「実感させられた息苦しさ」:北京 米村耕一


多少の予想はしていたが、ここまでのしつこさとは想定外だった。

10月初め、中国東北部・延辺朝鮮族自治州を取材でたずねたときのことだ。ホテルの部屋に入って15分ほどするとドアをノックされ、「服務員です」と女性の声がした。ドアを開けると一気に3人の男たちが室内になだれ込む。

圧倒されてベッドの上に腰掛けた私を3人の男たちが取り囲み、「何時に来た」「その後の行動を全て話せ」「夕食はどこで、だれと食ったのか」と問いただす。のらりくらりとかわしたつもりだったが、こうした場面で黙秘をつらぬく心の準備ができていなかった甘さが災いした。会話の中で、うっかり夕食の場所を推察できるヒントを与えてしまった。

一瞬、勝ち誇ったような顔をした男たちは、さらに翌日の予定をしつこく聞き、移動のタクシーの手配はホテルを通じてするようにと言い残し去って行った。

その後も、この公安当局の人たちとはやりとりが続くのだが、まだ結論が見えていないところもあるので、ここでは割愛したい。

とにかく、国境付近や少数民族地域、何らかの社会問題が起きているエリアでの公安当局による取材妨害の水準は、私が前回勤務していた2010~13年に比べて格段に上がっていることが実感できた。習近平政権になって、中国社会のあちこちで息苦しさが増しているということは、多くの報道がされているが、私も改めてそれが実感できた。

私たち外国人記者は記者ビザで入国し、中国外務省発行の常駐記者証(プレスカード)を携帯している。これによって取材活動の一定の自由が保障されるはずなのだが、逆にこのビザが各地で取材妨害を招いているのが現実だ。ホテルと鉄道、飛行機ではパスポートを提示せざるを得ず、この時に記者ビザ保持者が来たという情報が公安当局に送られ、そこからマークが始まるからだ。

中国外務省関係者は「法令の範囲で自由に取材して構わない」と言うが、実態は伴っていない。中国政府内でのパワーバランスも、治安や防諜を担当する公安省や国家安全省に比べ、外務省の力が大きく劣るのはあきらかだ。取材環境の改善は当分、見込めなさそうだ。(2020年11月、中国総局