容易ではないテロ犯の更生:ロンドン 服部正法

外信部デスク 服部正法2017年6月にテロが起きたテムズ川に架かるロンドン橋で11月29日、再びテロが発生した。男1人が橋のそばの建物内で複数の人を刃物で刺した後、橋の上に逃走。通行人らが男を取り押さえようとし、最後は警官に狙撃されて死亡した。男に刺された2人が死亡し、3人が負傷した。

男はウスマン・カーン容疑者。1991年にパキスタンからの移民の両親の下、イングランド中部ストークオントレントに生まれた。10代でイスラム過激派に感化されたとみられるカーン容疑者は、ロンドン証券取引所爆破などを企てたテログループの一員として、テロ容疑で同年に有罪となって刑務所に収監された。刑期は16年だったが、収監から7年弱の2018年12月に、監視用の電子タグの装着などの条件付きで釈放された。

今回の事件は、釈放されたテロ犯による「再犯」という形だが、深刻なのは、カーン容疑者がすでにイスラム過激思想から脱して更正した人物と思われていたことだ。容疑者が刃物で人を襲ったのは、彼の更正を助けてきたグループのイベント会場だった。研究者や学生らが元受刑者と手を携え、更正やリハビリのあり方などを考え、元受刑者への教育と社会復帰の機会を探る「ラーニング・トゥギャザー(ともに学ぶ)」という、ケンブリッジ大の研究者たちが始めたプログラムを進めてきたグループだった。カーン容疑者は事件が起きるまで、このプログラムの成功例を表す「象徴的な存在」(英メディア)だったという。

更正したと思われていたカーン容疑者がなぜ凶行に及んだのか現段階では不明だ。過激思想の呪縛が解けていなかったと見ることはできるが、それにしても突発的な犯行には「なぜ?」と疑問が残る。

「脱・過激思想」は容易ではない。しかし、「テロ犯の更正は無理」「収監し続けろ」とばかり言い募っても問題は解決しない。欧州各国は、過激派組織に戦闘員として加わったことのある自国民をすでに多数収監しており、いずれは彼らの多くを再び社会に受け入れないといけない。将来的に彼らの社会復帰をどう進めるかは現実的且つ急務の課題だ。今回の事件の考察から教訓を得て、前に進まねばならない。(2020年1月 欧州総局)