コロナ感染拡大でも高い支持率のモディ政権:ニューデリー 松井聡

デリー松井インドでは新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないうえ、3月から全土で実施された都市封鎖(ロックダウン)で大勢の労働者が失業しており、モディ政権を取り巻く環境は厳しいように見える。だがインド誌インディア・トゥデイが7月15~27日に約1万2000人を対象に実施した電話世論調査では、モディ首相を「抜群(に良い)」または「良い」と評価した人の割合が全体の78%にも上った。安倍晋三首相やトランプ米大統領が新型コロナ対策で支持率を落としているのとは対照的である。

インドの感染者は8月17日時点で約264万人と世界3番目。1日当たりの新規感染者も6万人前後で推移している。政府は6月から封鎖の段階的な解除に踏み切っており感染が収束する兆しは見えない。そんな中でも高い支持を得ている背景には、ヒンズー至上主義に基づくと指摘される政策がある。世論調査では、支持する政策の上位に、全国で唯一イスラム教徒が多数派だった北部ジャム・カシミール州の自治権はく奪(昨年8月)や、1992年にヒンズー至上主義者が破壊したモスク(イスラム教礼拝所)跡地でのヒンズー教寺院建設(今年8月)が並んだ。また5月以降国境を巡って緊張が高まった中国と「戦争を始めるべきか」との質問に「はい」と答えた人が59%にも上った。

回答者の内訳を見ると、ヒンズー教徒が86%、イスラム教徒が9%で、2011年の国勢調査(ヒンズー教徒約80%、イスラム教徒約14%)よりもヒンズー教徒が多くなっており、実際よりもヒンズー教徒の傾向を強く反映している可能性はある。ただ、2014年に発足したモディ政権は宗教感情やナショナリズムを支持拡大に利用したため、国民の間でナショナリズムが従来よりもさらに高まったとの指摘がある。それが如実に現れた結果とも言えそうだ。

今後、モディ政権はヒンズー教徒の高い支持を背景に、統一民法典の制定(ムスリム家族法の廃止)や人口抑制といったイスラム教徒の反発が必至な政策を進めるとの見方も出ている。ヒンズー至上主義の高まりは、国内だけでなく周辺国と軋轢を生み地域の不安定化の要因にもなり得る。モディ政権下でインドはどこに行き着くのか。要注目である。(2020年9月、ニューデリー支局