欧州リベラル知識人にも広がる中国への不安:ロンドン 服部正法

外信部デスク 服部正法
「こちらから一つ尋ねてもいいですか。中国はこの先、どうなると思いますか」。最近、英国の高名な社会科学系の学者2人に別々に取材した際、インタビュー後の雑談で、まったく同じことを尋ねられた。「どうなるか」というのは新型コロナウイルスのことではない。中国の政治体制のことだ。

中国問題に門外漢の私に説得力のある説明ができるわけもなく、欧米型リベラル民主主義の昨今の混乱を横目に、中国が自らの権威主義的体制の安定や効率の良さに自信を深めているように見えること、やがては中国も欧米型の民主主義体制に変わるだろうという予測は現況では採りにくいが、さりとて体制を揺るがすような出来事が将来あり得ないとまでは言えず……などと、しどろもどろになりながら、中途半端な論を展開しただけで、せっかく「日本のジャーナリストの卓説を」と望んだ2人をがっかりさせてしまったに違いない。

それはさておき、私の方は英国の知識人の中に広がる、台頭する中国への不安に触れた気がした。もとよりリベラルな知識層はあおり立てるような「中国脅威論」にはくみしない。分析し、理解しようと努めている。だが、2人の言葉の端にも上がったのだが、香港における最近の民主化デモの激化は、そんな欧州のリベラル層にも大きなインパクトを与えているようだ。

強まる中国当局の影響によって香港の自治を50年保証する「一国二制度」が危うくされている、というデモ隊の訴えは共感を持って捉えられ、中国への懐疑がより強まっているように感じる。少数民族ウイグル族への弾圧に関する報道も、欧州では手厚い。欧州は長い歴史の中で、王政と議会との対立や革命、二度の大戦などを経て民主主義や人権の大切さを骨身にしみて理解した。欧州連合(EU)がこれらを根本的な理念に据えているのを見れば、その重みが分かる。

ただ、欧州ではリベラリズムに反発する右派ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭が見られる。中国が「スーパーパワー」となった時、欧州で政治的に中国になびく動きが強まるのか、それとも欧州と中国の「思想戦」がより激化するのか。世界を左右する大きな問題だ。(2020年4月 欧州総局)