P_B1C1_0405_124201 (2)

小川忠 (跡見学園女子大学教授、元国際交流基金ジャカルタ日本文化センター所長)

前回はインドネシア・イスラムが非寛容な方向に傾斜していく流れに抗して活動しているイスラム女性指導者たちを紹介したが、今回は逆に強硬派の中心人物に焦点をあてたい。世界最多のイスラム人口を抱える多民族で無視できない存在が、ラーマン・クルアーン学習センター指導者のバクティアル・ナシル師である。

再選確実と見られていたアホック・ジャカルタ特別州知事を失脚させた、大規模な大衆デモの中心にいたのが、彼だ。数十万人におよぶイスラム・デモ隊がジャカルタ中心部で放出するエネルギーの凄まじさを誰も予期できず、政治家やメディアを震撼させた。

2016年11月4日のデモに数十万のイスラム教徒が参加し、一部が暴徒化して首都を混乱に陥れたのに続き、月2日のデモでは万人が集まったとされる。金曜日の集団礼拝を名目に集まったこの日の集会(後に「212運動」、もしくは「イスラム擁護運動」と呼ばれる)に、ジョコ大統領も姿を見せデモ参加者とともに雨の中、神への祈りを捧げた。翌年断食月の初日、大統領はバクティアル師らデモを主導してきたイスラム強硬派幹部を大統領宮殿に招待し、対話を呼びかけた。イスラム強硬派が持ち始めた政治力を、もはや大統領さえ無視できないことを示す光景であった。

続きは会員専用(Members only)です