シリーズ「中国商務熱点」10

人民日報の視点

素晴らしい生活へ
エネルギーを与えるデジタル化

小麦粉の生地を薄く広げ、卵を割り入れ、味噌を塗って、くるくる巻いて、2分足らずで完成する。高シェフのおいしい煎餅果子(中国風クレープ)の作り方だ。アシスタントは出来上がった煎餅果子を受け取り、携帯電話の画面をちらっと見て、画面にあった番号の保温受け取りボックスに入れた。それから1分もたたないうちに、地下鉄を降りた李さんがやってきて、携帯電話をかざすとボックスが開き、李さんは自分の朝食を取り出すとその場を去った。

上海市にある盒小馬の朝食店の保温受け取 りボックスで、QRコードをスキャンして 商品を取り出す利用者=2020年7月20 日、王岡撮影。人民図片提供

ここは「盒小馬」の上海1号店。上海市黄浦区の商業施設の地下2階の地下鉄13号線・世博会博物館駅の出口からすぐのところにあり、朝食を作って提供するカウンターと保温自動受け取りボックスからなる。その場で買うこともネットで注文することもできる。

この朝食の革新的モデルを体験した前出のプログラマーの李さんは、「降りる駅の2つ前の駅で注文し、降りるとすぐに熱々の朝食を持ち帰れる。とても便利だ。今では朝に少し多めに寝てもできたての新鮮な朝食を食べられるようになった」と話した。人の流れが多く、ゆっくり立ち止まっていられない朝の通勤ラッシュ時には、李さんのようにこの便利な朝食スタイルの恩恵を受ける人が大勢いる。

「インターネットプラットフォーム+朝食サービス」などの革新的モデルが、上海の「朝食プロジェクト」バージョンアップ版の急速な進展を後押ししている。

ここ数年、上海市はオンラインでのニューエコノミーの発展チャンスをつかまえ、この巨大都市に暮らす2000万人以上の人々に生き生きとした便利な「クラウド生活」をもたらしている。

午前10時、にわか雨が降り始めた。生鮮食品EC「叮咚買菜」の淞虹ステーションの倉庫で、責任者の李偉さんは2分おきにシステムの画面をチェックしていた。それは電子地図で、「現在地」を中心に、半径3キロメートル以内に、びっしりと200を超えるチェックポイントが映し出されていた。

李さんは、「青いのは配達中、黄色はこれから配達するところ、赤は配達が遅れた場所」と説明。食事時になると注文が急増するので、李さんは配送状況を見守り、ステーションの運営をコントロールする。11人いる仕分け担当者が休みなく商品を受け取ってパッキングし、17人の配達員が雨の中でも駆け出していく・・・。

「こんにちは、今日は大雨で、ご注文の商品の配達が5分ほど遅れそうです」。安全のため、同ステーションの配達員の王亜旭さんがバイクのスピードを落とすと、受注時に約束した29分の配達時間に間に合いそうもなくなった。そこですぐに利用者に電話して事情を説明した。商品を待つ長寧区金菊団地の陳さんは、「大丈夫、気をつけてゆっくりきてください」と応答した。

新型コロナウイルス感染症の流行中に、陳さんは友人に勧められてオンラインで食料を買ってみた。これまで何十年も店に行ってどこの食材がより新鮮か比べるというやり方に慣れていた陳さんは、最初はオンラインでの買い物に不安を感じていた。そして実際に注文してみると、陳さんはリピーターになった。「フナと豆腐のスープが好きでよく作るが、フナは新鮮でないとだめ。オンラインの商品が来たとき、フナ3尾は酸素ボックスに入っていて、鉢に移したときもまだまだ生き生きとしていた」という。

今年2月、叮咚買菜の売上高は一挙に12億元(1元は約15・3円)を突破し、生鮮ECのダークホースになった。創業者で最高経営責任者(CEO)の梁昌霖さんは取材に、「上海で創業してから3年にもならない。もともと1年かけて、さらにはもっと長い時間をかけてユーザーを育てていく予定だったが、まさか1カ月あまりで目標を達成するとは思わなかった」と述べた。今年上半期に上海市全体で生鮮食品のネット取引額は174億8千万元に達し、前年同期比138・8%増
加した。

変化したのは食材の買い方だけではない。

2020年5月8日、上海宝山区月浦鎮花卉芸術展が開幕し、ライブ配信で自分たちの栽培した季節の花を売り出す農村の花卉拠点からきた花卉農家=楊建正撮影、人民図片提供

上海には業界で突出した位置づけにあるEC企業が集まっている。こうしたビッグプラットフォームと大量のアクセスの役割を一層発揮させるため、上海は一連のクラウドショッピングイベントを打ち出した。実体型ビジネスが相次いでデジタル化の助力を得て、「クラウドウインドウショッピング」、「クラウドショッピング」、「クラウド展示会」、「クラウドファッションショー」などの試みが次々に登場した。上海市商務委員会の周嵐副会長は、「生活サービス分野が上海のECが成長する重要なエンジンになりつつあり、いろいろな点で爆発的な勢いがみられる。今年上半期の市内の商品類ネットショッピング取引額は3116億元に達して、前年同期比14・3%増加した」と説明した。【人民日報記者・季覚蘇

劉軍国のミニ解説

新型コロナウイルス感染症は既存の生産モデルと生活モデルを打ち砕いた。それと同時にオンライン・ニューエコノミーが勢いよく発展する新たなチャンスをもたらした。超大都市の上海は、産業の種類がそろい、各種の応用シーンが豊富にあることから、他都市に先駆けて新業態が誕生し成長するための先天的な条件を備えていたといえる。感染症の中で突如登場したオンライン・ニューエコノミーを長期的な経済発展の原動力に転換させるため、上海市は今年4月13日に「上海市のオンライン・ニューエコノミー発展促進行動案(2020~22年)」を発表し、3年の時間をかけ、より包摂的な監督管理、より開放的なシーン、より優良なサービス、より革新的な生態圏を通じて、上海を国際的影響力を備え、国内で先頭を走るオンライン・ニューエコノミー発展の先端地域にするとの方針を明確に打ち出した。

上海は中国デジタル経済の勢いある発展の縮図だ。ますます便利になるデジタルライフの背後には、中国デジタル経済の勢いある発展がある。中国情報通信研究院がこのほど発表した「中国デジタル経済発展白書(2020年)」によると、2019年の中国デジタル経済の付加価値額は35兆8000億元(約547兆3000億円)に達し、名目増加率は15・6%で、国内総生産(GDP)に占める割合は36・2%だった。

ビッグデータ、クラウドコンピューティング、人工知能(AI)などの次世代情報技術のイノベーションやブレークスルーに伴い、スマート化した新たな生産方式が加速的に訪れ、プラットフォーム化した産業の新生態圏が急速に台頭し、デジタル経済は新型の経済形態として、素晴らしい生活に対する人々のさらなる高次元のニーズを開拓し、これに応えており、中国経済の持続的で安定的な成長を推進する重要なエンジンになりつつある。

劉軍国 人民日報東京支局長

.png1986年山東省青州市生まれ。北京外国語大の日本学研究センターの日本社会経済コースで修士課程を修了、在学中に横浜国立大で客員研究員。2011年12月から16年1月、17年11月から現在まで日本駐在。著書の「温故創新」(日本僑報)では安倍晋三首相、福田康夫元首相、二階俊博自民党幹事長ら日本の政界・財界・学術界など各界の人々を取材し、新中国70年の発展成果などについての生の声をまとめた。