推進する制度の改革実施方案」を発表した。同年末までに世活用品由来の廃プラ輸入を禁止し、18年12月31日からは工業品由来の廃プラの輸入も禁止する、という内容だった。しかし、その後も中国市場のプラスチックに対する需要は減少する兆しを見せず、廃プラ処理関連企業は相次いで、東南アジア各国に移転の道を模索している。

中国の廃プラ処理企業は巨大な規模に成長していた。中国政府による廃プラ輸入の禁止は、世界の主要な工業国にとって、突然、自国の廃プラ処理を全面的に受け入れていた国を失ったことを意味した。各国ではペットボトルなどが大量に堆積し、処理がおぼつかない状況に追い込まれ、一部の国々では社会問題にさえなった。

廃プラ禁輸は中国産業に巨大な変化をもたらしているだけでなく、世界的にも大きな影響を与えている。廃プラを含めた一国のごみは、排出国で処理するという原則の再確認や、ごみ廃棄の削減が、世界各国が直ちに解決しなければならない重要課題になっている。

増え続けてきた廃プラ輸入

1980年代から90年代、中国は経済、工業の急成長期に入り、製造業の成長に伴い工業原料の需要も急速に増加した。しかし、中国国内の石油資源生産は需要に追い付かず、また輸入する廃プラスチックが安価で質が良かったため、多くの企業に持てはやされることになった。

日増しに増加した「海外ごみ」の輸入によって、輸入された廃プラは国内企業に原材料として提供されただけでなく、河北省文安県のように廃プラ処理の大小の企業を育てた。しかし、輸入廃プラは国内の工業発展には効果があったものの、巨大な代価を支払わせた。「環境問題」である。高エネルギー消費、高汚染は、メディアの目に「海外ごみ」を処理する再生プラ企業の最大の汚点に映った。文安県にとって、技術力、産業集積度、汚染処理水準の低い「超零細」企業は確かに悩みの種だった。そうした処理場が拡散すると、中国各地の廃プラ処理場は超零細状態から抜け出せなくなるからだった。

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海外から輸入された廃プラの価格は輸入プラスチック原料のわずか3分の1で、これに加工コストを加えても原料を利用した場合の2分の1で済む。ビジネスの観点から言えば、これは明らかにうまみのある商売だった。中国環境部(省)のデータによれば、09年に全中国で廃プラ輸入・加工を行なっていた合法企業は多くとも1600社であり、認可された輸入量は1484万トンだったが、これは企業が申請した量の半分程度であり、大量の廃プラが闇で中国に持ち込まれていることは明らかだった。

中国は世界最大のプラスチック生産国であり、消費国でもある。2010年以降、中国は世界の4分の1のプラスチックを生産し、一方でその消費量は世界の3分の1を占めている。プラスチック加工業の成長が鈍化し始めた14年でさえ、中国のプラスチック製品生産量が7388万トンだったのに対して、国内消費量は9325万トンに上っている。生産量と消費量の差は、輸入と廃プラ再生で埋めたに違いない。

巨大な需要によって、プラスチック原料は膨大な規模の必需品となり、その生産原料として廃プラの回収加工は貴重だった。ここで注意しなければならないのは、廃プラは実際に、廃銅、古紙同様に合法的な再生回収資源であるということだ。中国商務部(省)が発表した中国再生資源産業発展報告によると、14年に、全中国の回収廃プラ量はピークの2000万トンに達し、年間消費量の22%を占めた。回収した廃プラの価格は1100億元(約1兆6500万円)であり、環境要素を全く考慮せずに処理した場合、利潤は莫大だった。密輸入を含む廃プラ輸入は、次第に一つの巨大産業になっていった。

中国は1990年前後から海外の廃プラを大規模に輸入し始めた。2016年に部分的に輸入を禁止するまで、26年間の「海外ごみ」輸入の歴史がある。この間に中国は他国から1億600万トン前後の各種廃棄物を受け入れ、世界の72%のプラスチックごみが中国に輸入された。

大企業が進出
生き残りかけ海外転出図る零細業者

16年から、中国は立て続けに多くの環境保護対策を打ちだし、廃プラ輸入を停止した。17年7月、中国は世界貿易機関(WTO)に対して、各種高汚染固体廃棄物の輸入禁止を明確に表明し、同年8月、中国海関総署も生活用品由来の廃プラを禁輸リストに加えた。18年以降、「廃プラ禁輸令」はさらに強化され、中国は次第に廃プラ輸入時代の終えんを迎えつつある。

中国の廃プラ輸入禁止は一時、米国、日本等の各国の廃品回収産業を困難に陥れ、同時に輸送コストの高騰と廃プラ原料の価格低下によって、一部の国の廃プラ貿易はほとんどうまみがなくなり始めた。

中国国内では、18年に廃プラ禁輸時代が始まって以来、輸入廃プラ再生市場はほとんど機能しなくなった。一部商社はプラスチック顆粒輸入に切り替え、一部は海外に工場を設置し、また一部は国内市場を縮小し、国産廃プラを使用する生産に転換した。中国市場の生産資源の質に対する要求は厳格化し、排水、排気は国内基準に達していなければならない。18年、多数の再生産企業が操業半減の状態になった。

一方、廃プラ輸入制限によって、中国の再生プラスチック市場の競争はさらに激化している。再生プラスチック市場では中小企業の生存空間がさらに狭まり、単に貿易をしていた企業がますます圧力を強めている。さまざまなタイプの企業が直面しているリスクと選択には大きな違いがある。大企業はさらに多くの市場機会を展望している。例えば、葛洲壩(葛洲ダム)集団、啓迪桑徳環境科技発展、中節能ソーラーエナジーテクノロジーなど、中央国有企業や上場企業が相次いで、プラスチック再生産業に参入している。彼らはこの業界に現代的な資本運用、マネジメント理念をもたらし、業界リーダーとして、資本運用と企業提携を通じて、プラスチック再生産業の発展に寄与し始めている。

国内で既に生存の余地がなくなった企業の一部は、海外市場に活路を求め、生産能力をタイ、マレーシア、ベトナム、ラオス、ポーランド等の各国に積極的に移転している。これらの工場は廃プラを顆粒に加工再生し、その顆粒を一般商品として中国国内に輸入している。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は自由貿易協定(FTA)によって、90%以上の製品を無関税で取引し、また中国は東南アジア諸国に対する投資を増やし、中国の廃プラ企業存続の道を模索している。

しかし、恐らくは中国では零細企業に属する中国企業でも、東南アジア諸国に進出すれば、その規模は現地企業を大幅に上回る。中国企業が現地企業、現地政府との関係を適切に処理できるか否か、今後、大きな問題になる可能性が強い。

■陳言
ジャーナリスト、日本企業(中国)研究院執行院長1960年北京生まれ。82年南京大学卒。82-89年『経済日報』に勤務。89-99年、東京大学(ジャーナリズム)、慶応大学(経済学)に留学。99-2003年萩国際大学教授。03-10年経済日報月刊『経済』主筆。10年から日本企業(中国)研究院執行院長。今年1月から「人民中国」副総編集長も務める。

「容器の2030年ビジョン」
海洋プラスチックごみに取り組む―日本コカ・コーラ

日本政府は5月、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化、アジア各国による廃棄物の輸入
規制など幅広い課題に対応するため、「プラスチック資源循環戦略」を策定した。日本経団連は4月に20業種別のプラスチックごみの削減目標をまとめ、プラスチックを使用する企業に様々な取り組みを促している。先進的に取り組む日本コカ・コーラと、ローソンの2社を紹介する。
【毎日アジアビジネス研究所】
日本コカ・コーラ(本社・東京都渋谷区、ホルヘ・ガルドゥニョ社長)は、「容器の2030年ビジョン」を掲げ、海洋プラスチックごみ問題に取り組んでいる。日本コカ・コーラ技術・サプライチェーン本部の柴田充・環境サスティナビリティガバナンス部長=写真=に海洋プラスチックごみ問題に取り組む目的や具体的な実践事例などについて聞いた。

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――なぜ、プラスチックごみ問題に取り組むのでしょうか。柴田氏 コカ・コーラのミッションは、製品を通してお客様に、いつでも、どこでも、さわやかさとハッピーなひとときをお届けし、社会に価値ある前向きな変化をもたらすことです。一方で、日本コカ・コーラはフランチャイズのボトラー各社を通して地域と密着に結びついています。プラスチックごみ問題はグローバルな課題であると同時に地域に根ざした事業活動として取り組んでいます。=写真(次ページ)は琵琶湖の湖畔で清掃作業に取り組む社員

販売製品と同等量の容器回収を

――「容器の2030年ビジョン」とは何でしょうか。

柴田氏
私たちは2018年1月、自社製品をサスティナブル(持続可能な)な設計するとともに、2030年までに自社が販売した製品と同等量の容器を回収することを目指す「容器のビジョン2030」を業界に先駆けて発表しました。日本におけるPETボトルの循環型社会の実現を目指して「設計」「回収」「パートナー」の3つの柱によるアクションプランです。

――どういう進め方をするのですか。
柴田氏
今年7月に日本国内では目標を前倒しし、高いレベルの「WorldWithout Waste (廃棄物ゼロ社会)」を目指すことを決定しました。まずは、2022年までにリサイクルPET樹脂の使用量50%以上を達成して2030年にはその比率を90%にまで高めること、2025年までに日本国内で販売するすべての製品の容器をリサイクル可能な素材へと変更すること、2030年までにすべてのPETボトルを100%サスティナブル素材に切り替えて新たな化石燃料の使用ゼロの実現を目指すことなど目標を新たに設定しています。

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――具体的にはどのような活動をしているのですか。
柴田氏
今年5月、日本国内におけるプラスチック資源の回収と循環利用への貢献を目的として、公益財団法人「日本財団」と共同で、陸域から河川へ流出した廃棄物を調査することを発表しました。これにより、プラスチック資源の流出メカニズムを明らかにすることを目指し、調査結果を年内にまとめ、国内におけるプラスチック資源のさらなる有効活用のための政策提言をする予定です。

――今年6月28、29日に日本で開催された「G20大阪サミット」でも環境問題は主要テーマのひとつとなり、特にプラスチックごみ対策は大きな課題となっていました。
柴田氏
G20に先立つ5月15日には、国会議員や閣僚、官僚を対象に、環境問題に対する関心を高め、理解を深める目的で、自民党環境部会主催の「エコ博2019」が開催されました。日本コカ・コーラをはじめ計6社が参加しました。日本コカ・コーラの展示パネルでは、「容器の2030年ビジョン」について説明したほか、「容器軽量化」「次世代素材の採用」「バイオプラスチックの積極利用」「ボトルtoボトルリサイクル」など、日本のコカ・コーラシステムの取り組みやその実績について紹介しました。6月15日から16日にかけて長野県軽井沢で開催された「G20関係閣僚会合」に合わせて行われた「G20イノベーション展」にもブースを出展=写真右=し、セブン&アイ・ホールディングスとの共同企画商品「一(はじめ)緑茶一日一本」で実現した完全循環型PETボトルなどについてご紹介しました。

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聖火リレーのユニフォームにPETボトルリサイクル素材

――来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みはどのようなものですか。柴田氏
東京2020オリンピック聖火リレーのプレゼンティングパートナーとして、聖火リレーランナーのユニホームには、日本コカ・コーラ社内で回収した5万本のPETボトルをリサイクルした素材を用いて、サスティナビリティー(持続可能性)への取り組みの一環としています。


「地球(マチ)への優しさ」重点目標
コーヒーカップ、紙製に切り替えも―ローソン

ローソン(本社・東京都品川区、竹増貞信社長)は、「地球(マチ)への優しさ」を重点目標にしてコンビニコーヒーカップを紙製に切り替えるなど脱プラスチックの取り組みを加速している。ローソン理事執行役員の村瀬達也・事業サポート本部長=写真=に環境方針や目標などについて聞いた。

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――ローソングループの環境方針「基本理念」とは何でしょうか。
村瀬氏
ローソングループは、豊かな地球の恵みを次世代に引き継ぐため、環境に配慮した事業活動を行うとともに、地域社会との共生と持続可能な発展に向けて、積極的に行動します。〝みんなと暮らすマチ〟を幸せにする、マチの〝ほっ〟とステーションの実現に向けて「3つの約束」にチャレンジします。

――「3つの約束」とは。
村瀬氏
2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。ローソングループもマチを幸せにするという企業理念実現のため、重点課題と目標(KPI)を設定し、SDGsの推進に積極的に取り組んでいます。「3つの約束」とは「圧倒的な美味しさ」「人への優しさ」「地球(マチ)への優しさ」です。このうち、「地球(マチ)への優しさ」は、(SDGsの)2030年に向けて解決すべき「17のゴール(目標)」のうち、持続可能な都市、飢餓、エネルギー、生産・消費、気候変動、海洋資源、陸上資源に対応します。

――脱プラスチックに関して、どのような目標(KPI)なのでしょうか。
村瀬氏
ローソンは今年3月、社内にSDGs委員会を設置しました。ローソングループとして2030年には容器プラスチック17年比の30%削減、オリジナル商品の容器包装環境配慮型素材50%使用、プラスチック製レジ袋100%削減を掲げています。あるべき2050年のプラスチック削減として、オリジナル商品の容器包装環境型素材100%使用を目標にチャレンジします。

――「地球(マチ)への優しさ」」の具体的な施策とは何ですか。
村瀬氏
レジ袋の削減として、ナチュラルローソンのレジ袋に、サトウキビを原料としたポリエリレンを一部使用しています。また、レジ袋削削減のために、07年3月より「コンビニECOバッグ」の普及啓発をスタートしました。19年2月末時点で、配布枚数は444万枚になりました。――他にどのような取り組みですか。村瀬氏19年より、店内淹れたてコーヒーのマチカフェアイスコーヒーのSサイズを対象に、カップは紙製に順次切り替えています。蓋は透明のプラスチック製で、これは中身が見えるように要望するお客様が多いため、ストローを使用しなくとも飲める形状のカバー蓋にしました。2月にナチュラルローソンの店舗で、紙製に変更する実験をしました。お客様の反応もよく、受け入れられると判断して5月下旬より順次、全国展開(8月末現在、約14000店舗)を行うことを決めました。プラスチック使用料は容器1個あたり約8割減り、年間で542・5トン削減されます。

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自治体と協力して地域(マチ)との連携図る

――地方自治体とはどのような提携をしていますか。村瀬氏 山梨県、やまなし森の紙推進協議会、山梨県ゴルフ場支配人会、ローソンの4者で「山梨県紙ストローのモニタリングに関する協定」を締結=写真上、ローソン提供=し、今年1月から1カ月程度、甲府市内のローソン23店舗(18年12月26日時点)で、県試作の紙製ストローをお客さまに提供し、利用されたお客さまにアンケート調査を実施するなど協力しました。また、長野県が展開している「信州プラスチックスマート運動」として、6月15日、16日に軽井沢町で開催された「G20エネルギー・環境関係閣僚会合」に合わせて、ローソン店頭で県職員が携帯用マイバッグと「信州プラチックスマート運動」のチラシを配るなど協力しました=写真左、同。今後もお客様の声をきちんと聞きながら、地域(マチ)と連携して持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきたいと考えております。