シリーズ「中国商務熱点」8

人民日報の視点

ECの貧困支援の早送りボタンが押された――農村振興も後押し

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民日報ライブ配信スタジオで柞水キクラゲを紹介する、人気のライブ配信パーソナリティ、薇娅さん
  =ライブ配信のスクリーンショット

小さなキクラゲが大きな産業になる。4月日、陝西省を視察した習近平国家主席は、商洛市柞水県小嶺鎮金米村のライブ配信プラットフォームを訪れ、現地特産の柞水キクラゲを評価し、「最強のライブコマース・パーソナリティ」になった。習氏は、「ECは人々が貧困から脱却するのを支援するだけでなく、農村の振興を後押しすることもでき、非常にやりがいがある」と述べた。

8万パック計12・2トンの柞水キクラゲが即完売

ここ数日、柞水キクラゲは新しいネットの人気者だ。4月21日、人民日報のライブ配信で約8万パック計12・2トンが売りに出されると、瞬く間に完売した。柞水キクラゲは淘宝(タオバオ)などのECプラットフォームで最も売れ行きのよい商品にもなっている。

多くのネットユーザーから、「先を争うのは刺激的で、どんどん買いたい気持ちを抑えきれず、商品が届くとすごくうれしかった」、「EC+農業副産品+貧困支援の攻略戦、支援が必要」といった声が上がった。習氏が柞水キクラゲを評価して「史上最強のライブコマース」と言い、大手ネットワークプラットフォームでも人気の検索ワードになり、この話題がネットワークを駆け巡った。ネットユーザー「膠莱人」さんは、「ECによる貧困支援は早送りボタンが押され、農村振興に新たな原動力を注入すると確信する」と述べた。

4月23日夜、これまでで最大規模の陝西省産農産品のチャリティライブ配信が行われた。柞水キクラゲは10秒で売り切れ、擀面皮(かんめんぴ。小麦粉を伸ばして作った麺類)も8秒で、肉夾饃(ロウジアモ。中国式ハンバーガー)も16秒で売り切れた……。陝西省の農家企業3800社あまりがライブ配信で農産品約5万種類を打ち出し、「史上最強のライブコマース」の牽引効果がさらに拡大した。ネットユーザーは、「各地にネットで人気の市長さんや県長さんがたくさん誕生し、大手ECプラットフォームのライブ配信で各地の特産品を売り出すようになるだろう」と述べた。

柞水キクラゲは人民網が総合型消費サービスプラットフォームの「人民優選」で打ち出す貧困支援商品の一つだ。「史上最強のライブコマース」の追い風を受けて、「人民優選」に選ばれた他の貧困支援地域のキクラゲも売り上げが目に見えて増加した。新型コロナは経済社会に大きな打撃を与えたが、さまざまな新業態も生み出し、「デジタルが新たな『農業物資』となり、スマートフォンが新たな『農具』となり、ライブ配信が新たな農家の仕事になった」こともそのうちの一つだ。

ネットユーザー「聞所未文」さんは、「農業・農村の事業は、なんといっても、農民の収入を増やすことが重要なカギだ。国民を中心とした発展の理念を貫徹し、『農民・農村・農業』がインターネットの追い風に乗るようにし、大勢の農民が一日も早く豊かになるようにすることが、習氏がこれまでずっと関心を寄せてきたことだ」と述べた。

デジタル経済は持続的かつ急速に発展し、巨大な活力を生み出して、今や農村の経済成長の新たな原動力に育ちつつある。人民網新EC研究院が4月24日に発表した「中国農村EC物流発展報告」は、「デジタル農村建設、ECの農村進出総合モデル、ECによる貧困支援などの事業がより深く推進されるのにともなって、中国の農村ECは急速な発展の勢いを維持し、農村のネットワーク小売の伸びは加速を続け、農村ECの発展は農村EC物流ニーズを効果的に喚起した。ECプラットフォームは農産品の上昇システムにおけるスマート化、システム化、大規模化された物流『新インフラ』の代表的存在だ」と指摘した。

評価の中には、「ECなどの新業態の効果を発揮するには、一方で新業態を上手に使うことが必要で、ライブコマースはECなどの新業態の1つの成果に過ぎず、ECプラットフォームにはまだ非常に多くのポテンシャルがある。また一方で新業態をうまく利用することが必要で、より有力な制度設計を通じてECプラットフォームがより高いステージに上るよう後押しすれば、ECプラットフォームはより大きな役割を発揮するようになる」との見方がある。【人民網記者・田暁麗

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ライブコマース・パーソナリティとライブ配信で農業副産品を紹介する地元の村民=4月21日、浙江省杭州市淳安県汾口鎮寺下村の生態キウイフルーツ基地で唐家凱撮影。人民図片提供

劉軍国のミニ解説

貧困脱却の難関攻略は2020年に中国で最も注目されたキーワードだ。今年は中国にとって貧困脱却の難関攻略の成否を決定づける年。中国は現行基準の下で、全ての農村貧困者の貧困脱却と、全ての貧困県の「貧困県」指定返上を期限通りに実現させなければならない。

現在世界で蔓延している新型コロナウイルス肺炎は、各国の人々の生活に極めて大きな影響を及ぼしている。国務院貧困者支援開発指導グループ弁公室の劉永富主任は5月18日の記者会見で、「感染状況が貧困脱却の難関攻略に及ぼした影響は徐々に克服されつつあり、貧困脱却の難関攻略の大局が変わることはない」と述べ、消費による貧困者支援は貧困地区が感染状況の影響を克服し、貧困者支援産業発展を促進する重要な措置だとした。消費による貧困者支援と東部地域や都市の「菜籃子」や「米袋子」といったプロジェクトを結び付け、生産・販売のリンクとECによる貧困者支援を強化する必要がある。中西部地域では貧困者支援商品の生産と認定をしっかりと行い、東部地域では貧困者支援商品の販売に力を入れ、政府系事業機関での調達や消費による貧困者支援取引市場の設置、各種企業と社会の販売参加などさまざまな方式で、貧困者支援商品販売の問題を解決する必要がある。

「危」と「機」は同時に生まれ、併存しているものであり、「危」を克服すればすなわち「機」となる。新型コロナウイルス感染症の影響を受けたからこそ、貧困脱却の難関攻略とECとの結びつきはさらに密接なものとなっただろう。ECは陝西省柞水県のキクラゲなどを含む中国各地の農業副産物の販売に翼を与えた。現在のECによる貧困地区農業副産物販売は、日本企業を含む各国企業に商機をもたらしていると思われている。全ての貧困者が貧困を脱却し、その消費力が高まるにつれて、日本企業を含む各国企業にもより多くのチャンスがもたらされるだろう。

劉軍国 人民日報東京支局長

.png1986年山東省青州市生まれ。北京外国語大の日本学研究センターの日本社会経済コースで修士課程を修了、在学中に横浜国立大で客員研究員。2011年12月から16年1月、17年11月から現在まで日本駐在。著書の「温故創新」(日本僑報)では安倍晋三首相、福田康夫元首相、二階俊博自民党幹事長ら日本の政界・財界・学術界など各界の人々を取材し、新中国70年の発展成果などについての生の声をまとめた。