トランプ氏を支持するラティーノ:ロサンゼルス 福永方人
福永方人P
世界はヒラリー・クリントン元国務長官ら民主党幹部やハリウッドの著名人などが組織する小児性愛者の「ディープステート」(影の国家)に牛耳られ、ドナルド・トランプ大統領はそのような秘密結社と闘う救世主として選ばれた――。米国ではこうした極右系陰謀論「QAnon」(Qアノン)が水面下で拡大している。大統領選の接戦州フロリダでは、トランプ氏の支持層である白人だけでなく、ラティーノ(中南米系)の間でもスペイン語で拡散していると聞き、同州南部マイアミに飛んだ。そこでは、これまでのラティーノ取材とは異なる声が多く聞かれた。「民主党は過激左翼になってしまった。暴力的なブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ)運動を見ても明らかだ」。マイアミのコロンビア系、ミゲル・アランゴさん(25)は、2012年大統領選で民主党のオバマ前大統領に投票し、16年の前回大統領選では同党の急進左派、バーニー・サンダース氏を支持した。だが今回はトランプ氏に投票するという。「学校教育はリベラル色が強いので何となく民主党支持になった。16年は大学生だったため、公立大学の学費無料化などを掲げるサンダース氏に引かれたが、彼の政策は社会主義に近いと気付いた」と”鞍替え“の理由を話した。

暴力をいとわない白人至上主義グループが活発化するなど共和党側も過激化しているのでは? 私が聞き返すと、「マイアミで白人至上主義者なんて見たことがない。メディアが誇張しているだけでは」と答えた。

マイアミ周辺ではラティーノが人口の7割近くを占め、マイノリティーではない。また、距離的に近いキューバやベネズエラなど社会主義国からの亡命者やその子孫が多く、社会主義への拒否感が強い。そのためラティーノでもキューバ系を中心に共和党支持者が少なくない。移民に厳しいトランプ政権の下、ラティーノは抑圧されていると見られがちだが、トランプ氏を支持するバネサ・ロドリゲスさん(19)は反論する。「私たちは米国で誇りを持って生きている。勝手に『被害者』にしないでほしい」

先入観は排除して丁寧な取材を心がけないと、実相を見誤る。改めて肝に銘じた。(2020年11月,ロサンゼルス支局

米大統領選について議論するトランプ氏支持のラティーノたち=米南部フロリダ州マイアミで、福永方人撮影