銃撃事件の衝撃と余波 バンコク・高木香奈

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タイ東北部ナコンラチャシマ県で2月8日、陸軍兵士の男が軍の上官らを射殺後に逃走して大型商業施設に立てこもり、少なくとも29人が死亡する事件があった。31歳の容疑者は地元の陸軍基地に所属し、不動産の売買を巡って上官とトラブルになっていたとされ、軍施設から銃や弾薬などを盗んでいた。昨年秋にバンコクに赴任してから、タイでは銃による事件が予想以上に起きていることを知った。昨年11月にはタイ深南部で武装グループが治安部隊を銃撃し、少なくとも15人が死亡する事件があった。

今回の銃撃事件が起きた週は、現地紙は他にバンコク中心部で男が銃を乱射し負傷者は出なかったものの騒ぎになった事件や、子どもが親の銃を誤射した事件などを報じていた。

ナコンラチャシマ県の事件は陸軍兵士が容疑者で、史上最悪ともいわれる死者数という特殊ケースで、タイ国内でも衝撃を持って受け止められたようだ。元陸軍司令官のプラユット首相は9日に現地で記者会見し、容疑者の「個人的な問題」が犯行の動機のようだと指摘し、武器の管理体制の見直しを指示した。アピラット陸軍司令官は11日の会見で住宅の売却を巡る手数料が動機とみられると説明。「軍を責めないで私を責めてほしい」としつつも辞任は否定し、涙を流す様子がテレビ中継された。外国メディアは、タイ軍幹部の上級将校が国営企業の役員を務めて資産を築く一方で、部下の兵士は薄給に甘んじていると報じた。私の周囲には軍の対応に冷めた見方をする人が多かった。

犠牲者追悼の動きと共に、反軍政を訴えるグループから軍の責任を問う声が出ている。ある民主化活動グループは軍に非常事態の対応や軍内部のあり方などを検証するように求めた。グループのメンバーからは、経済成長率が伸び悩む中で、親軍政権の経済政策に不満があると聞く。新型コロナウイルスの流行終息の時期が見通せない中で経済的な影響も懸念されている。こうした中での銃撃事件発生に、いっそう重苦しいものを感じた。(2020年3月 アジア総局)