92年コンセンサスで苦悩する国民党の新主席想定外の春節連休 台北・福岡静哉
国民党の新主席に就任し、抱負を述べる江啓臣・立法委員(中央)=台北市の国民党本部で2020年3月9日、福岡静哉撮影

•Ÿ‰ªÃÆ@–{ŽÐˆõ@­Ž¡•”@m‹LŽÒ‚̖ځn台湾の最大野党・国民党の主席(党首)補選で当選した立法委員( 国会議員)、江啓臣氏(48)の就任式が3月9日、あった。中国に対する台湾人の警戒感が強まる中で、江氏は2005年以来続く対中融和路線の見直しを目指す。最大の難関は「1992年コンセンサス」を巡る対応だ。

92年コンセンサスとは、国民党と共産党の窓口機関が92年に口頭で交わしたとされる共通認識を指す。そのポイントは、中国と台湾が「一つの中国」に属することで一致した点だ。一つの中国を統治する主体について共産党は「中華人民共和国」との立場を取り、国民党は「中華民国」だと解釈した。国民党の馬英九政権(08~16年)は92年コンセンサスを基礎に中国との関係を急速に改善。人的交流や経済一体化を進めた。

習近平指導部は馬英九政権時代、表だって国民党の解釈を批判してこなかった。しかし1国2制度による台湾統一に向けた姿勢を強める習指導部は近年、92年コンセンサスは「一つの中国」原則を体現している、と強調するようになった。「一つの中国」原則は①世界で中国はただ一つ②台湾は中国の不可分の一部③中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府――の3点から成る共産党の原則的な立場だ。つまり92年コンセンサスの中身をめぐる曖昧さをなくし、国民党の解釈を許容しない立場を鮮明にし始めていると言える。

だが共産党による1国2制度導入は国民党支持者も含め大半の台湾人が受け入れられない。国民党は共産党と台湾有権者の間で板挟みに苦しんできた。

江氏は「親中」批判を受けて、92年コンセンサスを「時代遅れだ」と指摘し、見直しを示唆してきた。だが、台湾の有権者も納得させられる新たな合意を習指導部と結ぶことは極めて難しい。江氏は9日の就任式で92年コンセンサスに触れず、具体的な対中政策も示さなかった。一方、習指導部は、恒例となっていた主席当選者への祝電を送らなかった。台湾では「江氏が92年合意に言及しなかったので圧力をかけている」「国民党に揺さぶりをかけ、すり寄ってくるのを待つ戦略だ」といった指摘が出ている。江氏が新たな国民党像を示すことは極めて難しい。(2020年4月 台北支局)