「QRコード」コロナに挑む:北京 赤間清広

北京赤間

1994年、日本の自動車部品大手デンソーが工場の部品管理を効率化する新たなタグを発表した。最大の特徴は、複数の四角形とモザイクのような白黒模様を組み合わせた印象的なデザイン。それまで使っていたバーコードに比べ入力できる情報量が圧倒的に多く、高速で情報を読み取れる正確性、迅速性を兼ね備えていた。二次元バーコード(QRコード)の誕生だ。

デンソーはQRコードの普及のため、あえて特許を公開し、誰でも自由に使える方針を打ち出した。これが隣国・中国でQRコードが爆発的に普及する一因となる。スマートフォンを使った電子決済などQR コードは既に中国の市民生活に不可欠な存在となっているが、新型コロナウイルスの感染拡大でその重要性はさらに高まったと言っていい。

感染拡大を受け当局は、空港や駅、街中などいたるところにQRコードを印刷したポスターを張り出した。スマホで読み取ると、個人情報や健康状態を登録する専用ページにつながる。この情報をモニタ
リングし、集積したビッグデータを解析することで対策強化につなげてきた。

北京市では4月以降も、市外から来訪した人に対し14日間の自宅隔離を求めている。これに対応し、市内のオフィスビルなどでは入館時にQRコードの読み取りが求められることが増えている。スマホをかざすと通信会社のアプリにつながり、通信履歴をもとに14日以内にどこにいたかが表示される。滞在先が北京以外であれば入館できない仕組みだ。

中国の飲食店では感染拡大防止のため、店員と客の接触を最小限にする「非接触サービス」が大流行中だ。その要もやはりQRコード。マクドナルドなどでは店先に張り出されたQRコードを読み取るとメニュー画面に飛び、スマホで注文、支払いができる。店員に近づくのは商品を受け取る時だけだ。

QRコードの利点の一つは、紙などにプリントするだけで簡単に活用できる利便性にある。これが新型コロナ対応でも生きた。中国では感染防止のため多種多様なQRコードを使ったサービスが生み出されており、このうちいくつかは感染収束後、新たなビジネスへとつながっていくだろう。日本生まれのQR コードは中国社会を再び変えようとしている。(2020年5月 中国総局