元「愛国少女」の懸念:台北・福岡静哉

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香港では2019年6月、政府に対する抗議活動が本格化した。返還後に中国本土から移り住んだ100万人を超えるとされる市民は今、どんな思いでいるのか。中国福建省出身の女性、鄭さん(20代)=仮名=に話を聴くことができた。

母が香港人と再婚し、15歳で香港に移住した。「愛国少女で、中国共産党は絶対に正しいと信じて疑わなかった」。故郷にいた時期をそう振り返る。だが香港に10年以上暮らす中で、民主派支持の立場に変わったという。

大学を卒業し、ソーシャルワーカー(日本の社会福祉士に似た仕事)として働く。貧しい本土出身者を支援する市民団体にも加わっている。そこで香港社会の不合理を感じることがある。鄭さんは「本土出身者を支援する団体は親中派支持が多く、政府から財政的な支援を得やすい。しかし私の所属する団体は民主派に近いため、財政的には常に苦しい」と証言する。

鄭さん自身も抗議デモに積極的に参加してきた。だが19年夏ごろから、「親中派」とレッテルを貼られた飲食店などを狙った破壊行為が目立ち始め、支援してきた本土出身者からこんな相談を受けるようになった。「勤め先の会社がストライキに参加したことで給料が減った」「中国人観光客が減って会社の売り上げが落ち、職を失うかもしれない」。鄭さんによると、本土出身者には比較的、低所得者層が多いという。この時期、デモや破壊活動の影響で経済が停滞しているとの報道が相次いだ。抗議活動を支持していた本土出身者の中にも、生活への悪影響から反対に転じる人が出始めた。鄭さんは「経済的な弱者はしわ寄せを受けやすい。(デモへの反対は)仕方がない部分もある」と理解を示す。

2020年6月30日、中国政府が香港の治安維持に関して実権を握る「国家安全維持法」(国安法)が施行された。鄭さんは今、香港の自由が失われ、香港市民が「統制慣れ」していくことを懸念する。「中国共産党による洗脳は、温かいお湯が次第に熱湯になっても気づかない『ゆでガエル』に似ている。洗脳されている事実にすら気づかなくなる」。「愛国少女」だった鄭さんの言葉には実感がこもっていた。(2020年11月、台北支局

香港の街並みを見つめる鄭さん。「福建省にいる祖父母に迷惑がかかる」として実名は明かさなかったが、後方からの撮影に応じてくれた=香港で2020年8月8日、福岡静哉撮影