ゾウへの思い:バンコク・高木香奈

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赴任直後の昨年10月、タイ北東部の国立公園でゾウ11頭が滝に落ちて死んだという話題が写真とともに英字紙バンコクポストの1面に載っていた。最初に子どものゾウが崖から滑り落ち、近づこうとしたゾウたちが次々に転落したとみられ、まずゾウ6頭の死骸が見つかり、さらに5頭の死骸が見つかった。公園では、再発を防ぐためにフェンスを増強する工事が行われた。他の外国メディアも逐一報道していて、赴任あいさつに訪ねた外務省報道官も話題にしていた。

3月末、バンコクポストの1面にゾウの写真が再び載った。新型コロナウイルスの感染拡大で観光客が激減し、観光施設にいたゾウの多くが餌を十分に与えられずに危機的状況にあるという。今はゾウより人のことばかり注意が向きがちな中で、国が変わるとニュース価値も変わることが興味深かった。

タイ人の同僚女性は施設経営者や獣医に次々と電話をかけてくれた。北部チェンマイ県で施設を経営する女性は、3月下旬に県知事から感染防止のため施設の一時閉鎖を命じられた。毎日、職員と今後どうすればいいかを話し合っているという。ゾウ施設経営者でつくる団体の会長は政府に支援を求める要望書を出した。団体のフェイスブックによると、インターネット上で呼びかけた寄付には5月14日までに約180万バーツ(600万円)が寄せられたという。

寄付したのはほぼタイ人。タイといえばゾウ、というのは外国人の安直な考えでないかと思っていたが、タイ人の同僚は特に思いが強いようで、旧国旗には王家の象徴である白ゾウが描かれているなどゾウはタイのシンボルであり「ゾウは人の気持ちが分かる」と力説していた。

記事にした後、日本の読者から振り込み先を尋ねるメールが届いた。その後、農業従事者の男性が餌を探していたゾウに踏まれて亡くなったという報道や、ゾウが健康悪化と飢えで死んだという報道が出た。コロナの影響は想像のつかないところにまで及んでいる。(2020年6月 アジア総局