経済再開と感染防止で苦悩する印パ:ニューデリー 松井聡

デリー松井
インドとパキスタンで新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、感染防止の規制を緩和して経済活動を再開させる動きが進んでいる。両国では大勢の労働者が失職するなど経済に深刻な影響が出ているためだ。ただ経済活動の再開は感染拡大をさらに加速させかねず、政府は難しい舵取りを迫られている。

13億人を対象に3月25日から全土封鎖が続くインドでは5月12日、停止されていた国鉄の運行が一部路線で再開された。首都ニューデリーと西部ムンバイなどを結ぶ15路線で、政府は今後も再開する路線を拡大したい考えだ。政府は既に出社する社員の上限数を設けたうえで企業の事務所を再開させることや、感染者が少ない地域での工場の操業なども許可している。

3月以降経済活動を制限してきたパキスタンでも段階的な緩和が進む。5月9日には、それまで禁止されていた生活必需品以外を販売する商店の営業が許可された。

インドは新型コロナの流行以前から既に経済が減速し、パキスタンも財政が厳しい状況にあった。コロナの流行を受けた経済活動の制限は、両国の経済に追い打ちをかけた格好だ。両国では失業者が大勢出ており、とりわけインドでは失職した労働者が徒歩で故郷に戻ろうとしたり、警官と衝突したりする事態も起きて、社会問題化している。世界銀行は新型コロナの影響で、両国を含む南アジア各国の今年の経済成長率が過去40年で最悪になるとの見通しを示す。

一方、感染拡大も歯止めがかからない状況が続く。インドは封鎖を始めた3月25日時点では感染者は600 人に過ぎなかったが、5月12日時点では7万1000人を超えた。中国を抜いてアジアで最多の感染者数になるとみられる(5月15日時点)。パキスタンも新規感染者数は増加傾向で、感染者は12日時点で約3万2000人に上る。

政府は経済活動再開と同時に、人と人との距離を取る「ソーシャルディスタンシング」の徹底などで感染防止も図りたい考えだが、両国の医療事情は欧米の先進国と比べて脆弱だと指摘されており、感染拡大への懸念は根強い。(2020年6月 ニューデリー支局