「香港メディア王」の闘い:台北・福岡静哉

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香港で6月30日に施行された国家安全維持法(国安法)は、報道の自由も脅かしている。民主派の香港紙「蘋果(りんご)日報」の創業者、黎智英氏(71)が国安法違反容疑で逮捕されたことは、香港社会に大きなショックを与えた。

黎氏は英語名ジミー・ライ。香港メディア界の大物だ。中国広東省生まれ。12歳の時、一獲千金を夢見て一人で船に乗り、香港に密入境した。手配師の手引きで町工場にたどり着き、黙々と働いた。

26歳でアパレル会社を興し、大成功。指折りの資産家となり、95年にリンゴ日報を創刊した。台湾でも同名の新聞を創刊し、反中国共産党に批判的な論陣を張ってきた。

10日は警察が自宅で黎氏を逮捕した。警察はその容疑について「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えた」と言うだけで、詳細な説明を避けた。200人態勢で蘋果日報の社屋を捜索し、取材資料なども押収した。香港警察は国際社会からも「報道の自由への弾圧だ」と大きな批判を浴びた。

「蘋果は必ず持ちこたえてみせる」。混乱の中で制作した11日付朝刊の1面で蘋果日報は、こう宣言した。ネット上などでは「蘋果日報を買って支えよう」との運動が広がっていた。「白紙でも蘋果日報を買おう」との呼びかけも。蘋果は発行部数を通常の10万部弱から55万部に増やしたが、コンビニ各店で売り切れが続出した。私も早朝、近くのコンビニに走った。蘋果日報が大量に入荷されており、2部を確保した。ところが昼前に再度、コンビニに行くと、全て売り切れていた。蘋果日報を運営する企業の株を買って支援する動きも広がり、株価は一時、黎氏の逮捕前の約20倍の値をつけた。その後も、読者の支援の広告が大量に掲載されるなど、蘋果日報は独自の紙面作りを続けている。

英国法の影響が色濃い香港法は、逮捕から48時間以内に起訴しない場合、原則として容疑者を釈放するとの規定がある。黎氏は12日未明、釈放された。だが黎氏は今後、起訴されて中国本土の裁判所で裁かれる可能性もある。黎氏の人生をかけた闘いは、これから本格化する。(2020年9月、台北支局

創業者である黎智英氏の逮捕と自社への家宅捜索について報じる8月11日付「蘋果(りんご)日報」。「蘋果一定撑落去」(蘋果日報は必ず持ちこたえてみせる)と宣言した=香港で2020年8月11日、福岡静哉撮影