アフガン和平を危うくする政治混乱:ニューデリー 松井聡

デリー松井

アフガニスタンに2001年以降駐留する米国と、米軍やアフガン政府に対して攻撃を続けてきた旧支配勢力タリバンが2月末、1年半以上に及ぶ交渉の末、和平合意に署名した。米軍の14カ月以内の完全撤収と、タリバンが国内で国際テロ組織・アルカイダなどテロ組織の活動を許さないことが柱だ。タリバンとアフガン政府を含む国内各勢力による和平交渉の開催も明記され、1970年代から続く戦乱が終結に向かうかも注目される。

この合意署名に合わせて2月下旬に首都カブールを訪れた。取材を通して見えたのは、和平に向けた大事な時期にもかかわらず、権力争いに明け暮れる政治家の姿だった。

カブールでの取材は昨年9月の大統領選挙以来。当時はタリバンが投票所などへの攻撃を警告していたこともあり、目抜き通りでさえ人通りはほとんどなかった。だが今回は昨年9月と打って変わって、街は活気を取り戻していた。米国、アフガン政府、タリバンの3者が戦闘を大幅に抑制する「暴力の削減」が合意前に実施されていたことも一因だ。

話を聞いた市民の中には、過去に極端なイスラム教の解釈に基づく統治を行ったタリバンに拒絶反応を示す人もいた。だが大半は米軍撤収後のタリバンの「復権」を懸念しつつも、タリバンを政治体制に取り込むしか和平への「道」はないと考えていた。

しかし、この大切な時期に国内政治は混乱を極めている。多数派のパシュトゥン人のガニ大統領と、自らはタジク系でウズベク人やハザラ人など少数派の支援も受けるアブドラ元行政長官が、ともに大統領選での勝利を主張。今年3月には2人が大統領への就任を宣誓した。取材した両陣営の関係者は互いを非難し合い、歩み寄りの重要性を語る人はいなかった。民族の違いを背景に、政治家や軍閥が絡んだ、ポストやカネを巡る争いが続いている。

80年代からアフガンを取材してきたベテランジャーナリストは言う。「この国は他国の侵略や干渉に翻弄されてきた。だが最も悲劇なのは、政治家や軍閥の指導者が和平のために協力してこなかったことだ。彼ら自身が変われなければ、真の平和は訪れない」(2020年4月 ニューデリー支局)