シリーズ「中国商務熱点」11

人民日報の視点

高品質サービスを「普通の人々の暮らし」に
中国国際サービス貿易交易会

9月に北京で開催されたサービス貿易交易会の総合展示エリア =陳暁根撮影。人民図片提供

3Dバーチャル展示ブースで手術ロボットを体験する。自動運転車でLIDAR(光による検出と測距)技術を利用して周辺環境のデータを集める。ギターを手に取りスクリーンの中のバンドと一緒に演奏する――。9月4日から9日まで、2020年中国国際サービス貿易交易会が北京で開催され、たくさんの新製品、さまざまな新技術が、スマートライフの気楽さや便利さを私たちに伝え、未来の暮らしの素晴らしい青写真を描き出した。

多くの人にとって、サービス貿易はあまり耳慣れない言葉だと思われる。しかし交易会を見に来てわかるのは、サービス貿易は私たちの身の回りにあるということだ。旅行、教育、金融、文化・娯楽、交通・輸送といったサービスの供給・消費の分野では、いずれもサービス貿易の取引が行われている。交易会を訪れた大勢の来場者の感想は、「来たかいがあった」、「大いに満足した」というものだった。

総合展示エリアに行ってみると、遠くの方に調理する料理ロボットがたくさんの人に囲まれている様子が目に入った。炊く、煮る、蒸す、炒める、ゆでるなど何でもでき、8系統・3000種類以上のメニューを作ることができ、来場者から「科学技術が暮らしを変える」との歓声が上がった。それほど遠くないところには、ゴミ分別ロボットがいて、同じように驚きをもって迎えられていた。ゴミを素早く分別できる輸送ベルトにゴミを乗せると、ロボットが2本のアームを伸ばしてゴミを一つ一つ吸い寄せ、ゴミ箱に捨てる――。こうしたことからわかるのは、サービス業がデジタル化、ネットワーク化、スマート化の発展トレンドに合わせて、私たちの暮らしの体験を絶えず更新していることだ。

SFのような新技術と同様、日常生活の変化も、私たちに新鮮さと驚きを与えてくれる。同じ総合展示エリアには可動式の小さなスケートリンクがあり、ぎっしりと集まった人たちがカーリングを体験しようと行列を作り、ウィンタースポーツならではの魅力を味わっていた。

ある体験した人は、「体験してみないとわからない。ウィンタースポーツがこんなに楽しいなんて思わなかった」と興奮気味に話してくれた。屋外にある文化サービス専門展示エリアでは、よく知られた故宮博物院、首都博物館、恭王府博物館などの機関が打ち出したクリエイティブグッズも、大いに目を引いた。このほか、青銅器、書画、陶磁器などの文化財の修復技術を近い距離で見たり、無形文化遺産のペーパークイリング、竹細工、木版年画、香囊などの製作をその場で体験したりして、人々は楽しむと同時に、身の回りにある素晴らしいものを再発見し、文化のもつ魅力を実感した。この観点からみると、今回の交易会にあれほど多くの人が訪れた(初日の来場者はのべ約9万5000人)理由は、展示会が熱気にあふれていたからだけではなく、そこで紹介された暮らしが「素晴らしいもの」だったからでもある。

「どこで買えるの」。スポーツサービス専門展示エリアでは、インターネットと連動した直立式トレーニングマシン、マルチスクワットマシンなどのトレーニング機器を体験した人が、強い興味を抱いた様子がみられた。携帯電話と機械を連携させると、運動のデータを表示したり保存したりするだけでなく、分析を経て自分に合ったトレーニングのアドバイスを受けることもできる。これまでのトレーニングマシンよりかなり「スマート」で、携帯電話のセンサーよりもデータの正確性が高い。「どこで買えるの?」は製品の魅力を物語ると同時に、大きな市場ニーズがあることも物語る。これは現在の中国消費市場の一つの縮図でもあり、素晴らしい生活に対する人々のニーズがますます多様化していることを示している。逆の立場で見ると、サービス消費がますます旺盛になって、企業にとっては、市場とチャンスの到来を意味する。サービス貿易の大きな発展を促進することは、人々の素晴らしい生活へのニーズを満たすとともに、企業が大きく発展するためのチャンスももたらすと言える。

交易会の会場側のオリンピック公園の景観大通りは、一時的に建設された環境保護展示会場とつながり、どこまでも続く虹の道のようになっていた。虹に対してよいイメージをもつ人が多い。この虹の道には、交易会をきっかけにして、サービス業の開放協力を通じて世界経済の復興を後押しし、グローバル経済が風雨をくぐり抜けた後で虹を見られるように、という願いが込められている。交易会のプラットフォームを利用して、より多くの質の高いサービスが「普通の人々の暮らしに届く」ようにし、日々の暮らしをより素晴らしいものにすることができる。【人民日報・陳凌】

劉軍国のミニ解説

9月4日から9日にかけて、2020年中国国際サービス貿易交易会(以下「CIFTIS」)が北京で開催された。世界初となるサービス貿易分野の総合展示会であるCIFTISは、各種サービスの展示と交易に焦点を当て、148の国・地域から33の国際機関、68の外国在中国大使館、110の域外商業協会、199社のフォーチュン・グローバル500企業を含む2万2000の企業・機関がオンラインとオフラインの形で出展・参加し、参加登録者数は10万人を超えた。CIFTISは中国が今年新型コロナウイルス感染症流行後に初めて開催した大型のオフライン展示会で、上記のような盛況ぶりは中国の発展に対する国際市場の信頼と期待を浮き彫りにした。

中国の習近平国家主席は9月4日、中国国際サービス貿易交易会世界サービス貿易サミットで、「中国は中国国際サービス貿易交易会や中国国際輸入博覧会などの場を十分に活用し、政策・経験交流の展開を推進し、政府間や国際機関・商業協会及び企業間の多様化したパートナシップを確立・育成し、グローバルサービス貿易連盟の設立を支持し、より多くの実務協力成果を絶えず生み出し、各国の人々がサービス貿易成長の成果を共有できるようにしていく」と述べた。日本の中央大学の梶田幸雄教授は、「新型コロナウイルス感染症が世界規模で大流行し、一国主義や保護主義が台頭する中で、習近平主席の挨拶には重要な現実的意義と深遠な歴史的意義があり、世界のサービス業の開放・協力を深化させる上で役立ち、世界範囲内の合理的な資源配置を促進し、世界経済の回復を促し、各国の人々をより幸福にするだろう」と指摘した。

大まかな統計によると、今回のCIFTISではすでに権威発表類の成果97件、連盟プラットフォーム類の成果が19件、初めて発表されたイノベーション類の成果99件が生まれ、国内外の企業・機関が盛んに契約を交わし、覚書締結類の成果が240件あった。CIFTIS期間中、多くの外国出展企業は中国とイノベーション協力を強化したいとの強い意向を示した。ジェトロ(日本貿易振興機構)・武漢事務所の佐伯岳彦所長は、「イノベーションによって、中国経済は質の高い発展へと邁進している。日本企業はそこに加わり、双方のイノベーション分野における協力を深化させていくことを望んでいる」と述べた。新型コロナウイルス感染症は既存の生産モデルと生活モデルを打ち砕いた。それと同時にオンライン・ニューエコノミーが勢いよく発展する新たなチャンスをもたらした。

劉軍国 人民日報東京支局長

.png1986年山東省青州市生まれ。北京外国語大の日本学研究センターの日本社会経済コースで修士課程を修了、在学中に横浜国立大で客員研究員。2011年12月から16年1月、17年11月から現在まで日本駐在。著書の「温故創新」(日本僑報)では安倍晋三首相、福田康夫元首相、二階俊博自民党幹事長ら日本の政界・財界・学術界など各界の人々を取材し、新中国70年の発展成果などについての生の声をまとめた。