鉱物、牧畜・農業、観光で
安定的な経済発展
モンゴル ダンバダルジャー・バッチジャルガル駐日大使
コロナ感染「死者数ゼロ」

――モンゴルの新型コロナ感染状況はどうですか。
大使 モンゴルの新型コロナの累計感染者数は7月19日現在、287人(うち治療中74人、回復213人、死者なし)です。感染者は全員外国からの帰国者であり、市中感染は起こっていません。これは早い段階からの水際対策を講じたことが有効だったと思います。
――経済成長の推移はどうでしょうか。
大使 モンゴルは鉱物資源に伴って変動する経済になっています。2011年は17・3%と高い経済成長率でしたが、世界的な資源安の影響により、16年の経済成長率1・2%まで落ち込みました。このためIMFのプログラムに沿って財政・金融改革などに取り組み、その後、19年は5・1%まで回復しました。(新型コロナの影響で、)IMFによりますと今年の実質GDP成長率はマイナス1・0%の見通しですが、来年はおよそ8・0%に回復する見込みです。
――貿易収支はどうなっていますか。
大使 モンゴルの19年の貿易額は約137億5千万ドルです。鉱物資源、牧畜産品などの輸出が約76 億ドル、石油燃料、機械設備類などの輸入が約61億ドルです。このうち、輸出の8割、輸入の4割は中国が占めています。日本との貿易額(19年)で輸出が約24億円、輸入が約635億円と大幅な輸入超過の状態です。

首都ウランバートルの夜景=大使館提供
資源の加工技術持つ日本と協力
――モンゴルの未来に向けての施策はどのようなものですか。
大使 国としての重要分野は鉱物開発、家畜・農業、観光の3本柱になります。鉱物ばかりでなく、家畜・農業や観光も重要な資源です。そうした資源は確保しながら、それを加工して競
争力のある産品にしなければ、多面的な経済構造になりません。そのために資源を加工する技術を持つ日本と協力してやっていきたいと考えています。
――具体的に鉱物開発で日本とはどう協力しているのですか。
大使 モンゴルは石灰石の多い国です。在日モンゴル大使館は新素材メーカーTBM(東京中央区)にモンゴルに進出してもらい、石灰石を原料とする紙とプラスチックの代替素材LIM
EXをつくってもらうことにしました。これは地球環境を考えたサステナビリティ(持続可能性)の取り組みになっています。
――家畜・農業分野はどうですか。

大使 モンゴルの家畜頭数は7000万頭に達しています。羊が半数を占めていますが、それらの皮はほとんどが捨てられ、一部は中国に輸出されています。JICAの支援案件として山口産業(東京都墨田区)がラセッテーなめし技法を活用したレザーのブランド化を進めています。植物タンニンで皮をなめす独自のなめし技術であるラセッテー製法は人と自然と環境にやさしい革づくりとされており、モンゴルのレザーを世界的なブランドにできないか期待を寄せています。
恐竜博物館を観光の目玉に
ウランバートル新空港10月開港へ
――観光についてはいかがですか。
大使 モンゴルは、北米、中国とならぶ世界的な恐竜化石産地のひとつです。恐竜の絶滅する直前の白亜紀末期の地層から発見される化石は世界で最も種類が豊富であるといわれます。こ
れは私の夢でもあるですが、モンゴルに恐竜の博物館をつくれないかと思っています。本物の化石はきちんと保管しながら、恐竜のレプリカなどを見せる博物館は観光の目玉になると考えています。北海道むかわ町穂別産の恐竜(通称むかわ竜)を確認した北海道大学総合博物館の小林快次教授らとモンゴルと日本の『恐竜文化交流』ができないか協議をしています。
――最後に、日本の円借款で建設されたウランバートル新空港の開港の見通しはどうですか。
大使モンゴルは海の出口がない国です。資源があっても運ぶ手段がなくては何もできません。経済発展は貿易が拡大しなければ成し遂げられません。ウランバートルの南西50キロに建設済みの新空港は人の往来を含めてモンゴル経済に大きなインパクトを与えます。日本からウランバートルをハブにロシア、欧州への新たなルートになることも可能です。当初は今年の7月1日に開港する予定でしたが、新型コロナの影響で遅れて10月に開港する見込みです。

ダンバダルジャー・バッチジャルガル大使
(Ambassador DAMBADARJAA BATJARGAL)
1966年生まれ。モンゴル国立大学物理数学学部卒・同修士、早稲田大学アジア太平洋研究科修士。モンゴル銀行(中央銀行)勤務後、2002年在日モンゴル国大使館に勤務し、在大阪モンゴル国総領事館総領事、外務省経済協力局参事官などを経て16年在日大使館公使参事官、18年8月から駐日特命全権大使。日本語が堪能で、日本の各界に多彩な人脈を持つ。
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