趙国祥董事長中国で総合金融サービス企業として中小企業、農家、都市部の低所得層などを主な対象とする「普恵金融」(インクルーシブファイナンス)で急成長しているのが2004年に設立された瀚華金控(ハンファ集団、本社・重慶市)である。グループを束ねる張国祥董事長=写真は同集団のホームページから=は日中教育文化交流にも力を入れ、出身地である遼寧省の教育基金会を支援し、同省小学生の日本への修学旅行を実現させる原動力になった。シリーズ4回目は中国のハンファ集団を取り上げる。【毎日アジアビジネス研究所長・清宮克良】

二階幹事長の歓迎

遼寧省自民党15月20日、東京都千代田区の自民党本部で、日本に修学旅行で訪れた遼寧省開原市の小学生34人が二階俊博・同党幹事長の歓迎を受けていた=写真。 

二階氏は「あなたたちは中国からお迎えする最も若い賓客です。日本と中国が長く交流できる人たちが来てくれ、心から歓迎します」と挨拶した。

5泊6日の日程で、日光では東照宮や中禅寺湖・華厳滝の観光、東京では早稲田大学キャンパスなどの見学、生徒たちの希望で急きょディズニーランドで楽しんだ。印刷博物館、TENQ宇宙ミュージアム訪問、日産スタジアムでのサッカーも観戦した。メインは渋谷区千駄谷小学校で小池百合子都知事も参加して学校交流をし、国会議事堂、自民党本部を訪問した。

今回の修学旅行は、昨年10月に訪中した安倍晋三首相が李克強首相との首脳会談で日中教育文化交流強化を確認、これを受けて4月に訪中した河野太郎外相が王毅外交部長と合意した日中青少年交流推進年の認定事業の一環である。二階氏は5月18日、来日した楊潔篪(よう・けつち)中国共産党中央政治局委員と会談し、修学旅行を含めた青少年交流を進めていく方針で一致していた。

遼寧省自民党2修学旅行生の受け入れ窓口になったのは武部勤・元自民党幹事長が代表理事会長を務める公益財団法人「東亜総研」である。武部氏は同党幹事長時代から交流のある金竹花・遼寧省教育基金会理事長にハンファ集団の張氏を紹介された。張氏と武部氏は3月29日、北京市の釣魚台国賓館で、日中教育文化交流協力に関する覚書に調印した。遼寧省の小中高校生との交流強化を図るため修学旅行の受け入れなどに協力する5年間の提携協定で、張氏は同省側の送り出し責任者となった=写真は自民党本部で、左から二階・同党幹事長、武部・東亜総研代表理事会長、張・ハンファ集団董事長

覚書に基づく第一弾が今回の修学旅行である。張氏は今年2月に東京で開催された日中両国の会合で「遼寧省は小中高生合わせて360万人の生徒がおります。こうした生徒を日本はじめ海外に送り出したい」との意向を示していた。

商業性と公共性の両立

 張氏は「現代社会においては商業性と公共性をつなぐ橋をかけることが必要です。この橋を作ることが我々の目的です」と語る。インクルーシブファイナンスの概念は2005年に国連が提唱したものであり、貧困を撲滅し公平な社会を目指す目的がある。出身地の子供たちが海外への修学旅行を通して知見を広げ、地球規模の視野を持ってほしいと支援する根底には、教育事業は魂を浄化させ、企業文化の質を高めるために必要であるとの考えがある。

張氏によると、中国の金融は南北朝時代(439年~589年)の南朝の寺院による質権貸付業務(質草業)が発端になった歴史的な経緯があるという。寺院経済には「金之初、性本善」(金の生まれつきは善良である)という仏教崇拝の支えがあった。張氏は「中国の伝統文化に立ち返り、善良な心を大切にして社会の調和を実現したい」と強調する。中国政府は健全なインクルーシブファイナンスを支持する姿勢を示しており、将来的に成長分野になる可能性が高い。

長江商学院張氏は1964年遼寧省北票市に生まれ、長江商学院でMBA(経営学修士)を修了し、現在はハンファ集団創業者兼董事長、重慶富民銀行董事長を務める。2004年に金融イノベーションを生かして中小企業の融資問題を解決するという初心から、伝統的な金融業界から転身し、ハンファ集団を創立した。張氏のリーダーシップのもと、ハンファ集団は公共性と商業性を両立させる持続可能なインクルーシブファイナンスを発展させ、2014年に香港証券取引所に上場した。張氏は2007年から重慶市政治協商会議第3回と第4回委員、第5回常務委員に連続当選し、長江商学院重慶同窓会会長=写真は同集団ホームページから=、重慶市工商連合会(総商会)副会長を兼任する。2015年10月には遼寧省瀋陽市人民政府シンクタンクの専門家に招聘された。

ハンファ集団によると、現時点の総資産は190億元(約3000億円)、純資産規模は80億元(約1200億円)、累積売上高は3000億元(約4兆5000億円)を超え、年間取引額は1000億元(1兆5000億円)となっている。

主なサービス対象は中小企業約20万社超にのぼり、100万人の雇用を創出し、中国でも一流の総合金融ファイナンスに成長した。ハンファ集団は傘下に民営銀行、資産管理、ファイナンス保証、マイクロクレジット、ファイナンスリースなど様々な金融サービス企業を所有している。

“中国版グラミン銀行”のモデル構築へ

 ハンファ集団は、中国版のグラミン銀行(バングラデシュにあるマイクロファイナンス部門を持つ銀行)ともいえる世界的なインクルーシブファイナンスの中国モデル構築をビジョンに掲げ、「産業と金融のシナジー、産業と金融の共生」という多様性を尊重したエコシステム(ビジネス生態系)を目指している。中国と香港で日本の投資家に資産運用サービスを行うとともに、中国の日本企業に総合的なインクルーシブファイナンスを提供する。さらに、遼寧省瀋撫新区の白沙島金融生態タウンの投資事業にも乗り出し、医療美容・リハビリなど健康産業、アニメーション・レジャースポーツなど文化・スポーツ産業、温泉・専門レストランなどレジャー産業、外資銀行・外資保険など金融産業の開発を目標としている。

一方、今回の遼寧省からの修学旅行を皮切りに、日中学生の修学旅行を中国の同省など東北地域、北京を対象に推進。遼寧省に日本の有名校と提携して国際幼稚園と国際高校の創設を目指すなど日中教育協力を支援する方針だ。中国国内では、北宋時代の文豪である蘇東坡を記念するため建立された海南省東坡書院の保護活動に力を入れ、文学、美術など歴史的な文化遺産を継承していくとしている。

教育・文化事業にも精力を傾ける張氏は「10年以内にインクルーシブ事業についての自分の『目測力』が正しかったことを証明したい。できれば5年か7年以内に。そして10年後には奇跡を起こしたい」と語り、インクルーシブファイナンスの飛躍的発展に静かな闘志を垣間見せた。

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pho_seimiya清宮克良(せいみや・かつよし)毎日アジアビジネス研究所長

1983年毎日新聞社に入社。水戸支局、社会部、政治部。98年に米ジョンズポプキンス大国際関係大学院(SAIS)客員研究員、その後、ワシントン特派員、政治部副部長、さいたま支局長などを経て、執行役員国際事業室長。中国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、タイ、ロシアでフォーラムやイベントを手がける。2018年10月から現職。