「鹿」が「馬」になる香港:台北・福岡静哉

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「鹿は鹿であり馬ではない」。香港では9月、こんな横断幕が各地に掲げられるようになった。8月下旬に民主派の立法会(議会)議員、林卓廷氏(43)が暴動容疑で逮捕されたことへの抗議の意味が込められている。背景にあるのは2019年7月21日に香港北西部の元朗駅で起きた事件だ。

この夜、抗議デモ帰りの市民や乗客らが白いシャツを着た男の集団に激しい暴行を加えられ、少なくとも45人が重軽傷を負った。現場にいた警察官が白シャツの男たちを制止しなかったため、市民の警察に対する不信感を増幅させた。林氏も白シャツ集団に激しい暴行を受け、頭がい骨骨折などの重傷を負った。警察はその後、白シャツの男ら40人以上を逮捕した。香港紙によると、このうち半数以上は暴力団関係者だった。親中派勢力が事件を計画したとの指摘もあるが、真相は今も不明だ。

「鹿は鹿であり馬ではない」と書かれた横断幕=香港で2020年9月7日、福岡静哉撮影

ところが被害者のはずの林氏が8月下旬、暴動容疑で逮捕された。警察は、林氏が白シャツ集団を「挑発した」と説明した。「鹿は鹿だ」との横断幕は「被害者は被害者であって加害者ではない」との警察への強い非難を示している。

私は9月上旬、保釈された林氏に電話取材をした。林氏は「私の行動には一点の曇りもなく、今回の逮捕は香港史上、最も醜悪な権力の乱用だ」と憤った。

林氏は事件が起きた夜の午後10時すぎ、知人から「元朗駅で市民が白シャツ集団に襲われている」との連絡を受け、まず警察に通報して市民を保護するよう要請。自身も電車で元朗駅に着いた。林氏は暴力をやめるよう呼びかけたが、白シャツ集団に袋だたきにされた。

一部始終を林氏の秘書が撮影し、フェイスブックで映像を公開した。私も映像を見たが、林氏を「暴動」の加害者とする警察の見方はとうてい納得できない。警察は「双方の力は均衡していた」と説明したが、鉄パイプや木の棒などを手にした白シャツ集団に対し、攻撃を受けた市民の側は傘で抵抗していただけ。「警察は元朗事件の歴史を書き換えようとしている」。そう力説する林氏の言葉には強い説得力があった。(2020年10月、台北支局

昨年7月21日夜、元朗駅で白シャツを着た男たちに袋だたきにされ、血を流す林卓廷議員(林議員のフェイスブックより)