駐日大使インタビュー③ カンボジア王国

平和と安定、世界6位の急成長
投資で産業構造転換図る

カンボジア王国 ウン・ラチャナ駐日大使

アジア、アフリカ各国の新興国からの駐日大使に、自国の経済的な魅力や投資へのアドバイスを聞く「大使インタビュー」シリーズ。今月は1980年代の混乱から平和と安定を取り戻し、順調な経済成長を続けるカンボジア王国。「ネクスト・チャイナ」「ネクスト・タイ」の進出先として注目を浴びる同国の、ウン・ラチャナ駐日大使に聞いた。【毎日アジアビジネス研究所・西尾英之】

コロナ国内感染ほぼ封じ込め

インタビューに答えるウン・ラチャナ・カンボジア王国大使=東京都港区のカンボジア大使館で清宮克良撮影

――新型コロナウイルス感染が世界を席巻しています。カンボジアの状況を教えてください。

ウン・ラチャナ大使 6月16日時点の感染者数は128人で、カンボジア国民が57人、外国人が71人です。この時点で125人は完全に回復し、3人が入院中でした。ほとんどの感染者が外国からの入国者によるもので、すべての感染者を追跡し濃厚接触者を隔離する対策チームの努力のおかげで、国内でのクラスター感染は発生していません。

――政府はコロナウイルス感染の経済への影響をどう見ていますか。

大使 今年のGDP成長率はマイナス1・9%に落ち込む予想です。しかし来年には3・5%のプラス成長にまで回復すると見込んでいます。

――世界的な感染拡大前までは、カンボジアは世界でも有数の経済成長が続いていました。何が急成長の原動力になったのでしょう。

大使 我が国の1995年から2018年までの経済成長率は平均で7・7%。世界でも6位の急速な成長で2015年には「下位中所得国」の仲間入りを果たしました。2019年の成長率は7・1%、国民一人当たりGDPは1679米ドルです。今後、2030年に「上位中所得国」、50年には「高所得国」入りを目指します。

国の平和と政治的安定が我が国の経済成長の原動力です。国連の監視下で1993年に最初の民主的な選挙が実施され、98年以降は完全な和平が実現しています。最近では2018年7月に総選挙が実施され、フン・セン首相の続投が決まりました。

順調な投資も成長を支えてきました。外国からの直接投資を奨励する投資法が存在し、政府は投資家の声を直接聞くフォーラムを1999年から毎年開催。投資家から直接フィードバックを受け取る機会を持ってきました。日本との間では2007年から単独で、政府と民間の投資家の会合を開いています。

――海外投資がカンボジア経済に海外投資が果たす役割は何でしょう。

大使 国内、海外を問わず投資は我が国の経済に大きな影響を与えています。投資は雇用を生み出し、国民の収入を増やします。また投資家が持ち込む新たな技術やノウハウで、我が国労働者の能力も高まります。政府は労働集約型から熟練労働型に産業構造の転換を目指しており、その意味からも投資は非常に重要です。

農業、電子機器分野に好機

――日本企業にはどのような分野への投資を期待しますか。

大使 政府は我が国産業の熟練型産業への転換や、農業分野の産業の拡大を目指しています。我が国は農業国ですが、食品加工産業は未発達です。私は現時点では、農業や食品加工産業はとてもよい投資先だと考えています。

また電子機器分野も重要です。日本の電器部品メーカー「ミネベア」(ミネベアミツミ、本社・長野県御代田町)は2011年からプノンペン経済特区で小型モーターやチップを生産。現在では工場を3棟に増築して7000人以上を雇用するカンボジア最大の日系企業です。日本企業はミネベアのカンボジアでの道筋を参考にしてほしいと思います。

2014年に開業したイオンモール1号店=プノンペン市内で内藤絵美撮影

――首都プノンペンには日本のイオンによるショッピングモールがオープンしにぎわっています。

大使 企業は需要のないところに進出しません。イオンは2014年にプノンペンに最初のショッピングモールをオープン。18年には2号店がオープンし、23年には3号店もオープンする予定です。イオンモールを訪れる客は、大部分が地元のカンボジア人です。経済成長で収入が増加し、購買力のある中間層が育っているのです。

――カンボジア経済は中国の影響を強く受けていると言われます。新型コロナや米中摩擦で中国経済の先行きは不透明ですが、影響はあるでしょうか。

大使 よく聞かれる質問ですが、実際には我が国と中国との貿易額は他のASEAN各国と比べてもそれほど大きなものではありません。一方で、米中摩擦などを受けて日本など各国の企業は、中国からベトナムなど他国へ生産拠点を移す動きを強めています。私たちは日本のみなさんがカンボジアを「次の投資先」として検討することを望んでいます。

高層ビルの建設も進むカンボジアの首都プノンペン=大使館提供

ウン・ラチャナ大使(Ambassador UNG Rachana)

1969年5月生まれ。91年外務国際協力省入省。2000~04年在アーストラリア大使館一等書記官。04年から13年までナムホン副首相兼外相のASEAN担当補佐官を務め、この間ASEAN局次長などを歴任。17年アジア太平洋局長、18年10月より駐日全権大使。母国語のクメール語のほか英語とロシア語。家族は妻と子供2人。