突然の冬の時代:北京 米村耕一

米中関係は近年で最悪の状況だと言われている。

ただ、7月末に赴任して北京での生活を始めたが、そうした緊張感は北京や上海の街の雰囲気からは、まだ感じ取れない。

新型コロナウイルス対策のための2週間隔離を終え、最初に歩いた街は上海だった。今は博物館となっている1921年に中国共産党第一回全国代表大会が行われた建物をたずねた。建物の壁には「中国共産党の歴史はここから始まった」との標語がかかる。

一方、その隣に建つのは同じ石造りの建物を利用したニューヨーク発のハンバーガー店「シェイクシャック」。週末だったせいか、博物館とハンバーガー店、どちらも長蛇の列だった。

北京に来て健康のために通い始めたジムは、常に米国の最近のヒット曲がかかる。スタッフたちの名札はみな「ダニエル」「ルーシー」と横文字だ。会話を交わすと実は、スタッフたちは英語がほとんどできない。それでも筋トレをしていると「ワッツアップ」と声をかけてくるので、とにかく米国っぽさをアピールする営業戦略のようだ。

都市部に住む多くの中国人は、まだまだ米国的な文化を楽しみ、身の回りの良い物、楽しい物の多くが米国を含む外国から来ているということを理解しているように見える。中国の大学教授たちに聞くと、まだまだ米国に留学したいという学生も多いそうだ。

ただ、こうした雰囲気がどの程度、続くのか。40代の中国人ジャーナリストは米中関係の現状を「中国人から見ると黄金時代が終わり、真冬が突然、来た感じだ」と指摘する。「われわれの世代は自由な米国への期待が高かったが、10代、20代は米国が『悪い警察官』として振る舞っているように見ており、むしろ中国政府への支持が高まっているように見える」とも明かした。

思い返すと前回、北京で勤務した2012年は尖閣諸島を巡る問題から反日デモが広がると、街中で日本語を使いにくくなり、多くの日本料理店が店を閉めた。米中関係悪化でも、これから市民生活に、そうした影響が出てくるのか。ピザやハンバーガーも大好きで、米国っぽい雰囲気のジムも気に入っている私は、少し心配になっている。(2020年9月、中国総局