コロナと格差:ロサンゼルス 福永方人

中南米系や黒人は、スーパーや物流、公共交通機関など低賃金の仕事に就いている人が多い。これらの業種は外出制限措置が広がる中でも営業を続けているが、マスクや手袋などが不足し、従業員は感染リスクにさらされながら働かざるをえない。また、所得が低く食生活が乱れたり、医療保険に入れなかったりするため、健康状態が悪い非白人も少なくない。持病がある新型コロナウイルスの感染者は重症化しやすいとされる。
中南米系移民を巡っては、感染しても治療を受けるのをためらう声もある。ビザ(査証)や在留証明を持たない不法滞在状態の人たちは、医療施設で移民・関税執行局(ICE)に通報され摘発されることなどを恐れているからだ。ICE は感染対策が続く間は「医療施設や周辺での摘発はしない」との声明を発表し、受診を呼びかけているが、西部カリフォルニア州の移民支援団体責任者は「トランプ大統領は移民を敵視し、言うこともころころ変わるため、多くの移民は政府を信用していない」と話す。
一方、劣悪な衛生環境で暮らすホームレスの人々の感染拡大も懸念されている。4月10日には同州サ
ンフランシスコ市の収容施設で70人の感染が明らかになった。米国では近年、ホームレスの増加が社会
問題になっている。
災害でも戦争でも、まず犠牲になるのはこうした社会的弱者だ。彼らへの支援を急がなければ、ウイルスとの闘いは終わらないだろう。米国が“感染超大国”になってしまったのは、経済指標の数字ばかりを重視し、足元で広がる格差を放置してきた政治のツケが回ってきたと思えてならない。(2020年5月 ロサンゼルス支局)
外出しないよう呼びかけるウォールペイント=米西部カリフォルニア州ロサンゼルスで4月11日、福永方人撮影
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