デモ隊への放水:バンコク・高木香奈

20160712dd1dd1phj731000cタイでは若者を中心とした反政府デモが緊迫した状況にある。10月15日に政府がバンコクで非常事態宣言を発令し、5人以上の集会を禁止した。それを無視する形で翌16日夜に行われた商業地区の反政府集会で、警察の放水車が参加者に向けて放水し、負傷者も出た。水は青色で、化学物質が含まれているとの情報もある。

私も現場で取材をしていた。当初は前日と同じ、支局そばの大通りで計画されていたが警備が厳重で、直前に近くの場所に変更された。歩いて向かうと、装備をした警察官がハンドスピーカーで「非常事態宣言で集会の開催は禁じられています。警察は違反者を呼び出すことができます」「ソーシャルメディアの情報は信用しないように。政府の情報だけが信頼できます」とタイ語で呼びかけていた。バンコク以外の地名の入った警察車両も出ていた。

駅前の道路を占拠したデモは平和的に行われていた。参加者は救急車が通るときはさっと道を空ける。私は写真を撮ろうとして最初は高架上で見ていたが、人がごった返し当局に封鎖されるのを恐れてか、高架下の参加者たちに「降りて」と手招きされた。高架下に降りて、列の後方で支局助手の女性(24)と、偶然会った助手の同級生と座って話を聞いていた。周りは若者が多く、制服を着た中高生もいた。

雨が降ったりやんだりし、傘をさしたりしまったりしている中で突然、放水があった。前方が騒然とし、私の周囲はそろって駆け出した。何が起きたのか分からなかった私も助手と一緒に走った。息が切れ途中で写真を撮ったが、後ろから「逃げろ」と声が飛び、全速力で走り続けた。近くの大学の敷地内を抜け、商業施設の入っているビルでやっと一休みできた。

原稿を出してビルを出ると、歩いて帰宅するしかないデモの参加者であふれていた。鉄道は運行が止まり、タクシーも見あたらなかった。参加者たちは、道路を通過する警察車両に向かい「権力の奴隷だ」とシュプレヒコールをし、各所に張られている国王の看板に向かって激しい声をぶつけていた。私も泥だらけになって歩きながら、参加者の悔しさや怒りを思った。(2020年11月、アジア総局