紛争の特性を考える契機となるノーベル平和賞:ロンドン 服部正法

外信部デスク 服部正法
今年度のノーベル平和賞に、国連世界食糧計画(WFP)が選ばれた。以前から候補として名前は挙がってはいたものの、下馬評は低かった。その功績をたたえることを通じて、食糧と紛争の関係に光を当てたノーベル賞委員会の判断を支持したい。私がそう思うのは、食糧をクローズアップすることは紛争の持つ二つの特性を改めて考える契機にもなる、と考えるからだ。

特性の一つ目は、ノーベル賞委員会が授賞理由で触れたことだが、食糧が紛争において時に「武器」として使われるということだ。シリア内戦で顕著だが、アサド政権側や過激派組織「イスラム国」(IS)側が、敵方の町や村を包囲して他の地域とのアクセスを遮断、「飢えか、降伏か」を迫るような手法を用いた例が散見された。いわゆる「兵糧攻め」で民間人にも犠牲を強いる形だが、この非人道的なやり方の横行に対して、世界はもっと厳しい目を向け、断罪していくべきだ。

ノーベル賞委員会は2018年、デニ・ムクウェゲ氏(コンゴ民主共和国)とナディア・ムラド氏(イラク)を授賞者に選び、この際は「武器としての性暴力」の根絶を訴えた。コンゴなどではこれまで、戦闘員によるレイプなどの性暴力で地域や集団全体に恐怖を広める手法などが用いられた。紛争時、敵にダメージや恐怖を与える目的で様々なものが武器として用いられることに対して、注目が集まり、その阻止への機運が高まることが重要だ。

二つ目は、紛争は悪循環を招くという観点で、これも今回授賞理由で言及された。紛争が食糧難を引き起こし、食糧難はまた暴力を誘発する。紛争と関連する悪循環は食糧だけではない。貧困や経済苦もそうだ。私は以前アフリカ中部チャドで、隣国ナイジェリアからチャド湖を渡って来るイスラム過激派ボコ・ハラムによる被害を取材した。降水量の減少の影響などでチャド湖が縮小、漁獲量が減って漁業に依存していた地域経済が悪化した。そこにボコ・ハラムが拡大し、貧困に苦しむ若者らを戦闘員として獲得、戦闘員らは攻撃を激化させ、さらに地域経済を悪化させていた。暴力と結びつく複数の側面を知ることが、効果的な紛争抑止のあり方につながると思う。(2020年11月、欧州総局