リーガルコーナー第24回 韓国弁護士・林在珍

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韓国・株主名簿上の株主と実質的な株主が異なる場合、会社に対して誰が株主権を行使できるのかについて

(今号から3号に渡り、虎門中央法律事務所と業務提携を行う韓国の法務法人オルンハヌルに所属する弁護士が、韓国における法律問題につき検討を行います。)

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林在珍(イム・ジェジン)――法務法人オルンハヌル弁護士

プライベートエクイティ・ファンドの規制や金融業の規制などの民事・行政上の事件や著作権法、商標法、不正競争防止法など、知的財産に関するさまざまな事例も扱っている。 オルンハヌルにパートナとして合流する前、韓国の大手法律事務所である法務法人(有限)太平洋で11年間勤務した。

Ⅰ、序

株式会社には株主の氏名、株主の有する株式の種類や数などが記載される株主名簿がある。例えば、会社が新たに発行する株式を誰かが引受けた場合、その買収人が株主名簿に当該株式の株主として記載される。既に発行された株式が譲渡された場合にも、譲受人の申請により会社はその株主名簿に譲受人を株主として記載することになる(このように株式が譲渡された場合、株主名簿上の株主を変更することを「名義書換」という)。このように、株主名簿は株主の現況が記載された帳簿であり、株主名簿に記載された者が会社に対して株主権を行使できるのが原則である。

ところが、稀に株主名簿上、株主として記載された人と実質的に株式の取得代金を負担した人とが異なる場合がある。株式代金を実質的に負担する者が他人の承諾を得て他人名義で株式を買受けた場合等がそのような場合である。例えば、AがBの口座に株式の払込代金を送金し、Bが会社に株式の払込代金を支払って株式を引受けた場合、会社の株主名簿にはBが株主として記載される(以下、この例を「本件事例」という)。本件事例と同様に、株主名簿上、形式的株主(名義貸与者、B)が株主として記載された状態で、実質的株主(名義借用者、A)が会社に対して株主権を行使できるかどうかが問題となる。

日本企業が韓国企業に出資をすれば韓国企業の株主となることからこの点は日系企業にとっても重要だといえるところ、この度、韓国国内における券面上の株主と実質株主に相違がある場合について重要な判例が出た。

以下では、このような場合に誰が会社に対して株主権を行使できるのかなどについて検討しつつ、かかる判例を紹介する。

Ⅱ、大法院の立場

1・学説

大韓民国の学説の中には、実質的な株式引受人(名義借用者、実質株主。上記事案ではA)が権利義務の主体であるという実質説が多数説であった。これは、当該株式に関する代金を実質的に負担した者を保護する立場である。

これに対し、会社組織の法律関係の明確性と確実性を図るため、株主名簿上の株主(名義貸与者、形式的株主。上記事案ではB)を株主と見るべきとの実質説も有力に主張されていた。

2・大法院の立場

大法院(注1)は従来、実質説の立場で実質株主が会社に対して株主権を行使できるとの判決を下したが、最近、大法院裁判官全員で構成される合議体で立場を変更し、下記のように株主名簿上の株主だけが会社に対して株主権を行使できるとの判決を下した。

「株式を譲り受けたものの、まだ株主名簿に名義書換をしていないため、株主名簿には譲渡人が株主として記載されている場合だけでなく、株式を引き受け、または譲り受けようとする者が他人の名義を借りて会社の株式を引き受け、または譲り受け、その他人の名義で株主名簿への記載まで終えている場合にも、会社との関係では株主名簿上の株主だけが株主として議決権などの株主権を適法に行使することができる」

このような大法院の立場によれば、本件事例において実質株主であるAは(名義書換をしていない状態では)会社に対して株主権を行使することができない。株主名簿上Bが株主として記載されている以上、専らBのみが会社に対して株主権を行使できる(注2)。

一方、A名義で名義書換されていない状態で、会社が実質株主であるAを株主として認めることが許されるかも問題となる。これについて大法院は、「株主名簿上の株主のみが会社に対する関係において株主権を行使できるという法理は、株主に対してだけでなく、会社に対しても同様に適用されるので、会社は特別な事情のない限り、株主名簿に記載された者の株主権の行使を否定したり、株主名簿に記載されていない者の株主権の行使を認めることはできない。」と判示し、特別な事情のない限り会社がAを株主と認めることも許されないと判示した(注3)。

日本の会社法の下でも会社は株主名簿記載の者を株主として扱えば足りるため、日本と同様に取り扱っていただければ足りることとなった。

Ⅲ、実質株主が株主権を行使する方案

結局、Aとしては名義書換(株主名簿上、株主の名義を自分の名義に変えること)を終えた後、初めて会社に対して株主権を行使することができる。

したがって、Aは株主権を行使するためには、まず会社に対して名義書換を請求しなければならず、会社がこれに応じない場合、会社に対して名義書換請求訴訟を提起し、株主名簿上、該当株式の名義を自分の名義に変更させなければならない。

Ⅳ、当事者間の株主権の帰属の問題

一方、上記のような株主名簿上の名義書換は、「会社に対して」誰が株主権を行使できるかの問題である。名義書換は「会社に対して」株主権を行使できる要件だからである。

株主の間で誰が株主権を保有するかは、これとは別問題である。

例えば、株式の譲渡は当事者が株式譲渡の合意をして、株券を交付すれば効力を生じることになる。したがって、もし甲と乙が、甲の株式を乙が譲受けることに合意し、甲が乙に株券を交付し、乙が甲に代金をすべて支払った事案では、まだ株主名簿上の名義が書換えされていない状態でも、(甲と乙の間では)乙を当該株式の株主とみなさなければならないだろう。

もし本件事例でBが当該株式は自分のものであると主張していれば、Aは自分が当該株式の実質株主であることを主張(当該株式に関する名義貸しの解約等を主張)して、Bに対して株券引渡請求訴訟又は株主権確認請求訴訟等を提起し、「AとBの間の関係」では当該株式がAのものであることを明確に認めてもらう必要があるだろう。

Ⅴ、結語

ある権利に対して名義上の権利者と実質的な権利者が異なる場合、これらが法令や規制の回避法に用いられることもしばしばある。

大韓民国では、不動産に関する不動産の実権利者の名義の登記に関する法律、金融資産、金融取引に関する金融実名取引及び秘密保障に関する法律などが施行されているが、いずれも実質的な権利者と名義者が原則的に一致しなければならないという立場である。株主権の行使に関する大法院の判決も、これと同じ立場として理解されるところ、上記不正な回避を防げるという点で望ましい方向だと思われる。

注釈
注1)大韓民国の最高裁判所
注2)大法院は、従来は実質株主であるAが会社に対して株主権を行使できるとの立場を取っていたが、上記の全裁判官により構成される合議体の判決により、従前の立場を変更した。
注3)大法院は、従来は「会社から名義書換をしていない実質株主を株主として認めることは差し支えない」という立場(いわゆる「便宜的な拘束説」)をとっていたが、上記の全裁判官により構成される合議体判決により、従前の立場を変更した。