ネットフリックス旋風:ロサンゼルス 福永方人

福永方人P今年度の米映画賞は、勢いを増す動画配信サービスの作品が席巻しそうだ。

12月9日、アカデミー賞の前哨戦といわれるゴールデン・グローブ賞の候補が発表され、業界はざわついた。米動画配信大手ネットフリックスの作品が、最高賞のドラマ作品賞(5本)に3本入るなど、ノミネート数で全70のうち17を占めたからだ。

その3本のうち、夫婦の離婚問題がテーマの「マリッジ・ストーリー」と、米マフィア社会の人間模様を描いた「アイリッシュマン」は特に評価が高く、アカデミー賞でも作品賞など主要部門にノミネートされるとみられている。いずれも派手さはないが、登場人物の感情の機微を丁寧に表現した傑作。意外なのは、「アイリッシュマン」は名匠マーティン・スコセッシ監督によるマフィア映画の集大成的な作品で、ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシら超大物俳優が共演したにもかかわらず、大手映画スタジオの製作とはならなかったことだ。過去のシーンで出演者を若返らせるためのデジタル加工などに伴い製作費が高騰したためだが、ネットフリックスは出資を引き受けたという。

昨年度のアカデミー賞では、ネットフリックス作品「ROMA /ローマ」が最多タイの10部門でノミネートされ、作品賞は逃したものの3部門で受賞した。一方、仏カンヌ映画祭は「仏国内の劇場での上映」という条件を満たしていないとして出品を拒否。「配信作品は映画なのか」を巡り大きな議論となった。

だが、資金力が豊富な配信大手が製作し、自宅のテレビなどで視聴できる映画は今後ますます増えるだろう。「映画は映画館で見るべきだ」との考え方に異論はないが、従来のスタジオが手がけない良作が生まれるなら、ファンとしてはありがたい。作り手にとっても、映画館に足を運べない人にも見てもらえるメリットはある。

スコセッシ監督は、こうした映画の視聴環境の変化について「1927年に発声映画が登場して以来の最も大きな革命」と語っている。2月のアカデミー賞で配信系が作品賞を取れば史上初。名実ともに革命の年となるかもしれない。(2020年1月 ロサンゼルス支局)

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米動画配信大手ネットフリックスの作品「アイリッシュマン」。映画館でも限定的に公開されたが、自宅のテレビなどで視聴する人が多い=福永方人撮影