次なるリスク:ロサンゼルス 福永方人
福永方人P
「コロナ危機」で世界は変わり果ててしまった。感染者数・死者数が世界最多の米国では、人々は本来、感情が読み取れないなどの理由で口元を隠すことを嫌うが、今やマスク姿がすっかり定着した。トランプ大統領が再選されるのか世界が注目する11月の大統領選も、相手の民主党候補がほぼ確定して盛り上がるはずの時期だが、米メディアの報道もほぼ新型コロナ一色だ。米労働省によると、各州で外出規制が広がり始めた3月中旬から8週間の失業保険申請件数は累計で3650万件に上った。4月の失業率は戦後最悪水準の14・7%に達した。私が住む西部カリフォルニア州ロサンゼルス郡は、3月19日から続く外出禁止措置を8月まで延長する可能性があるとしている。

深刻な不況の長期化も予想される中、課題になるのが人々の心のケアだ。ロサンゼルスで自殺防止などに取り組む非営利団体「ディ・ディ・ハーシュ精神衛生サービス」では、「自殺防止ホットライン」への電話相談が急増している。新型コロナ関連の電話は2月は22件だったが、3月は約1800件、4月は21日時点で既に3000件超と前年4月の6倍以上に上った。相談内容は、失業に伴う生活苦のほか、感染への不安や、外出規制で人と会えなくなったことによる孤独感などもあり、2割以上の人が自殺願望を訴えたという。

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マスク姿で電話相談に応じる「自殺防止ホットライン」のスタッフ=米
西部カリフォルニア州ロサンゼルスで4月21日(ディディ・ハーシュ精神衛生
サービス提供)

「ディ・ディ・ハーシュ」の代表で心理学者のキタ・カリー氏は「大規模災害の発生時などと同様、当初は多くの人が日々を生き抜くことに必死で自殺者は増えないが、経済的苦境が長引くにつれ自殺のリスクは高まる。家にこもって打ち込むことがなくなると、うつ状態になりやすい」と警鐘を鳴らす。

一方、電話に応対する相談員もウイルスの脅威の中で暮らしており、相談者と同じリスクを抱える。「ディ・ディ・ハーシュ」は一部を在宅勤務に切り替えたり、ボランティア相談員を増やしたりして感染対策と精神面を含む負担軽減に気を配っている。

カリー氏はこうアドバイスする。「落ち込んだ時はマスクを作ってみるなど、目の前のことに集中して気を紛らわすことが大事。特に人助けをすると自己肯定感が高まり、気分を上げる効果がある」(2020年6月 ロサンゼルス支局