中東で勢いを増すロシア モスクワ・大前仁

モスクワ大前トランプ米政権は10月初旬にシリア北部から米軍の撤退を始めるなど、中東で単独主義的な政策を続けている。その間隙(かんげき)を突き、影響力を増しているのがロシアだ。シリア情勢を巡っては、北部に進攻したトルコと合意を結び、自国の軍警察をトルコとの国境地帯へと派遣した。自らが後押しをするシリアのアサド政権とトルコが衝突するような事態を防ぐだけではなく、ロシア軍がシリア北東部に進み出た格好だ。「真の勝者はロシアだった」との声も聞かれる。

ロシアの中東政策の特徴は、対立と協調が複雑に絡み合うこの地域で、主要な国々や諸勢力とまんべんなく対話できる関係を築いていることだ。

シーア派の盟主イランは、スンニ派の主要国サウジアラビアや、イスラエルと激しく対立している。一方でロシアのプーチン大統領は、この3カ国の首脳と頻繁に顔を合わせている。イランのロウハニ大統領とは9月中旬に、イスラエルのネタニヤフ首相とも同時期に、サウジのサルマン国王とムハンマド皇太子とは10月中旬に会談した。トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国だが、同国のエルドアン大統領もシリア情勢などを巡り、プーチン氏との会談を重ねている。

近年のロシアが積極関与するのは中東にとどまらない。10月下旬にはアフリカ全54カ国の首脳や閣僚を自国南部のソチに招き、初の首脳会合を催した。アフリカ諸国との経済関係を拡大し、自国製の兵器販売も増やしていく構えだ。アフリカへの関与を強めている背景では「中東政策の延長戦としてアフリカをにらんでいる」とも分析されている。

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近年のプーチン露大統領は中東に積極関与を続けている=2019年6月、大前仁撮影

ただしロシアがこのままの勢いで、中東で米国に取って代わるようなる存在になるのかは定かではない。ロシアは2015年からシリアで空爆を続け、陸上部隊も駐留させているが、かつての米軍がイラクに駐留していたような規模ではない。むしろ米国が中東への関与の度合いを低め続ければ、「米国という重しが外れてしまい、混乱が生じる恐れもある」(モスクワの外交筋)とも指摘される。中東で存在感を高めているロシアの動向を注意しながらも、まだまだ米国が果たす役割も注視していくべきなのだろう。(モスクワ支局 2019年12月)