危機に浮かぶ「闇と光」:ロサンゼルス 福永方人
福永方人P米国は世界最悪の新型コロナウイルス感染拡大の危機が収束しないうちに、新たな「危機」に揺れている。中西部ミネソタ州ミネアポリスで5月25日、白人警官に拘束された黒人男性が暴行を受け死亡。この事件を機に黒人差別や警察の過剰な暴力に対する怒りが瞬く間に広がり、大規模な抗議デモが全米で展開されたのだ。デモは3週間以上続き、全50州の2000超の市町に拡大した。数千人規模の若者らが連日、街頭に繰り出して声を上げ、新型コロナ感染防止のための外出規制はうやむやに。参加者の多くはマスクを着けているものの、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)どころではなくなってしまった。私も感染への不安を抱えながら現場を回ったが、デモを巡る光景から米国の「闇と光」が見えた。
まずは闇の面。デモの発端となった事件は、おぞましいものだった。インターネット上で拡散された当時の動画には、手錠をかけられ抵抗できない黒人男性ジョージ・フロイドさん(46)が、白人警官に膝で首を地面に押さえ付けられ「息ができない」と何度も訴える様子が映っていた。暴行は約9分間も続き、フロイドさんが意識を失っても警官はやめなかった。この映像は米社会の、特に警察に根強く残る黒人への差別意識を強く印象づけた。また、デモ隊の一部が暴徒化し、建物の破壊や放火、店舗での略奪が各地で起きた。略奪犯の中には、警察がデモ対応に追われる隙を狙った、デモとは無関係のグループもいるとみられるが、混乱の中で治安が一気に悪化するこの国の危うさを感じた。

一方で、理想主義に基づく「復元力」も目の当たりにした。社会変革という本来の目的を果たすため、デモは次第に平和的なものに軌道修正された。略奪を止めようと店の前に腕を広げて立ちはだかる若者も現れた。ロサンゼルスのデモで出会った中南米系の男性(28)は「多くの人に共感を広げるために、平和的で誰もが自由に参加できるデモを続けていくことが大切だ」と話した。

デモが歴史的な規模になった要因は、格差社会にあえぐ白人ら黒人以外の人種も巻き込んだことが大きい。怒りのうねりが米国にどんな変化をもたらすのか。大統領選への影響も含め注視していきたい。(2020年7月、ロサンゼルス支局

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デモで黒人差別や警察の暴力に抗議する
若者ら=米西部ロサンゼルスで6月2日、福永方人撮影