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大武健一郎

元国税庁長官、 NPO法人ベトナム簿記普及推進協議会理事長

ベトナムで「日本語による複式簿記」の普及活動を始めて14年、NPO法人をつくって10年の歳月が流れた。今年7月、私が理事長を務めるベトナム簿記普及推進協議会は、外務大臣表彰をいただいた。いまは、ハノイ貿易大とハノイ大学のビジネス日本語学部で講座を持って教えているほか、ハノイを中心に日本語と複式簿記の普及に努めている。

この間、ベトナムは経済成長を遂げ、豊かになった。普及活動を始めた頃、学生たちは貧しく、日本での実務研修に招待すると、家族総出で空港まで見送りに来て、来日どころか海外旅行自体が全く初めてという学生ばかりだった。

当時、来日した学生の中には「子どもの頃は豚と一緒に寝ていた」という学生もいたし、日本に持ってきたアオザイも入学式の時に買った古い物であった。でも、ここ最近来日する優秀な学生の中には「日本は4回目だ」と語る学生や、高校時代に1年間、交換留学で来ていたという学生もいた。持ってくるアオザイもカラフルな新品だった。

それでも、統計上はいまだに貧しい国と位置付けられている。国際通貨基金(IMF)の2017年の統計によると、ベトナムの一人あたりGDPは世界135位で、2353ドル(約26万円)となっている。マレーシア(69位)、タイ(86位)インドネシア(117位)、フィリピン(128位)、ラオス(133位)よりも貧しい国とされている。ところが、その実態は全く違っている。

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