EU 離脱をめぐり複雑さ増す英総選挙 ロンドン・服部正法

外信部デスク 服部正法12月12日の総選挙投開票日に向け、英国全土で激しい選挙戦が繰り広げられている。最大の争点は、言わずもがなの感もあるがブレグジット=英国の欧州連合(EU)からの離脱=の是非だ。ジョンソン首相率いる与党・保守党は、世論調査で最大野党・労働党に大きく差をつけており、保守党が安定多数を確保して、1月末の離脱期限までに離脱を実現できるかに注目が集まる。

保守党勝利のカギとされるのが、イングランド北部・中部の選挙区。専門家やメディアは、伝統的に労働党の牙城であるこの地域で、保守党がどれだけ議席を奪取できるかが結果を左右すると指摘する。この地域は、かつて石炭採掘や製造業が盛んな工業地帯で、「金曜に仕事を探して月曜には新たな職にありつける」(北部ハートルプールの女性)ほどの好況に沸いたが、その後、炭坑は閉鎖し製造業も振るわず、そんな活気は今はもう見る影もない。トランプ米大統領が前回大統領選で支持を集めた、米中西部のかつての工業地帯「ラストベルト(錆びた地域)」の英国版とも言え、EU 離脱支持者の割合が他の地域に比べて極めて高い地域でもある。

労働党は現段階で、「離脱」「残留」のいずれを支持するか、党としての方針を明確にしておらず、有権者の間には「分かりにくい」との印象も広がっている。しかし、離脱支持のイングランド北部・中部の有権者が保守党にすんなり乗るかというと、これはまた別問題だ。ハートルプールのパブで、地域が衰退した原因を地元の人に問うと、嫌悪感もあらわに「マーガレット・サッチャー!」という言葉が返ってきた。不採算の炭坑を閉鎖に追い込み、製造業から金融などサービス業への産業転換を進め、労働組合を弱体化させたサッチャー保守党政権への「恨み」は、この地域では今も深い。この地域の労働者層が実際に保守党に票を投じられるかどうか、ハードルは高い。

そこで「労働党の地盤がチャンス」と明言し、保守党の代わりに離脱派の受け皿になろうとしているのが、新興政党「ブレグジット党」。複雑な地域感情はどんな投票行動をもたらし、どう結果を左右するのか、気になるところだ。(欧州総局 2019年12月)