駐日大使インタビュー⑦ パキスタン・イスラム共和国

若い大国、豊かな可能性
IT人材の分野にも注目集まる

パキスタン イムティアズ・アフマド駐日大使

毎日アジアビジネス研究所がアジアなど新興国の駐日大使に、自国の魅力や投資へのアドバイスを聞く大使インタビューシリーズ。今月は南アジアのパキスタン。高い出生率からブラジルを抜いて世界第5位の人口大国となったとみられ、また、世界でも最も遅くまで人口増加が見込まれる一国とも言われる、可能性に満ちた若い国だ。日本ではあまり知られていない「未知の大国」パキスタンについて、イムティアズ・アフマド大使に聞いた。【毎日アジアビジネス研究所・西尾英之

感染コントロールに成功 経済への影響最低限に

――――最初に、新型コロナウイルスの感染状況を教えてください。

イムティアズ・アフマド大使 6月には1日に6000人から7000人の感染者が確認されていましたが、現在は500~600人に、死者は10から5人程度に激減しています。政府による、感染者の急増やクラスター発生地点のみをロックダウンする「スマートロック」の導入で感染をコントロールし、状況は改善しています。もちろん経済への大きな影響はありますが、GDPの減少は前年比マイナス0・4%に止まり、感染のコントロールがうまくいっていることで、経済の再生に成功しています。

 

国内に巨大市場成長 中東、アフリカへの輸出拠点にも

――パキスタンは日本では「未知の大国」ですが、世界的には将来の大国として有望視されています。

大使 パキスタンの人口は2億2000万人に達し世界で5番目の人口大国です。国民の年齢の中央値が22・8歳と大変若い国でもあります。人口増加に伴う市場の拡大は今後何十年も続き、国内に巨大なマーケットが生まれます。農業、食品加工、電機、化学、テレコミュニケーション、インフォメーションテクノロジー(IT)など様々な分野の産業が育っており、中国、日本、米国など多くの企業がパキスタンに投資しています。私たちは外国からの投資を歓迎しています。今が、パキスタンへの投資を真剣に検討すべき時です。

一方で、国内市場向けばかりではなく、輸出拠点としてもパキスタンは有望です。日本企業がパキスタンで製造し日本に輸出することもできますが、それだけではありません。パキスタンは中国と国境を接し、中央アジアや中東、さらにアフリカにも近い地政学的に重要な位置にあります。パキスタンは、今後市場の成長が見込まれ出るこれらの地域向けの輸出拠点としても有利な場所にあります。

――日本との経済的な結び付きを教えてください。

大使 我が国は1947年に独立を果たしましたが、日本との経済関係はそれ以前から始まっています。最初に日本の貿易会社がカラチに進出したのが1918年、日本の銀行が支店を開いたのが25年です。

第二次大戦後はパキスタンから綿花を輸出し日本の繊維産業を支えました。1950年にはパキスタンは日本にとって第2位の貿易相手国だったこともあります。一時期不安定だった治安や電力供給も安定しつつあり、現在我が国に進出している日本企業は85社以上に上ります。パキスタンの乗用車は90%以上を日本車が占め、特に40年以上前からパキスタンで生産しているスズキは大きな存在感を示しています。自動車以外にも化学、食品、IT産業など様々な分野に日本企業が進出し、最近でも新たにヤマハ発動機や森永乳業、出光興産などが参入しています。

IT人材の日本への送り出し始まる

――IT人材の分野でも注目を集めていますね。

大使 パキスタンでは毎年2万人以上のIT人材が育っています。日本とパキスタンの間では、例えば日本からIT機器を輸入し、日本へはパキスタンのIT人材を送るなどの協力もできるでしょう。日本のIT企業はパキスタンに強い関心を持っており、今後、数百人のパキスタン人IT人材を日本
で受け入れることを決めた企業もあります。両国間でIT分野の協力が進む可能性は十分あると思います。

――最後に日本人に向けてメッセージを。

大使 パキスタン人は日本が好きで、日本製品の品質に強い信頼を寄せています。経済だけでなく文化的な交流も幅広く、パキスタンの都市には日本の生け花や茶道の教室があり、日本料理や日本のマンガにも人気があります。

一方で、パキスタンと日本の国交樹立50周年の2002年に日本の4カ所で開かれたガンダーラ美術展は大変な人気を集め、多くの日本人が足を運びました。パキスタンはインダス文明発祥の地。当時の遺跡のほか、ムガル帝国、英国統治時代の遺跡など、歴史的な場所が数多くあります。また五つの8000メートル峰を始め、登山やトレッキングが楽しめる美しい自然もあります。ぜひ多くの日本人がパキスタンを訪れ、パキスタン文化を体験し、人々と交流してほしいと思います。

イムティアズ・アフマド大使
(Ambassador Mr. Imtiaz Ahmad)

1962年生まれ。86年パキスタン外務省入省。89~93年に最初の駐日大使館勤務。さらに本省、駐スウェーデン、駐韓国大使館勤務をはさんで98~2002年、07~11年の計3回、駐日大使館勤務を経験した。13~17年アルゼンチン大使。外務省次官補、同外務特別次官を経て19年7月に駐日大使に着任。