新型コロナ禍での選挙戦:ジャカルタ・武内彩

ジャカルタ武内インドネシアやマレーシアで選挙をきっかけにした新型コロナウイルスの感染が広がっている。従来の選挙戦では大勢を集めた選挙集会が欠かせず、投票や開票作業でも人が集まらざるをえないためだ。感染拡大のリスクから選挙の延期を求める声が上がる一方で、それでは参政権がないがしろにされるという意見もある。新型コロナは選挙のあり方を変えることになるのだろうか。

マレーシアのムヒディン首相は10月5日、先に陽性が確認された閣僚と会議で同席していたことから、念のために14日間の自主隔離に入ると発表した。閣僚やムヒディン氏は9月26日に投開票された東部サバ州の州議会選挙の応援で何度か現地入りしていた。サバ州では選挙後に複数のクラスターが発生し、投票のために帰省した人が他州の自宅に戻った後に発症する事例が相次いだ。

制限措置により感染拡大に歯止めがかかっていたが、選挙後に感染者が急増。投票日から1週間後にはサバ州を中心に300人以上の新規感染者が確認され、過去最多を更新した。ムヒディン政権が早期の下院解散・総選挙に踏み切るとの見方が出ているが、公衆衛生の観点からは慎重な見極めが必要だ。

一方、インドネシアでも12月9日に270の州や県、市で統一地方首長選挙が行われる。9月から選挙戦が本格化しているが、候補者の感染が相次ぐ。10月5日には、選挙委員会(KPU)が2人の候補者が感染症により死亡したことを明らかにした。地元メディアは、9月中旬時点で少なくとも60人の候補者が感染していたと報じた。

東南アジアで最悪の感染状況に感染症の専門家からは選挙の延期を求める声が上がり、署名運動も起きた。KPU自体がアリフ・ブディマン委員長ら複数の幹部の感染が確認され、オフィス業務を停止した。しかし、ジョコ大統領は「予定通り行う」と強硬な姿勢を崩していない。

感染対策として50人以上の選挙集会を禁止しても違反が続出。KPUはオンラインの選挙運動に切り替えるよう求めているが、投票が近くなれば従来の対面による活動がさらに活発化するとみられる。投票所の運営や開票作業には人手が必要だろう。医療態勢が脆弱な地方でのクラスター発生が心配だ。(2020年11月,ジャカルタ支局