「この休み中はできるだけ家族以外との接触を控えるように、と職場から言われています。友人との食事も延期しました」
1月24日から始まった旧正月(春節)の連休。今年は新型コロナウイルスによる肺炎拡大の影響で各地で2月2日まで3日間延期され、上海の企業も9日まで休業となった。状況を聞こうと日系企業関係者を食事に誘ったら、こう断られた。実質半月余り続いた異例の連休。上海では新たな規制が次々に設けられ、人に会うのもはばかられる雰囲気だった。
上海での動きを振り返ってみる。1月20日に習近平国家主席が感染食い止めの重要指示を出して以降、報道が一気に増えた。公園や図書館、映画館、ディズニーランドが次第に閉じられ、市民はマスク確保に走った。23日に湖北省武漢市が封鎖され、上海の日本人学校や企業の再開時期の延期が決まると、行ける場所がさらに狭まり、駐在員の家族は次々に帰国準備を始めた。
マスク姿の市民が次第に増え始めた。買いだめも目立つようになり、店では野菜が品薄になった。
2月に入ると、マスクが一層足りなくなった。中国メディアによると、1月24日から2月2日までにマスク2億2000万枚を国外から輸入。中国は世界最大のマスク生産・輸出国で年間の生産量は世界の約50%を占め、1日で最大約2000万枚以上を生産できるが、春節の連休で国内の生産能力が回復せず、深刻な不足に陥った。
その後マスクは団地ごとなどでの割り当てになり、駐在員の職場や住居の出入りもルール化され、一部は自宅勤務も。万が一の感染を懸念し、気軽に知人に連絡しづらくなってしまった。
しかし、こうした中でも変化が生まれた。「家でじっとしている」人の多さから、各地では配達員と直接触れずに商品を届ける「無接触配送」のサービスが生まれ、オンライン補習やゲームの人気がさらに高まり「隔離経済」の到来も報じられている。
またこの間、日本からの支援に中国外務省が謝意を表明するなど、日本の特別扱いが目立った。非常事態で生活の不便は多いが、交流チャットを見れば対日イメージの良さを実感する。この経験を逆に関係発展の弾みにできるかに注目したい。(2020年3月、上海支局)

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