「健康あってこその経済回復」とは言うが:ジャカルタ・武内彩

ジャカルタ武内「とうとう、また来たか」。インドネシアの首都ジャカルタのアニス特別州知事が9月9日に新型コロナウイルスの感染拡大にともない、14日から再び行動規制を強化して、経済活動を大幅に制限すると発表した。世界情勢から見ても、しばらくは新型コロナに付き合う生活が続くだろうと覚悟はしているし、4月からの一度目のロックダウン(都市封鎖)の経験から構え過ぎる必要はないことも分かっている。それでも実際に来てしまうと一度目よりもこたえた。

アニス知事の9日の説明によると、ジャカルタは医療崩壊の危機にある。新型コロナの感染者を隔離して治療する病床は約4000床あるが、すでに8割近くが埋まっていて、規制強化しなければ1週間ほどで満床になる。重症者向けの約500床も不足する可能性が極めて高く、行政として病床を増やす努力はするが市民にも感染拡大のスピードを抑えるために協力してほしいという。ジャカルタでは9月に入り、連日1000人を超える新規感染者が確認されていた。

一度目の規制は4月上旬に始まり、スーパーや銀行など生活に欠かせない業種以外は在宅勤務になり、モスク(イスラム教礼拝所)での礼拝や食料品の買い出しなどを除く移動が基本的に禁止された。6月上旬に規制が緩和されて以降は、人数を制限したオフィス勤務や店内飲食が再開され、注意は必要ながらも「新しい日常」と呼ばれる生活を送れていた。

それが再びの規制強化だ。医療崩壊を起こさないためには必要な措置だが、さらなる景気後退への懸念から反発も出た。緩和により回復の兆しが見えていた製造業や投資への打撃を示唆する閣僚もいる。「健康あってこその経済回復」(ジョコ大統領)だが、年内に少なくとも130万人が貧困層に転じると指摘される中では、どちらを優先すべきか分からなくなる。

街中は落ち着いており、前回のようにスーパーで買い占めが起こり、商品棚から米や油が消えるということはなかった。経験から多少の不便はありながらも社会は回っていくことは分かっている。それでも、また閉塞感のある生活に戻ってしまったことへの憂鬱さと疲労感は拭えない。(2020年10月、ジャカルタ支局