多様な反政府集会の現場:バンコク・高木香奈

20160712dd1dd1phj731000c
タイで若者による反政府集会が広がっている。日本の友人から「タイのデモってハム太郎のデモのこと?」とSNSのメッセージが届いた。タイの若者にも広く知られている日本のアニメの替え歌を歌ったデモがSNSで話題になっていると聞き、私も記事にした。ただハム太郎は一部の集会で取り上げられたもので、デモの参加者は基本的に三つの要求(軍政下で制定された憲法の改正、議会解散、反政府運動の抑圧停止)を出している。絶対的な権力を持つ王室の改革を求める参加者もいる。演説のほか歌や劇でメッセージを訴える人もいて、他にもハリーポッターをテーマにした集会もあった。

7月末に訪れたバンコクの大学の集会ではステージの大学生が「政府は『SOTUS(ソータス)』をやめて」と訴えていた。私は最近、「ソータス」と呼ばれる大学の新入生歓迎制度で出会った先輩と後輩の恋愛を描いたタイの同名の連続ドラマを見ていたので、「ドラマのことか?」と、昨年大学を卒業したタイ人スタッフの女性に聞くと少しあきれられた。秩序や伝統の名目で年長者から無謀な要求を課される実在の制度で、彼女も大学1年の時、在籍する政治学部で暑い中、外で運動などの「活動」をさせられたりしたという。「厳しすぎて時代に合わない」と、自分が上級生になってから制度はなくなったそうだ。集会では軍政の強権体制と一部の大学に残るソータス制度を重ねていた。

活動家の逮捕などもあり、最近は街全体に緊張感が漂っていると感じることがある。タイは街を歩く人に声を掛けて取材の趣旨を話すと快く取材に応じ、名前や連絡先を教えてもらえることが多い。だが最近、反政府集会の取材で話を聞いた女性にメモ帳を渡してアルファベットで名前を書くように依頼すると、途中まで書いた名前を横にいる友達に促されて消し「危険が及ぶかもしれないから、やっぱり匿名にしてほしい」と言われた。

参加者に「どこから来た」と聞かれ日本から来た新聞記者だと答えると「ここで起きていることをぜひ伝えてくれ」と言ってもらったこともあった。この夏は他の国でもデモが続く。タイで起きていることを知ってほしいと願う人たちがここにはいる。(2020年9月、アジア総局